『老後の生活にはいったいお金がいくら必要なのですか?』という質問を聞いていつも思うこと
2022年3月24日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
仕事柄もっともよくいただく質問のひとつが、
「カンさん。
老後の生活には一体いくらお金が必要なのですか?」
ハイ、ずばり、お気持ちはよく分かります。
切実な問題ですから・・。
でも、です。
冷静に考えてみますと、
あなたが今持っている資産以外に、
あなたはすでに資産をお持ちのはず。
「えっ?」
そう終身年金の原資、です。
「なっ、何の終身年金?」
一度深呼吸してみてください、
国が主宰している
終身年金【公的年金】に加入しているはず・・(^^)
そのお金のボリュームって
決して少なくありません。
あなたがすでに50歳になっていて
手元に届いている『ねんきん定期便』を見れば、
60歳まで公的年金に加入する前提で計算された
『年金受取り見込み額』(基礎年金・厚生年金)が記載されています。
「でも、公的年金の将来って危うくなるのでは?」
まあ(たしかに)危惧される部分もあります。
・想定以上に公的年金をもらう人の数(とその割合)が増加している
・想定以上に長生きにもなっている
でも、厚生年金部分では、
加入者の間口が広がっていることも事実です。
年金受給世代に(年金として)渡している仕組みですから、
公的年金の制度が破綻することはあり得ません。
あなたが会社員で過ごしている前提で、
ちょっと保守的な数字ですが、
65歳以降、
受け取れる公的年金の額を『月12万円』としましょう。
年間144万円になり、
これを95歳まで30年間受給すると、
(ここでは物価スライド等加味しません)
4320万円です。
(↑現在価値に割り引くと数字はもっと少なくなりますが、)
それでも大きな金額であることに変わりはありません。
「公的年金」プラス「あなた固有の資産」
ところで、
公的年金ってどうして、
65歳時点でもらい始める時に、
本来もらえる年金額の『総和』を現在価値に割り引いて、
65歳時点でドンと「まとめて」もらうことが出来ないのでしょうか?
まあ、65歳時点であと何年生きるか分からないですし・・。
公的年金には公的年金の事情もあるのでしょうし・・。
わたしは一番の理由は
2ヵ月に1回もらう、
つまり暮らしの中で『少しずつ』『連続して』もらうほうが、
生活の実態に沿って
万人に管理しやすい形だから。だと思うのです。
(当たり前ですが、)
公的年金とは、ストックではなくフローです。
であるなら、
あなた固有の資産部分も、
ストック = 塊(かたまり)として意識せず、
暮らしの中で『少しずつ』『連続して』もらうもの。
と捉えたほうがよいと思います。
ストックではなく、フローで捉える。
で良いのです。
あなたが特別、
「自分のお金を出来るだけ次世代に遺したい」派
ではなく、
「生きているうちに出来るだけ使い切りたい」派 なら、
以下一例ですが、
「あなた固有の資産」を、
65歳時点から向こう30年程度、
仮に年率プラス4%、
税引き後プラス3.5%のリターンで増やせる前提に立てば、←ココも保守的に。
毎年4.5%の「取り崩し」を行っても、
年に1%ずつ名目資産が減るイメージとなります。
もちろん、
単純に毎年名目資産が1%ずつ減ることはないのですが、
―なぜならリスク資産部分のアップダウンは不規則極まりないため、―
大まかなイメージとしては以下のように、
画像元:セゾン投信
65歳から30年超、十分取り崩しを続けられる
= 少しずつ、連続して「フロー」を受け取ることが出来るはずです。
(上記は『定額』取り崩しを前提にしていますが、実際、4.5%ずつの『定率取り崩し』を貫けば、資産の減り方はより緩やかになり得ます。)
上記取り崩しシミュレーションの「金額」は?
2666万円 とあります。
一例ですが、
それが「あなたの老後で必要になるお金」です。
当初は、4.5%の取り崩しで月10万円。
もちろんこれは、
月8万円とか 月7万円とかに(定率取り崩しを貫けば)減っていったりします。
でも、 12万円(公的年金から)
取り崩し 6万円~10万円(固有の資産から)の基礎があれば、
ミニマムに暮らしていけない数字ではないでしょう。
別に資産額の「大きさ」が重要なのではなく、
長く、少しずつ、連続して「取り崩し」を続ける仕組みづくりこそが重要なのです。
カテゴリ:リタイアメント・資産の取り崩し