投資信託あれこれ

より良い未来のために(2003年に「野村ファンドネット証券が廃業します」というメールをお客様にお送りしました)

2021年8月28日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

リスクを負って
投資信託を保有していますから、
プラスのリターンを得たいと願うのは当然のこと。

が、根本のところ、
ゼロの地点に少しだけ戻ってみると、

投資信託で資産形成する際に
『何がもっとも重要か?』と尋ねられれば、

 

〇 その投資信託が、ちゃんと存続し続けること。
〇 窓口の証券会社が、ちゃんと存続し続けること。

 

と答えます。
(これ以上に大事なことはないわけです。)

 

 

ずいぶん昔(18年前)の話になりますが、

かつて投資信託だけを扱ったネット証券会社があり、
その名を『野村ファンドネット証券』と云いました。

当時としては
画期的な金融機関だったと思います。
また、低コストのインデックスファンドも積極的に扱っていました。

以下、わたしが既存のお客様にお送りしたメールです。
(2003年8月のことです)

 

ここから)
「野村ファンドネット証券に口座をお持ちの方へ」
皆さん、こんにちは。
晋陽FP事務所のカンです。
残暑お見舞い申し上げます。
弊所のお客様で、
野村ファンドネット証券にて口座をお持ちの方へご連絡があります。
この12月をメドに
野村ファンドネット証券は廃業し、
ファンドネット証券から
野村證券へ口座の移管が行われるようです。
要は、投資信託の販売・保管業務を、
野村證券に新設する「ほっとダイレクト」に
集約するようなのですが、
(例えば)「PRUマーケットパフォーマー」などは、
12月以降、新たな買い付けができません。
しかしながら、口座の移管を希望すれば、
引き続きファンドの保有はできるようです。
また、ファンドネット証券の
「ツミタテルーム」を利用して
積立て投資をされている方は、
野村證券に口座を移管しても、
積立てが継続できないファンドが多数あるようです。
わたし自身、
「ファンドネット証券」のコンセプトを高く評価していただけに、
今回の突然の通知は残念でなりません・・。
ここまで)

 

このあたりの経緯を、
一投資家として水瀬ケンイチさんが以下記事にまとめておられます。
(心の奥底から切実な声が伝わってきます・・)

外国株式インデックスファンド放浪記(その4)
外国株式インデックスファンド放浪記(その5)

 

18年が経った今も、
わたしはお客様からの落胆の声を
昨日のことのように思い出します。

 

「カンさん。どうしよう」
「せっかくいい窓口が見つかったと思ったのに・・」

 

 

大げさではなく、
膝から崩れ落ちるくらいのダメージを受けた投資家は決して少なくなかったはずです。

それほど野村ファンドネット証券のコンセプトは当時としては素晴らしく、自分たちの金融インフラとしてずっと存続して欲しいと誰もが願っていました・・。

 

が、時間軸を少し広げてみれば、
実は窓口機関の消滅だけではありませんでした。

文中にある
「PRUマーケットパフォーマー」は、

2008年以前は低コスト「インデックスファンドシリーズ」として、海外株式・海外債券・日本株式・日本債券を擁し、人気を博した投資信託でした。

 

その「PRUマーケットパフォーマー」も、
2018年に日本株式、日本債券が繰上げ償還され、
2020年には
「PRU海外株式マーケット・パフォーマー」も繰上げ償還され、
残っているのは
「PRU海外債券マーケット・パフォーマー」のみです。

 

(実はわたし自身も繰上げ償還の憂き目に遭いました)

 

 

日本の投資信託の歴史は、

〇 その投資信託が、
ちゃんと存続してくれなかったこと大いにアリ。

〇 窓口の証券会社が、
ちゃんと存続してくれなかったこと大いにアリ。

これが事実です。

暗く理不尽な時間を経て、今日があることを忘れるべきではないでしょう。

 

投資信託は(他の生活商品と違って、)
その効き目(成果)がすぐには現れない商品です。

ファンドを持つ人は
ファンドに関わるリスクをすべて引き受け、
『長期でずっと、投資信託とつき合い続ける覚悟』なのですから、

それを提供する金融機関も、
『長期でずっと、投資信託を供給し続ける覚悟』を持ってもらいたい。

(より良い未来のために、
今日はあえて昔の話をさせていただきました・・)

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