高配当株戦略の盲点について
2022年10月19日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
書籍を出す楽しみのひとつ。
それは『フィードバック』にあります。
拙著「つみたて投資の終わり方」のキモは、
・年に一度、
・「定率」で
・全資産から「取り崩し」を行うことですが、
70歳や80歳になって果たして
その取り崩しが実行できるのか?
行為の継続性という点で疑問がある。
というような
フィードバックも頂戴しました。
「高配当株戦略」を採用している人からです。
もしも、リタイア後のポートフォリオを
仮に「高配当株」や「高配当株ETF」で構成すれば、
そもそも『取り崩し』という概念が必要ありません。
これはラクです!
今回、本を出版して、
さまざまな反応を見聞きする中で、
かくも多くの人が、
『高配当株戦略』を採用していることを知りました。
(たいへん人気の投資スタイルなのです)
高配当株(ETF)の中身は
日本株(ETF)の場合もあれば、米国株(ETF)の場合もあります。
(その混成ケースや、中にはREITをプラスしている人もいます)
では「高配当株戦略」を
象徴するキーワードとは?
『チャリンチャリン』です。
うぉぉ🤩
やっぱり高配当ETFが気になる…😆
税効果や複利が悪いとはいえ、やはりチャリンチャリンシステムは好き❤️
利益が確定できるのが良い。
経営してる会社もストックビジネスだし、僕のタイプ的に合ってる😊
積立投資信託の金額を半分にしてETFに半分入れるか😊
また今日も悩みは尽きない🤣 — 何に投資をするか悩み中 (@umeeeee1111) September 26, 2022
リタイア後の資産管理で
「高配当株戦略」を採用すれば、
目標の「配当金」「分配金」(チャリンチャリン金額)にいかに到達するか。
そして、それをいかに維持するかが『メインテーマ』になります。
「公的年金等の受取り額」を差し引いた金額ベースが、
目標の「チャリンチャリン金額」となるでしょう。
ここをクリアできれば、
資産管理はすこぶる容易になります。
リスク資産(ストック)を
フロー(配当・分配金)に変換してくれる『装置』といえるでしょう。
いっぽう拙著での『取り崩し戦略』は、
リスク資産(ストック)を持ちながら、
取り崩し行為によって、
自らフロー(取り崩し金額)を作っていきます。
ちょっと面倒くさいと感じるかもしれません。
ここに大きな違いがあるのですね。
高配当株戦略の人は
「フロー」(配当・分配金)にフォーカスし、
いっぽう拙著では、
「安全資産+全世界株式ファンド」という「ストック」(全資産の額)にフォーカスして、そこから全資産×『定率』で取り崩します。
仮に ニワトリを「資産」、
タマゴを インカム「収入」としましょう。
ずばり、
ニワトリをまず認識するのが「定率取り崩し戦略」です。
あなたはどちらが好みですか?
物事の起因を突き詰めていくと・・?
決して タマゴ ⇒ ニワトリ ではありません。
どのくらいの大きさの『タマゴ』を生んでくれるのか、
『ニワトリ』次第なのです。 そうですよね?
タマゴは 結果。
ニワトリが 起因。
ここからは
『高配当株ETF』に話を絞りますが、
ETFの「分配金」にフォーカスし過ぎると、あなたが資産として「どんな株式」を保有しているかが、見えにくくなる可能性があります。
米国高配当株ETFとして有名な3つのETFがありますね。
iシェアーズCore High Dividend ETF(HDV)
スパイダー Portfolio S&P 500 High Dividend ETF(SPYD)
いずれのETFも「配当金」が多い株式を保有するため、あなたのリスク資産は「配当」をたくさん出す株式に偏ることになります。
VYM、HDV、SPYDとも、
『米国大型バリュー株』なのです。
(上位組入れ銘柄はVYM、HDV、SPYDとも似通っています)
ざっくり『株式市場』を4分割してみましょう。
すると、
大型バリュー株
大型グロース株
4つの区分を合わせたものが
『市場全体』だとすると、
長い老後生活の中で、あなたの運用資産全体をほんとうに「大型バリュー株式」のみで保有し続けてOKなのでしょうか?
多くの配当、分配金を出してくれるという理由だけで。
そもそも、リタイア後の資産管理において、
もっとも重要なことは何でしょう?
広範な分散を施す金融商品で保持すること
あなたが運用資産を、
おおむね『大型バリュー株』で保有すれば、
配当金の利回りの高さや、
株式の価格の安定性は魅力ですが、
株式そのものの成長性が劣る可能性が少なからずあります。
『タマゴ』という名のインカムはそこそこ良くても、
大元の『ニワトリ』
すなわち資産の成長性そのものが、仮に市場平均に劣るのであれば、
高配当株戦略 = タマゴの大きさばかりに注目して、
肝心のニワトリが万一、20年後、25年後、産業構造の大きな変化もあり、そんなに成長していなかったら・・・、
ということも可能性としてはあるわけです。
「タマゴとニワトリ、どっちが大事なの?」
と聞かれれば、
わたしはすかさず『ニワトリ』!と答えます。
理由は単純で、↑『ニワトリ』さえ健やかに太ってくれれば、あとは自分で大きめの『タマゴ』を、取り崩しによってゲットできるからです。
もちろん「取り崩し期」においても、広範な分散を施す株式という名の『ニワトリ』を持つことで、資産(ストック)はより長持ちしやすくなるでしょう。
カテゴリ:リタイアメント・資産の取り崩し