年間経費率0%のETFって可能なの?
2022年10月31日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
結論から先に言いましょう。
年間経費率0%のETFは可能です!
それは可能であると言及しています。
実は『貸株』という制度を利用するのです。
ETFが保有する株式を、
証券会社を通じ、
信用取引を行う投資家などに貸し出すことで『金利収入』が得られます。
たとえETF本体で報酬がなくても、
収益を上げることは可能というわけです。
上記記事から引用します。
The research revealed that ETFs could make
23 basis points to 28 basis points per year
from securities lending,
なるほど。
それにしても上記記事のタイトルは意味深です。
『ETF Wars: Vanguard, Charles Schwab & BlackRock』とは、
バンガード、チャールズシュワブ、そしてブラックロックのETF戦争という意。
かつて、
米国ETFプロバイダー(運用会社)の純資産総額シェアは、
2位 ステートストリート
3位 バンガード
の順でした。
それがいつの間にか、
という『順位』に変わり、
現時点でステートストリートは3位を確保していますが、
ETFの『コスト競争』そのものからは
脱落していると上記記事は判断しているわけです。
チャールズシュワブの台頭によって、
代表的な(超低コスト)米国株式ETFを列挙してみましょう。
(%の数字は「年間経費率」です)
「iシェアーズ コア S&P 500 ETF」(IVV)
0.03%
0.03%
「シュワブU.S. Large-Cap ETF」(SCHX)
0.03%
0.03%
「バンガードS&P 500 ETF」 (VOO)
0.03%
0.03%
なんとみな、0.03%でそろい踏み。
なんだか、互いを牽制し合っているようにも見えます。
じりじりと『コスト』を下げつつも、
「年間経費率ゼロ%」にはしないよね?と、確認を求め合っているような・・。
まったく個人的な予想ですが、
チャールズ・シュワブあたりが遅かれ早かれ、一部のETFのコスト「ゼロ%化」に踏み切るような気がします。
チャールズ・シュワブの本業はオンライン証券であり、RIA(登録投資アドバイザー)へのバックオフィス機能の提供であるため、
ETFは「材料」に過ぎず、
冒頭述べたように「貸株料」が得られればOKと割り切る可能性があります。
バンガードもこの5~10年で
ETFを「商品」から「材料」へと転化させているように見えます。
例えば「バンガード・パーソナル・アドバイザー・サービス」では、年間0.3%のフィーを徴収しながら、ポートフォリオを初めとした幅広いファイナンシャルコンサルティングを実施しています。
(逆にiシェアーズのブラックロックが、最も「経費率ゼロ%」に慎重になるのでは?)
そういえば、
経済評論家の山崎元さんはかつて、
というコラムの中で、
こう述べられています。
数兆円の資産の売買は
証券会社に大利をもたらす。
証券会社からのキックバック
または証券会社自体を保有することで
利益を確保できる可能性がある。
(中略)
販売会社あるいは運用会社は、
フリー・ファンドで集客して、
別の有料の商品を売ることができるかもしれない。
あるいは顧客になんらかのかたちで
個人情報を提供してもらい、
これを収益化する方法もあるかもしれない。
ちなみに、
「バンガードTotal Stock Market ETF」(VTI)は純資産額が約1兆ドルあり、1ドル140円で計算しても140兆円になります。
メガ級のETFに関しては、
継続コストが0%になる日もそう遠くないのかもしれません・・。
〇 関連記事(バロンズ)
【ETFの手数料、どこまで下がるのか?】
カテゴリ:インデックス投資全般