バロンズの記事『ETF業界、大手3社寡占の是非』より
2021年11月21日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
以前、ウォール・ストリート・ジャーナルのサイトに
【バロンズ】ETF業界、大手3社寡占の是非
という記事がありました。
ストレートに申し上げると、
ETFやインデックスファンドのマーケットは(そもそも)「寡占化」しやすい市場です。
なぜかというと、
扱っている商品が
『市場平均』をなぞる道具であるためです。
〇 他社とは違う運用
〇 差別化する運用が「しにくい。」
なぜなら、
運用のゴール
(= 市場平均との連動を目指す事)が各社『同じ』であるためです。
ということは?
最初のほうは
ETFやインデックスファンドの運用をたくさんの会社で競っていても、
「低コスト化」で差が生じ始め、
最終的には大手の数社に収斂していくという傾向にあります。
これは時と場所が違っても、
ほとんど違わない傾向でしょう。
(冷徹な言い方をすると、
『勝者総取り』の側面があるのです)
バロンズの上記記事には
次のような「数字」が出てきます。
(いずれも米国上場のETF市場を指します)
〇 ETF業界の規模は4兆ドル。
〇 そのうち上位3社で
資産全体の80%を占める。
・・すごいですね。
その上位3社とは?
・バンガード
・ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ です。
(ちなみに、ETF全体では
運用会社は100社以上あります)
もちろん、
寡占化が進んでいるのは
インデックスファンドも同様です。
日本でいえば、
三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slim シリーズの躍進が記憶に新しいです。
ETFにしろインデックスファンドにしろ、
大手運用会社間で
苛烈な『コスト競争』が起きており、
あなたやわたしのような個人投資家が、
その恩恵に浴しているわけです(これは素晴らしいこと。)
ただ、冒頭の米国上場ETFの話題に戻れば、
米国の監督当局は
(少なくとも)米国内のETFの状況に危惧を抱いているようです。
この状況に対して
米証券取引委員会(SEC)は、
業界のイノベーションの力をそぐ、
もしくは投資家の選択肢を
少なくしているのではないかとの疑問を抱いている。
運用業界に限らずあらゆる産業で、
「寡占」と「競争」は長く
綱引きを繰り返してきました。
「独占(寡占)」⇒「それを抑止」⇒「創造的破壊」⇒「新たな競争」⇒「独占(寡占)」・・
たとえばコンピュータ業界では、
かつてIBMが独占禁止法により
マイクロソフトを買収することが出来ず、
(結果、)
「健全な競争」が維持されたという例もあります。
上記バロンズの記事内には、
SECで投資運用部門の責任者を務めるダリア・ブラス氏のコメントが紹介されています。
「中小規模の資産運用会社という選択肢が
業界統合と運用報酬低下の波の中で失われている点が、
一般の投資家にとって
どのような状況をもたらしているのか懸念される」
たとえば低コストだけではない、
あるいは規模の追求だけではない、
ファンドという商品の『多様性の確保』を促す発言だとわたしは思います。
裏を返せば、それだけ
ETFやインデックスファンドが
巨大なプロダクト(製品)になっているのです。
インデックス型の商品が大きくなれば、それだけ市場に及ぼす影響も大きくなります。インデックス投資の問題点についても当ブログでは触れていきたいと思います。
〇 こんな記事も書いています。
『果たしてインデックスファンドが巨象になって市場を歪めることになるのか?』
カテゴリ:インデックス投資全般