どうして20世紀の終わりごろ、投資信託の運用管理費用は高くなったのか?
2021年5月13日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
たしか2006年頃の
日経新聞の記事だったと思います。
記事のタイトルは、
『投資信託 コストに注意』
日経新聞編集委員 田村正之さんの署名記事でした。
田村さんの記事にはいつも一貫性があり、
日経新聞にありがちな、
企業(金融機関)に気を遣いながらの「総花的な言い回し」は見当たりません。
その記事内でも、
投資信託のけいぞくコスト
「信託報酬(運用管理費用)」が大きく上昇したのか?
と問題提起がされていました。
投信会社(運用会社)幹部のコメントとして、
外国投信会社(運用会社)が日本に入った際、
販売会社に売ってもらうため
信託報酬を高めに設定、
それが全体の水準を引き上げた。
と記されていたのを覚えています。
【これ、事実です。】
ひとつ具体例を挙げてみましょう。
米国ボストンに本拠を置く
フィデリティ投信は1990年代後半、
投資信託の信託報酬(運用管理費用)の
『振り分け方』において、
実に思い切ったことを行いました。
【販売会社の取り分】を大幅にアップさせたのです。
たとえば一例ですが、
1998年に運用を開始した
『フィデリティ・日本成長株・ファンド』の
投資信託説明書(交付目論見書)を見ると、
ちょうど13ページ目のところですが、
画像元:交付目論見書(フィデリティ日本成長株ファンド)
ご覧の通り、
税抜「年1.53%」の信託報酬(運用管理費用)のうち、
それぞれの会社の【取り分】が
販売会社 0.70%
受託会社 0.10%
となっています。
(※委託会社とは運用会社のこと。)
投資信託に関わる会社で
だれがメインプレーヤーかというと・・
それは(もちろん)運用会社です。
運用会社こそが
ファンドを作って運用している『メーカー』であるためです。
おおむね1980年代までは、
投資信託の信託報酬(運用管理費用)のうち、
過半は『運用会社』が取っていました。
しかし上記『3社の取り分比率』を見ると、
【販売会社】も運用会社とほぼ変わらない『報酬』を
得ていることが分かります。
これは?
高い支払い『報酬』によって
販売会社に「より頑張ってファンドを売ってくださいね!」という、運用会社(フィデリティ投信)の意図なのです。
「有店舗型の大手証券会社」でした。
結果、販売会社の「取り分」が増え、
その分信託報酬(運用管理費用)が高くなった。
その結果、消費者がより高い手数料を支払わされることとなり、消費者の利益が損なわれたのです。
(ご注意。フィデリティ投信はあくまで
ひとつの事例に過ぎません。
業界の理屈が当たり前のように通っていた
投信業界の悪しき慣習を指摘したかったのです。)
投資家が負担する『継続コスト』が上昇するとは、
同じ名目リターンなら、
投資家の実績リターンが下がることに他なりません。
1990年代後半は
このような悪しき慣例が作られた時期なのです。
投信の歴史の暗部として、
私たち投資家は覚えておいて損はないと思います。
カテゴリ:投資信託あれこれ