「専用」「一般」「共通」って何のこと? 確定拠出年金の不思議な扉を開けてみる
2021年10月23日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
iDeCoにしろ、
企業型の確定拠出年金にしろ、
確定拠出年金の商品をひとつひとつ見ていくと、
ちょっと不思議なことに気付きます。
確定拠出年金でしか扱っていないファンドだね。」
ハイ、
これを『専用』と呼びます。
いっぽうで、
すべての公募投資信託の中から、
確定拠出年金『専用』を除き、
ETFを除き、
ファンドラップ専用のファンドを除いたファンド群を、
『一般』と呼びます。
ふつうの投資家がふつうに購入可能な投資信託のこと。
最後に「共通」とは何か?
確定拠出年金でも、
一般でも、両方で買える投資信託のことです。
たとえば
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドは、SBI証券のiDeCo(イデコ)でも買えますし、『一般』でふつうに買うことも出来ます。
投資信託の「集合体」を俯瞰すると、
確定拠出年金
『一般』 (『専用』と『共通』)
というイメージになります。
実はこの「専用」「一般」「共通」という概念は
モーニングスターの以下記事で知りました。
『DC専用で目立つパッシブ・バランス・低コスト、口座はDCを含めた総合的な管理が重要』
ちょっと意外に思ったのが下記です。
モーニングスターの調べでは
2020年3月末時点における
「専用」の純資産残高は5.6兆円と、全体の7割強を占めており、
確定拠出年金でのみ取り扱われているファンド(専用)が、いまだ7割強を占めるのですね(純資産残高ベース)
やはりこの制度にはどこか閉鎖的なイメージがあると言わざるを得ません。
特に「企業型の確定拠出年金」では
お客様がファンドの『ラインナップ表』を見ても、イマイチ共感しにくいというか、馴染みが薄い感が否めないのです。
『専用』の投資信託が多いからに他なりません。
いっぽうつみたてNISAでは、
『専用』のファンドはごく僅かです。
つみたてNISAで取り扱われるファンドは基本、
『一般』で広く流通している投資信託です。
逆説すると、確定拠出年金と特定口座では『同じファンド』で揃えにくいわけです。
続いてモーニングスターの記事では、
ファンドの『コスト』について意外な事実を載せています。
「専用」はコスト面での優位性も高い。
2021年3月末時点における
大分類別の信託報酬等(税込)平均をみると、
海外債券では0.79%、海外株式では0.67%
いずれも「専用」が「一般」を下回り、
他の5つの大分類のいずれも「専用」が下回っていた(図表3参照)。
『専用』ファンドのほうが、コストが低いのですね。
これはなぜかというと、
『一般』の投資信託では、
アクティブファンドの比率がそこそこ高く、
信託報酬(運用管理費用)の高いファンドも多く含むためでしょう。
換言すれば、
確定拠出年金『専用』のファンドでは、
「インデックス型(パッシブ型)の比率」が高いと云えます。
2021年3月末時点における純資産額比率では、パッシブの割合は「一般」の13%に対し、「専用」は66%となっていた。
けっこう大きな違いですね。
もうひとつ『専用』ファンドの特徴は・・。
「専用」ではバランスが35.7%と最も高く、海外株式は24.3%、国内株式は19.9%などとなっている(図表2参照)。
フム。
でも、どうして『専用』ではバランスファンドの比率が高いのでしょう?
確定拠出年金は
『企業型』から先行して広まりました。
企業型は文字通り、
企業の思惑から制度が導入されており、
(ちょっと意地悪く言えば)
まったく真っ白な状態で、
従業員を「加入者」として巻き込んでいるわけです。
何かしら商品を選んでもらわないといけないとすると、
(ちなみに「確定拠出の年金制度」では、
アメリカでもオーストラリアでも『バランスファンド』の比率がけっこう高いのです。)
確定拠出年金は60歳まで引き出しが出来ず、
おまけに掛金の額も限られており、
どこか閉鎖的、かつ硬直的な「しくみ」がまかり通ってきました。
その証しが
『専用』ファンド比率の高さなのです。←これは良くないこと。
「インデックス型のファンド」に関しては、
当初『専用』のインデックスファンドが
『一般』のインデックスファンドより低コストを誇っていましたが、
今では「逆転現象」が起こっています。
今後、iDeCo、企業型DCで商品を充実させ、
加入者を増やしていくためには、
つまり『一般』のファンドを
もっと確定拠出年金の商品に加えていく必要があるでしょう。
これは闇雲に商品数を増やすという意味ではなく、
商品ラインナップの中で「新陳代謝」を図っていくということ。
これまで硬直的であったからこそ、
「改善の余地」も大きいと云えます。
来年10月から原則すべての企業型DC加入者が
iDeCoにも加入できるようになれば、
確定拠出年金の『改善点』がさらにクローズアップされることになるでしょう。
カテゴリ:確定拠出年金(iDeCo・企業型)