ポートフォリオ運用

ノーベル賞の賞金は、ノーベル財団の運用次第?

2022年10月3日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ノーベルさんは
爆薬や兵器を元に富を築いた人です。

これはわたしの想像なのですが、
後世「自分」がどう評価されるのか、氏はとても気にしていたのではないでしょうか。

 

アルフレッド・ノーベル(1833~1896年)の
遺言には、次の一節があります。

 

「私のすべての換金可能な財は、
次の方法で処理されなくてはならない。

 

私の遺言執行者が
安全な有価証券に投資し
継続される基金を設立し、

 

その毎年の利子について、
前年に人類のために最大たる貢献をした人々に
分配されるものとする。」

 

ウィキペディアより。

 

 

そう、
これが【ノーベル賞】の興りです。

 

 

 

 

ここであなたが
『資産管理者』になったつもりで(ちょっと)考えてみませんか。

 

⇒ ノーベル賞が
毎年変わらぬ『賞金』を出し続け、
しかも基金が存続するためには?
何が必要でしょう?

 

そう、
ある程度リスクを取った、
包括的な資産運用を地道に続ける必要があります。

 

ノーベル財団の運用のことが気になり、
検索する中で、

まろさんのブログ記事
ノーベル財団の資産運用】を発見しました。

 

 

ノーベルさんは遺言に、
『安全な有価証券に投資すること』と記しましたが、

これを尊重し過ぎたために
実はノーベル財団には
かなり厳しい時期があったようです。

 

 

 

 

 

以下、まろさんの記事から引用します。

 

しかし1970年代までは
運用成績がまったく振るわず資産が減少。

 

受賞者への賞金額も
1940年代から80年代初めまでは、
設立当初の賞金の3割程度にまで
押さえる必要があった。

 

 

ノーベルの遺言を忠実に守り、
「安全証券(safe securities)」による運用、
にこだわり、

 

1950年代前半に運用規定が改定されるまでは、

 

•不動産
•債券
•担保付き貸付

 

を中心に運用し、
インフレで資産が目減りしたのが原因のようだ。

 

なるほど・・。

 

少しだけ現代史の復習ですよ。

『20世紀』とは
いったいどんな世紀だったのでしょうか?

〇 戦争の世紀であり
〇 経済成長の世紀であり、

そして、
インフレーションの世紀 でもありました。

 

本当は株式にこそ、投資すべきだったのですね。

 

 

 

 

1950年代前半までの反省もあり、
ノーベル財団の運用はその後、
自由度を増すことになります。

 

再びまろさんの記事から。

 

運用の自由度が増してからは
運用成績は年々向上し、

 

1987年に運用資産、
1991年に賞金額が
創立時の実質価値を回復。

 

ノーベル財団が
財政的に安定したのはここ2,30年のことだった。

 

いろいろタイヘンだったのですね。。

 

『他者』のための
多額の資産運用には、
以下の観点が必須となります。

 

〇 運用の永続性
〇 リスク分散の深化

 

 

 

 

 

実はノーベル財団の年次報告書から、
現在の運用資産額と
そのポートフォリオのおおよそが分かります。

 

(ノーベル財団 年次報告書
 『Annual Report 2021』(PDFファイル)

 

 

まず、財団の目標はインフレ調整後プラス3%のリターンを獲得することです。
(明快ですね)

 

中身を見ると、
株式、債券、オルタナティブ投資の組合わせで
ポートフォリオを組んでいることが分かります。

 

55% 株式(許容幅 –15% to +10%)
10% 債券(許容幅 –0.05% to +0.45%)
10% 実物不動産(許容幅 –0.1% to +0.1%)
25% オルタナティブ投資(許容幅 –0.2% to +0.2%)

 

※別に突飛で特別なことをしているわけではないのです。

 

『ノーベル財団』の運用資産は?
およそ61億スウェーデンクローナ(日本円で約795億円にも上ります。21年末現在。)

 

 

例えば、株式の内訳を覗いてみますと・・。

 

 

株式の内訳はグローバル株式の比率がもっとも高いですが、スウェーデンの株式も結構高い割合です。

 

 

ノーベル財団では
(運用成績の上下により)
賞金が引き下げられることもありましたが、

2017年からは
ノーベル賞の『賞金』は一つの分野につき、

900万スウェーデンクローナ
(約1億1730万円)となっています。

 

これは? → 長期的な視野に立った資産運用がうまく行っているからですね。

 

 

もちろん、
経済状況はこれから先も
アップダウンを繰り返すでしょうが、

ノーベル財団が運用を続ける『基本姿勢』は変わらないはず。

 

実はあなたの資産運用にも、
ノーベル財団の『ノウハウ』は生かせます。

 

 

 

 

〇 他人のお金を運用しているのだと思いましょう!

例えば、
横山聡一さん(仮名)なら、

自分のお金ではなく、
『YOKOYAMA財団』の資産を運用していると思うのです。

 

実際、
ノーベル財団では、
毎年毎年の「賞金」のほか、
事務局の運営費、広報、授賞式の経費など、
さまざまな費用を(継続的に)賄っていかなければならないわけです。

 

このような「使命」がある中、
市場のアップダウンに一喜一憂して、

 

そのたびに、
刹那的な意思決定など(果たして)出来るでしょうか?

 

 

そういう意思決定の仕方は出来るだけ避けて、

マーケットが短中期的に、
大きく上下し、金融危機的な状況に陥ろうが、

 

ノーベル財団は、
『基本のルール』に忠実に、運用を続けるはずです。

これこそ、あなたが学べることなのです。

 

 

〇 資産配分を遵守しましょう!

 

たとえ暴落が起ころうと、
たとえ急騰が起ころうと、

財団は基本、予め決められた「資産配分」を遵守しながら、愚直に運用を続けるでしょう。

投資対象の『配分』が大きくズレれば、
それを元に戻す(=リ・バランスを行う)のみです。

 

ルールに則ること以外は、

決して、

決して、

行わないはず。

 

なぜなら、何百億円という「他人のお金」なのですから。

『鋼のハート』を持たないと、
100年以上にわたって賞金を出し続けるなど、不可能なのです。

カテゴリ:ポートフォリオ運用

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