リタイアメント・資産の取り崩し

クルマを早く降りたい人、クルマに乗ってずっと加速したい人(リタイア前の運用相談模様・・その1)

2021年12月21日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

第4コーナーを回って、
『定年退職』という看板が見えてくれば、誰でも「そわそわ」するものです。

これまでコツコツと資産を積み上げてきた人たち。

仕事柄、
リタイアを控えたお客様を観察させていただくと、
大きく2つのタイプに分かれると思います。

 

 

1.早くクルマを降りたい人。

 

『クルマ』とは投資という行いそのものを指します。

今までリスクを負って、頑張って運用してきた。
気持ちは「いつ」投資信託を売ろうか?に傾いています。

 

たとえば、65歳まで再雇用で働く予定だが、
60歳時点ですでに運用資産額が目標に達しており、
退職金も入ることだし、
このあたりでリスク資産は概ね解約します!

 

ハイ、
とってもいい笑顔です(^^)

 

 

(そして)そのお気持ちはよーく分かります。

 

投資を『クルマ』に例えると、
早くクルマから降りて、
今まで背負ってきた荷物を下ろすよ。というイメージです。

 

仮にこの時点(60歳)で、
思い切って投資信託を売却できれば、
リスクを負うことから解放され、
「大きな利益を実現できた!」という達成感も沸き上がってきて、
投資、成功、フィニッシュ!とツイートしたくなるかもしれません。

 

しかし、です。

これって個人の資産形成として正しい行動なのでしょうか?

 

投資信託をすべて売る。⇒ フィニッシュ?

投資信託を「売る」「解約する」と表現する時、
一度に、まとまった金額を売却するイメージがあります。

 

文字通り、投資の成果を決する行為であり、
これを上手く行えば、大きな利益が実現するわけです。

これこそが投資の『ゴール』であると、誰にもイメージしやすいでしょう。

 

 

でも、です。

個人の資産形成って、
あなたが元気なうちに『ゴール』するものですか?

 

個人が資産運用するとは? 

いったいどういう「行為」を指すのでしょう?

 

 

 

 

わたしは個人の資産形成とは、
あなたの「人生劇場」に載せる台本であると考えます。

 

 

資産を増やして、資産を取り崩して、それを使っていくという『シナリオ』です。

 

 

あなたの「人生劇場」に合わせるという意味では、

老後生活の入り口で、
運用資産の大半を売却してしまってホントによいのでしょうか?

 

たしかに「その時点での」含み益が実現できます。

そして現金化されたお金が銀行口座に入り、

トータル資産から見れば、
一挙に安全資産(預金)の比率が高まります。

明治時代のように、老後の生活が「余生」であれば、それでも構わないでしょう。

 

 

しかし、私たちの人生後半戦は、
私たちが思うよりずっと「長く」なっています。

 

 

 

 

すでに人生100年時代ですから・・。

好むと好まざるに関わらず、
リタイア後も「一定のリスク」を負い続けないと、

逆に長生きするリスク、
長年の物価上昇リスクに対応できなくなってしまいます。

 

手持ちのお金の価値が希薄化し、
人生の終盤で資産が枯渇することもあり得るわけです。

 

ズバリ言ってしまうと、

 

〇 クルマから降りてしまわない。
〇 一定割合のリスク資産は、生涯持ち続ける。
〇 ドラマティックな投資信託「解約」!みたいなノリとも、サヨナラする。

 

(ただし例えば63歳で、ご自宅のリフォームで800万円要るという場合は、その金額ベースだけ、投資信託を一括で売ればよいのです。この場合、必要なお金の分だけ解約するので理に適っています。)

 

個人のファイナンシャルプランニングで、
もっとも伝わっていないこと。

それは、
〇 一度にまとまった金額で投資信託を売るのは(実は)レアケースだということ。

そして、
〇 老後の生活に入っても、クルマ(投資)には乗り続ける!ということです。

 

 

 

 

もちろん、現役時代に比べると、
アクセルは緩めて、
『高速道路』から『一般道路』に移行して運転するイメージですが、

69歳になっても、78歳になっても、
リスク資産は『持ち続ける』わけです。

(仮に102歳まで生きるあなたから見れば、78歳は十分に若いのです)

 

期待を裏切るようですが、ドラマティックな「売る」「解約する」なんて作業はほぼ起こりません。

 

凡庸な暮らしの中での凡庸な「習慣」のように、リスク資産はひたすら(少しずつ)「取り崩す」のです。

 

それは、ひたすら(少しずつ)リスク資産を「積み上げてきた」、積み立てるという作業の、対(つい)になります。

 

積み立てる、の反対語が、取り崩す。

 


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