経済よもやま話

戦争も物価高も(歴史の中で)何度も繰り返されてきました

2022年3月30日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

マルクス・アウレリウスは「自省録」の中で、

 

すべての出来事は、
歴史上すでに起こったことの再現である。

 

と述べています。

 

戦争をまったく知らない人も、
物価が高騰し身に染みるインフレをはじめて経験する人も、

『歴史』を学ぶことによって
その現象を追体験することが可能です。

 

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの
アセット・アロケーション200年の歴史』という読物(PDF)が面白いです。

 

上記を一読すると、
まさに「歴史」は繰り返されるのだと実感します。

 

たとえば先進各国の低金利も
今が初めてのことではありません。

イギリスでは産業革命後、経済が成熟し、
国内の投資機会が減少する中で、
長期金利は19世紀後半どんどん下がっていきました。

 

 

 

(イギリスの永久国債(コンソル公債)の利回りは一時2%を切ります)

画像元:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ

 

総じて言えば、

世の中の金利は10年、20年のスパンで見ても、
あるいは50年、100年と『尺度』を伸ばしてみても、

上がったり下がったりの繰り返しです。

即ち「高金利時代」「低金利時代」をスイングしているわけです。
→ この方向性は今後も変わりません。

 

 

 

 

また「戦争」と「インフレ」も兄弟のような関係です。

 

『アセット・アロケーション200年の歴史』の、
「第一次世界大戦」の項から当時の様子を引用してみましょう。

 

インフレ率は戦争の火ぶたが切られる前から上がり始め、
物価は1915年から戦争終結後の1920年までの間に
2 倍に跳ね上がりました(図 2 参照)。

 

 

英国の長期国債利回りは
1900年の2.5%から1920年には5.3%まで上昇しました。

 

 

 

画像元:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ

上記図では ↑ 第二次世界大戦時も
英国の『物価』が上昇しているのが分かりますね。

 

戦争は、ヒト、モノ、カネの流れを不自然に寸断します。

国同士にも目に見えない『緊張感』が生まれ、
モノの確保にしのぎを削るようになります。

製造や流通のコストが余計にかかり、
また需給のバランスが崩れることでインフレ傾向になるわけです。

 

ただ、
歴史的観点から見れば、
この「インフレ高進」→「高金利が常態化」するのも、
決して悪いことばかりではありません。

 

物価高が続いてしまうことで、
新たな原材料を用いようとか、
モノの流通や供給の仕方を抜本的に変えようとか、
新たな産業(業種)に活路を見出そうとか、
人々の心に
さまざまなイノベーション・スピリット(技術革新の精神)を宿してくれるためです。

 

 

 

 

先ほど、
「高金利時代」「低金利時代」をスイングしている。
とお話ししましたが、不思議と、

「もう、ずっと低金利が続いてしまうのでは・・」という先には高金利時代がやって来て、「もう、ずっと高金利が続いちゃうんでは・・」という先には低金利時代がやって来るものです。

これが『歴史的時間』から見た、世の中の変化なのです。

 

今後、特にアメリカで展開される
インフレが常態化(高金利化)する世界では、

 

・物価高を価格に転嫁できる企業だけが生き残る
・それなりの支払い利息を支払える企業だけが生き残る
・物価高が続くので、必要な消費は促され個人消費は健闘
・金利高を通じて住宅価格が落ち着いてくる
(しかしながら借り入れそのものは、物価高→借入金の実質負担が減るため、根強い需要あり)
・高金利になることで、政府による無防備な財政支出が抑えられる
・名目金利 > 物価上昇率の状態になれば、債券投資が復活してくる

 

などの変化が見込まれます。

 

もしかすると、2022年を生きる私たちも、
歴史的観点から見た場合、大きな(大きな)過渡期の『橋』を渡り始めているのかもしれません。

カテゴリ:経済よもやま話

おすすめの記事