投資家の感情リスク

豊島逸夫さんのことば(投資は『かけ湯』から始めよう!)

2022年7月5日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

国際金融アナリストの豊島逸夫さんは
いつもこちらのコラムでお世話になっています。

氏の、
微細に入ったマーケット分析は
すでに職人芸の域にあります。

 

それだけではありません。

資産運用の実際を絶妙な例えを持って
表現されることにも長けています。

たしか対談の記事で
豊島さんは以下のように言っておられました。

 

投資はかけ湯から始めよう。

 

良い言葉だと思いませんか?

 

 

 

 

この言葉の奥底には、

個人の資産運用は徹頭徹尾、

あなたが「中心」で
あなたのために「存在」するのだから、

 

投資が初めてなら、
まずは
あなた自身が無理なく『慣れる』ことがもっとも重要・・。

 

と言い切っているわけです。

 

 

 

 

だから「かけ湯」から始めよう。

 

 

上記を読まれて
「そんなの当たり前じゃない!」と思わる人もいるでしょう。

 

でも実際、
投資を『かけ湯』から始めるのはなかなかに難しいこと。

 

ちょっと「1年前」にタイムスリップしてみましょう。

 

マーケットはどんな様子でしたか?
「イケイケどんどん」
SNSの発言内容は?
「イケイケどんどん」
YouTubeで再生回数が上がっていたのは?
「イケイケどんどんの動画」

 

 

たとえばナスダック100指数の、
1日あたりの値動きのおよそ2倍を目指す「レバレッジ・ナスダック100」(レバナス)は、

 

 

 

 

光輝く株式市場の
希望の星の如く、

上昇するマーケットを
もっとも効率よく捉える「期待のプロダクト」として

―たった1年前ですよ。―

一世を風靡していたのです。

 

 

たまたま去年の6月、7月頃に、
投資デビューしたあなたにとって、

『お風呂(投資)への入り方』というパンフを手に取り、

まどろっこしい手順や
ルールや
考え方を気にするよりも、

 

もっと即効性があって、
お湯の効用が抜群で、
とにかくその湯に入ったら「気持ちよさそう!!」という、

衝動?
いや情動?に突き動かされるのも、無理のないことです。

 

 

こう、気持ちが沸騰するような感覚に抗うことが出来ず、

かけ湯からではなく、
いきなり(良さげな湯に)飛び込む!!

 

これを実践してしまった人が
実際かなりおられました。

 

 

 

 

振り返ってみますと、
これまでにも何度となく
「熱狂相場」は繰り返されてきました。

 

こういう時、
私たち人間の心理は、

 

「今この流れに乗らないと、
もう二度とこのようなチャンスは巡って来ない!」と思ってしまうのですね。
そして
焦って
慌てて『列車』に乗ろうとするのです。

 

この瞬間、
資産運用の主人公は「あなた」ではなくなってしまいます。

 

 

この瞬間、
運用の主人公は マーケット(Mr.マーケット)になり、

あなたは市場に翻弄される『迷える子羊』になってしまうのです。

 

 

『列車』は何度でもやって来ますよ。

 

 

実際、たった1年、半年前の話ですが、
当時は良さげに見えた『列車』
(例えば「レバナス」)を見送って、
ほおっとしている人もどこかにおられるのでは?

 

 

 

 

 

50年、100年というスパンでは、
『熱狂』も『絶望』も、
もう何度となく訪れるわけです。

 

 

資産市場とは、
物理でいうところの、
過剰なエネルギーと
過小なエネルギーの交換作業を行う「場」なのです。

 

 

では、どうして市場に
過剰と過小が交互に訪れてしまうのか?

それは、マーケットを形成する
私たち自身の「我」、

恐怖と欲望が、そうさせているのです。

 

 

投資は「かけ湯」から始めよう!という心掛けは、
資産運用の主人公を
『あなた』に留めておくために必須でしょう。

 

 

それは、
マーケットというところが、

過剰なエネルギーと
過小なエネルギーの交換作業を行う「場」である。

という客観理解にもつながります。

 

 

もっと戦略的にいえば、自身を『主人公』に留めながら、
「ワタシは、
市場の過剰なエネルギーと過小なエネルギー、
その転換そのものを、
うまく利用してやる!」
くらいの狡猾さが求められるわけです。
(つみたて投資、ですね)

 

 

投資は「かけ湯」から始めよう。

繰り返し唱えたいことばです。

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