賃料利回りも、配当利回りも、分配金利回りも、「最終利回り」ではありません
2022年10月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
突然ですが、ここでクイズです。
あなたの目の前に、
3つの『債券』が並んでいます。
満期償還時(7年後)には、
購入時に預けた「元本」が戻ってきます。
(それぞれの「利回り」をよーく見てくださいね)
利回り 年0.4%
利回り 年2.5%
利回り 年9%
「当然、ABC商事の社債でしょ」という人は、金融のイロハを学び直す必要があります。
なぜなら・・
「潜在リスクの大きさ」であるためです。
「債券」という商品においては、
ABC商事という会社が、
借りたお金を返せるか否かという「信用度」の低さと、「利回りの高さ」はリンクしています。
ココ、伝わっていますか?
定期預金も同じです。
仮に2年満期の『定期預金』があるとして、
利回り 年0.05%
利回り 年1.5%
を比べた場合、
「ABC信用組合」の利回り年1.5%は、
信用度の低さ(=リスクの高さ)を示しています。
今、何気に「利回り」という言葉を使いましたが、
ほんらい「利回り」という用語は、
『最終利回り』に限定して使用されるべきでしょう。
最終利回り?
ハイ。
債券や定期預金が好例ですが、
満期時には、
購入時に預けた元本が戻ってきます。
100万円分「債券」を買う。
→ 満期時に100万円が戻ってくる。
具体例を挙げてみましょう。
例えば首都圏周辺の、
築40~60年の一戸建てを購入して
それを修繕し、人に貸すとします。
これは古家不動産投資と呼ばれ、
「賃料利回り24%!」とか実際に可能であったりします。
しかしこの利回りは?
『最終利回り』ではありませんね。
なぜなら、
古年の一戸建て物件を800万円で購入し、修繕に200万円かけ、諸経費込みで1100万円の『投資元本』に対し、
この不動産を最終売却する際の「出口の価格」が、同じ1100万円とは思えないためです。
1100万円の投資元本に対し、
「出口の価格」がもし550万円になれば、
もちろん、出口に至るまで空室率が「ゼロ」で、かつ同じ「賃料」水準を維持できた場合の話ですが・・。
もう一度思い出しましょう。
「利回りの高さ」はリスクの大きさの「具象」です。
不動産と比べると『株式』は、
その本質的な価値が、
経年によって上昇する可能性が大いにあります。
ですから、
わたしは不動産投資よりも
高配当株や、高配当株ETFを用いた投資のほうがずいぶん健全だとは思います。
(ただし「インカム」を求めるという根底部分は似ています)
もしも
あなたが個別株式を購入すれば、
「配当利回りの高さ」とは、いったい何を示すのでしょうか?
JTは『高配当銘柄』として有名ですが、
6.19%というきわめて高い配当利回りは、いったい何を示すのでしょうか?
さらに、
配当利回りが高い会社を集めたETFが「高配当株ETF」です。
こちらは(高配当株一個を買うのとは違い、)
定期的に高配当株の『入れ替え』を行ってくれるので、資産管理はずいぶん合理的になります。
iシェアーズCore High Dividend ETF(HDV)
スパイダー Portfolio S&P 500 High Dividend ETF(SPYD)
上記、米国高配当株ETFとして有名ですが、
3つのETFの「分配金利回り」の高さを比較しても、わたしはあまり意味がないと考えます。
なぜなら、
「分配金利回り」は常に変動するためです。
1.ETFの価格によって変わります。
個々の銘柄の「配当金の増減」によっても変わります。
なお、私見ですが、
米国高配当株ETFだけでなく、
低コストの『全世界高配当株ETF』がもっと世に出てくるべきでしょう。
(国・地域、通貨分散も可能になるため)
高配当株ETFを購入する理由として、
『今の収入を得たいから!』という声を聞きます。
お気持ちは重々分かります。
が、しかし、
万が一にも、
そのETFの収益性と混同してしまわないように注意しましょう。
ちょっと極端な例ですが、
「グローバルX NASDAQ100カバード・コール ETF」(QYLD)などがそうです。
分配金利回りは12.25%もあります(毎月分配金が出ます)
ニワトリ = 投資対象そのもの
タマゴ = インカム
とお考えください。
見た目のタマゴの大きさが
不当に大きい場合 =「分配金利回り」が極端に高い場合、
あるいは仕組み上、特殊な形状に『ニワトリ』を変形させているのです。
QYLDはその典型です。
本当は、賃料利回りも、配当利回りも、分配金利回りも、『最終利回り』ではないのです。
カテゴリ:投資の発想法