イギリス人は自国株式への投資割合が低く、オーストラリア人は自国株式への投資割合が高い。日本人は?
2022年5月31日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
突然ですが、
オーストラリア人って「すごい」です。
えっ!?
どこがスゴイかというと、
オーストラリアの株式市場が
世界の株式市場(時価総額ベース)に占める割合は2%台なのに、自国の株式に投資する割合が67%に及んでいるのです。
下の図表です。
ETF.comの記事「Benefits Of Int’l Diversification」より
でもこの数字に、
どこか納得しているわたしもいます。
先日、オーストラリアの確定拠出年金制度(スーパーアニュエーション)について記事を書きました。
当クリニックには
豪州にお住まいのお客様が数名おられるのですが、
確定拠出年金(スーパーアニュエーション)の商品ラインナップの件で、どうも商品そのものがオーストラリアの国内資産に偏っているという話になりました。
豪州株式、豪州債券、豪州REIT、
あと少しインターナショナル株式みたいな「パッケージ」が提示されたり・・。
ただ、上記図表を見ると、
アメリカ人は
オーストラリア人以上に「国内志向」ですね。
米国人は、
アメリカ = 世界と捉えているふしがありますし。
(アメリカ国内のプロ野球ナンバーワン決定戦を、『ワールドシリーズ』と呼ぶくらいですからw)
では逆に、
自らの投資志向が
自然とグローバル化しているのは?
イギリス人です。
上記図表によると
国内株式(イギリス株式)への配分比率は26%と低くなっています。
7つの海を制した海洋国家であるイギリスは、元々「世界志向」なのです。19世紀半ばまで新興国だったアメリカに、もっとも積極的に投資を行ったのもイギリス人です。
おそらく(以下はわたしの勝手な想像ですが、)
シンガポールや
スイスや
ノルウェーや
フィンランドなどの国も、
「海外株式」の比率は高いはずです。
人口が少なく、
自分たちの製品・サービス・資源・観光を世界の人たちに買ってもらって成り立つ国々ですから、
投資を行う際も、
世界を見据えてアクションを起こすことが習いとなっています。
(それが「国民気質」にさえなっている・・)
例えばノルウェー人にとっては、
〇 スペインの株式も
〇 日本の株式も
〇 南アフリカの株式も
〇 メキシコの株式も、
『遠い、外国の株式』であります。
しかし冷徹な投資眼に支えられ、
世界中の株式が俎上に上ってくるわけです。
もう一度、
『Benefits Of Int’l Diversification』の記事に戻ってみます。
上記記事内では
分散投資の根拠について、
自国市場のみへの投資では、
自国の狭い経済状況に依ってしまう。
グローバルに分散投資を行うことで、
広範な経済と市場勢力に
資産を委ねることになる。
と記しています。
よく、
「外国の株式は分からないよ、怖いよ」
(=リスキー)と言う人がいますが、
そもそもリスクの塊を散らばせるために、
外国にも(広く)投資するわけです。
ところで日本人も、
その『ホームバイアス』ぶりを遺憾なく発揮しています。
世界の株式市場に対して
自国市場の割合は7%ほどなのに、
自国株式に投資する割合は55%となっています。
自分の国の市場を
最も知っているから、
自国に過大に投資してしまう?
これが『カントリーバイアス』です。
では、どうして「カントリーバイアス」が起こるのか?
上記記事ではこう記しています。
the tendency to confuse the familiar with the safe.
『馴染みがある = 安心と混同してしまう傾向』
なるほど・・。
たとえば、
米国の株式に投資しておけば「安心」という気持ちを、
最近では米国人だけでなく、
日本の人も保持するようになっています。
それは、
直近の米国市場の成績が抜群に良いためでしょう。
が、しかし、
(それは)ずっとそうだったのでしょうか?
「Vanguard Research」のレポート、以下の図表を見れば、興味深い事実が見えてきます。
上図は1972年以降の、
毎年の「米国株式」と「米国以外の世界株式」の結果リターンを示しているのですが、
アメリカ株式のほうが
アウトパフォームしている年はゼロより上に、
逆に世界株式(除く米国)のほうがアウトパフォームしていれば、ゼロより下に折れ線が現れてきます。
長い目で見れば(もちろん)
米国株式も好調期、不調期を繰り返しているわけです。
これだけグローバル化が進んでも、
各株式市場の『温度差』は明確に存在します。
また、各資産市場の『温度差』も確実に存在します。
だから?
だから、
分散投資に『効き目』があるわけですね。