パトリック・リー氏があなたに『東南アジア小型株ファンド』を勧めてきたら・・
2021年6月23日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
人はかみ砕いて論理的に説明されると、
フムフムと頷きます。
(すなわち納得します)
でも「これを買おう!」と行動に移すのはあくまで感情の領域です。
したがって
『煽情的な情報』がしばしば、
人を動かす武器になってしまいます。
5,000万円を手にした暗号資産☆超マル秘必勝法!」
とか。
以下、本当に
たとえば、の『たとえ話』ですが、
わたしが次のような【話】を真剣にしたら、
あなたはどう思われますか?
※ 以下は「フィクション」です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あのですね、香港で
「東南アジアの小型株」を専門に扱っている
運用会社がありまして。
本社はイギリスにあり、
その運用会社で15年以上ファンドマネージャーをやっている
パトリック・リー氏と、
実はわたしは知り合いなのです。
リー氏はある日、わたしにこう言いました。
「ミスターカン。
この『東南アジアハイパーXファンド』は満期が8年だ。最初の1年は解約不可とさせていただく。
でも、満期になるまで保有してくれたら、
アメリカドル建てベースで
年率8%のリターンを【保証】するよ。どうだい? 最低購入単位は50万円からだ。」
あなたはどうお感じになりましたか?
B「ちょっとおかしいなあ・・」
どっちですか?
今、述べた金融商品について、
「良さそうじゃん。イイかも!」と思ったあなた。
一度、思考のでんぐり返りをしてみましょう。
この先、あなたがどこで
どんな金融商品と出会おうが、
投資の世界ではひとつの『原則』があります。
『リターンは不確定である』ということ。
さっきの、パトリック・リー氏の発言を
思い出してみてください。
この『東南アジアハイパーXファンド』は満期が8年だ。
満期になるまで保有してくれたら、
アメリカドル建てベースで
年率8%のリターンを『保証』するよ。
って言っていますけど、
「保証する」って一体どうやって・・?と思いませんか?
「If it sounds too good to be true, it probably is.」
というものがあります。
だいたいその感覚は当たっているよ。という意味です。
もうひとつ『出題』してみましょう。
(いずれも円建て商品です)
2.トヨタ自動車の5年物社債(年利0.8%)
3.ワタミ株式会社の5年物社債(年利3.3%)
今、ワタミの社債に魅力を感じましたか?
(果たして3.を選んで正解なのでしょうか?)
よーく考えてみましょう。
債券は約束した利息を
定期的に支給してくれる金融商品です。
万一のことがなければ、貸した元本も「満期時」に返ってきます。
『日本国政府や、トヨタや、ワタミが破綻するケース』です。
そういう意味で
(実は)債券商品も
『リターンは不確定である』と定義できます。
たとえば、
ワタミ社債の「年3.3%」という利回りは、
あなたが背中に背負うリスク量に見合っていると思いますか?
数字はあくまでフィクション(架空)ですが、
ワタミは3.3%という利回りを提示しているのでしょう?
事業会社がお金を借りる場合、
「銀行」から資金調達するという手もあります。
しかし(もしかして、ですよ)
もしかして、
銀行で5年間の借り入れで、
年2.7%とか3.0%の借り入れ金利が実現できなかったから、
(もしくはそもそも銀行から断られたから)
直接、投資家から借り入れ(社債発行)を行っている?
~金利の高さは、リスクの大きさを示しているのです。~
いつでも胸の奥で、
「If it sounds too good to be true, it probably is.」
「えっ、これって現実的に考えて良すぎね?」という場合、
だいたいその感覚は当たっていることを覚えておきましょう。
さて、パトリック・リー氏に戻ります。
今、ドル建てで安全資産とされる
『10年もののアメリカ国債』で
年1.5%程度の利回りしか得られません。
リー氏が所属する運用会社に
【保証】できるのでしょうか?
彼ら/彼女らは、
なにか特別な「魔法の杖」でも持っているのでしょうか?
そんなモノはありません。)
先ほど、
アメリカドル建てベースで年率8%のリターンを【保証】するよ。~
の『部分』を読んだときに、
あなた自身が日常生活で培った常識、
「健全な懐疑心」のようなものが、
ピピッと反応して
その商品に対して
直ちに『黄色信号』を発しないといけません。
それこそがマネーリテラシーなのです。
カテゴリ:投資家の感情リスク