世界投資的紀行, 投資信託あれこれ

1920年代、株式バブルの最終コーナーで脚光を浴びていた会社型投資信託

2022年10月30日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

100年経てば、
世の中は大きく変わります。

しかし人間が夢見ることは同じです。

 

人の欲望や恐怖を「純化」させて、
それを「増幅」させるのが株式市場というところ。

それは今も100年前も変わっていません。

 

1920年代の熱狂市場(バブル)では、
『信用取引』が隆盛を極めました。

当時のアメリカでは
本日ご紹介する「会社型投資信託」への投資を含め、

米国人投資家の4割程度が
レバレッジを効かせた投資に足を踏み入れていたと云います。

 

要は借金して株式を買っていたのです。

 

 

 

 

 

今、日本の信用取引(個別株)は、
約3.3倍のレバレッジ投資となります。

例えば30万円「保証金」を預ければ、
残りは資金を借り入れ、
「100万円相当」の取引が可能になります。

 

でも自己資金は30万円のみですから、
100万円分の「株式」を購入して
それが半値の50万円まで暴落すると、

「マイナス20万円」というふうに、
ゼロになる以上の損失(負債)を抱えることになります。

 

 

 

1920年代の信用取引(米国)では、
100ドルの保証金を預ければ、
残りは資金を借り入れて
「1000ドル」の取引が可能でした。

 

なんとレバレッジ10倍!

 

ところで、
当時の新興産業は
自動車やラジオ(家電)やアパレルでした。

多くの人が身近な企業の「急成長」を肌に感じて、株式投資を始めます。

 

 

 

 

上図にある通り、1923年からわずか6年間でダウ平均は4倍近くに暴騰しました。

 

信用取引をしたい投資家に
資金を貸し出す「ブローカーズ・ローン」も一世を風靡しました。

銀行も証券会社も、その他の事業会社も大いにお金を貸し出します。

(その貸出金利はバブルのピーク時、10%を超えたのだそう)

 

 

「投資家貴族」と称する、
投資のノウハウを宣伝する業者や個人が現れ、さまざまな説を披露します。
(株式投資が新たな文化になっていったのです)

 

 

 

 

類を見ない市場の高騰が続く中、

 

旺盛な需要に比べて、
投資出来る銘柄(株式)が数として足りない。
だから株式には益々『希少価値』が出るのだ!という、謎の説明がされ始めます。

 

??

<バブル絶頂期には、新しい「謎の理論」が次々と出てくるもの。>

 

 

じゃあ、上場する『銘柄』を増やせばいい!ということで、
「会社型投資信託」が一大ブームを迎えました。

会社型投資信託の中身は、株式ファンドそのものです。

 

が、投信がひとつの会社(銘柄)として、
証券取引所に上場するわけです。

もちろんまだ全てアクティブ型の、
いわゆる「クローズド・エンド型」のファンドでした。

 

(当時の会社型投資信託は、
なぜかニューヨーク証券取引所を避け、
ボストンやシカゴなど地方の証券取引所に上場しました。)

 

 

今のETFに似てなくもないのですが、
大いに異なるのは、

 

〇 当時の会社型投資信託は、
自らレバレッジを効かせていたこと。
〇 投資信託の理論価格と、
「会社」としての株価の乖離が甚だしかったことが挙げられます。
ETFとは似て非なるもの。

 

その会社型投資信託、1921年には40社だけでしたが、1929年には265社も設立されたと云われます。

 

 

 

 

上図でいうところの、
バブルの最終局面、

1928年以降の市場暴騰の主役は、実は会社型投資信託だったのです。

 

何が恐ろしいかといえば、

 

5倍、10倍のレバレッジを掛けて運用される会社型の投資信託(ひとつの銘柄)を、これまた5倍、10倍のレバレッジを掛けて購入することが「ふつう」に行われていた点です。

 

 

冒頭、

(3.3倍のレバレッジでは、)30万円「保証金」を預ければ、「100万円相当」の取引が可能になると述べました。

それでも自己資金は30万円のみですから、
100万円分の「株式」を購入し
それが50万円まで暴落すると、

ゼロになる以上の損失(負債)を抱えることになります。

 

1920年代の終わり、株式市場の暴落が発生した際に、自殺者が相次いだ理由がお分かりになるでしょう・・。 


多額のお金を借りた側も、
多額のお金を貸した側も、
にっちもさっちも行かなくなったのです。

 

 

いつの時代も、レバレッジ投資はバブルのあだ花です。

 

私見ですが、今日、日本の規制当局が、
ETFに関しては2倍のレバレッジまでに抑制しているのに、

 

こと投資信託に関しては
楽天日本株4.3倍ブルや、SBI 日本株4.3ブルのように、4.3倍のレバレッジを容認している理由がわたしには分かりません・・。

 

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