100年ライフプラン

隠れたFIREの啓蒙書?(書籍「DIE WITH ZERO」のお話)

2021年9月16日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

すぐれた書籍は
自分の中に息づく旧来の秩序を
一度「ガラガラポン!」してくれます。

そして今まで気付かなかった思考の回路を、
「こんなルートもあるよ!」と示してくれるのです。

わたしの場合、この本がそうでした。

 

 

あなたが思う以上に「早く」
かつ「意識しながら」お金を使わないと、
結局、お金を残したまま人生が終わってしまうよ・・。

 

と、書籍『DIE WITH ZERO』は説いています。

 

「意識しながらお金を使う」とは
なかなか高度な技ですが、
同書では「お金を使う」= 経験を買うと定義しています。

(結局、人生の中身とは『思い出』の総和なのです・・)

 

『DIE WITH ZERO』の論争的部分は、

 

〇 お金を多く残したまま死ぬとは、
その「お金」を用いて経験することが出来た、
あるいはチャレンジすることが出来た「事象」を経ずに人生を終えてしまうことだ!

 

(=もったいないことなんだ)と
言い切っている点でしょう。

もちろん異なる意見があるのは承知しています。

 

 

お金(資産)は次の世代に遺してこそ、
さらに根太く多様に育つ可能性があるのだから、
むやみに使ってしまわず次の代に「バトンタッチすべきだ」という考え方です。

(これは直接、親族に相続させることだけでなく、
広く寄付や基金を創設する等も含まれます。)

上記は筋が一本通った、素晴らしい考えだと思います。

 

しかし『DIE WITH ZERO』では
人の一生の完全なる自由さを尊重します。
また自己完結性(人生は死んだら終わり)を認めています。

刹那だからこそ尊い・・。

だから生きている間に

 

「お金は利用し切らないと意味がないよ。」と喝破するのです。

 

ヒトとお金の『関係式』を
ゼロベースから見直している点に、わたしなど惹かれてしまいます。

 

 

 

お金は大切です。

そしてある程度のお金が手元にあることで、
お金の煩わしさから解放されるのも事実です。

しかし所詮、
お金は生きている間に使う「ツール」であるわけで・・。

 

わたしがはっとしたのは、
次の文章です。

 

〇 お金の価値は『年齢』とともに下がる

 

FP(ファイナンシャルプランナー)は
あなたという人間を『主人公』に、
お金について具体的なアドバイスを行う人です。

ところが、いつの間にか、

6000万円とか8000万円とか、
お金の量(ボリューム)を権威として
(= お金を『主人公』に置いて、)

「はい、ねんきん定期便の数字を拝見しても、これだけのご資産があれば、老後は大丈夫ですよ。」

みたいな言い方をしてしまったりします。(反省。)

 

 

 

「何のためにお金を貯め、増やすのか?」
そう聞かれれば、

多くの人が「老後」のため、
仕事を辞めたあと、
年老いたときの「安心」を買うためと答えることでしょう。

この回答は決して間違っていません。

が、しかし、

 

〇 お金の価値が『年齢』とともに下がる とは?

 

同じ5000万円のお金でも、

70歳のときより
50歳のときのほうが、

本当はそのお金の生かし方、使途の「多様性」において分(ぶん)がある・・
より有意義にそのお金を利用することができる・・。

 

 

肌感覚では↑上記を知りながらも、

しかし私たちは
50歳時点の5000万円を(ほぼ使わずに、)
70歳時点で(たとえば)7000万円に増やしていたりするのです。

それはなぜか?

 

具体的に○○をしたい。
(=○○にお金を使いたい)という希望・思いよりも、
将来の漠然とした不安が勝ってしまうためです。

 

具体的に○○をしたい。<  将来の漠然とした不安

これが、あなたの望んでいる式ですか?

 

上記の例でいえば、

下手をすると70歳時点の7000万円も
「まだ使わない」という選択をされて、

そして90歳では(それが)9000万円位になったりもします。←ホントです!

 

「カンさん。そう言いますけどね、
40代、50代はもう仕事に家庭に忙しくて、
具体的に○○をしたい。
(=○○にお金を使いたい)なんてなかなか出来ないんですよ!」

 

あっ、はい・・。


でもホントにそうですか?

 

 

あなたも、

50歳時点の5000万円(ほぼ使わずに、)
70歳時点の7000万円(ほぼ減らさずに、)

90歳時点で9000万円位になってしまうような
お金の状況は(ホントは)望んでいないですよね?

※次の代に「多く遺す」という考えをお持ちの人は別ですが・・。

 

年を重ねれば重ねるほど
「お金」の価値は下がり、
「時間」の価値が上がります。
それはあなたがうんと若いとき、
「時間」はふんだんにあったけど、
「お金」は全然なかった。の『対』なのです。

 

 

時間、お金、体力のトライアングル・・。
「人生の時間」は規則正しく減っていきます。
「お金」は意識しないと逓増していきます。
「体力(健康)」は少しずつ減じていきます。

 

 

 

だとすると、
具体的に「何に」お金を使うかはわりと明快で、

時間を買うために、お金を用いるべきなのです。

 

〇 今、54歳のあなた。
もし60歳でリタイアを考えているなら、
たとえば2年分の生活費を費やしてみませんか? お金を用いて。
(=「2年という時間」を買うわけです。)
そして、
58歳でのアーリーリタイアを目指す。(あくまで一例です)

 

 

 

わたしは『DIE WITH ZERO』は
隠れたFIRE(経済的自立・早期リタイア)の啓蒙書だと思っています。

 

資産運用の真の目的は、
あなたのお金を増やして、その後それを『使う』ことにあり、

最終、お金の費やし方にこそ
「あなたらしさ」が発露すると考えます。

(注:お金を増やすことは増やすことで大切なのですよ!)

 

本書にも出てきますが、
アリとキリギリスでいえば、
日本人はあまりにも「アリ」に傾倒してきた人生観ではなかったかと・・。

キリギリス的な、お金を
冒険心を持って、思い切り、自分らしく『使う』という方面は、

チャレンジングなことではありますが、
まさに今、資産運用に励んでいるあなたに「一考してみましょう!」とお伝えしたいのです。

 

『DIE WITH ZERO』の意味は?
死ぬときに財産をゼロにするという生き方ですが、
同時に、死ぬときにやり残したことをゼロにするという生き方でもあります。

 


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