投資信託あれこれ

運用開始時に4000億円もの資金が集まる投資信託は?(避けたほうが無難です)

2021年4月22日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」という投資信託があります。(愛称:未来の世界(ESG)

当該ファンドは4月21日時点で
純資産額がなんと1兆円を超える巨大ファンドです。

 

画像元:アセットマネジメントOne

しかも運用を開始したのは去年の7月!
相当コンスタントに資金流入が続いているのですね。

= たいへん多くの人が当ファンドを購入しています。

 

人気があるSUV車なら、
わたしも買いたいと思います。

あるいは先日発売された
「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」がすごい人気ですが、このビールなら飲んでみたいと思います。

(缶を開けると泡が自然に発生するビールなのだそう。)

 

じゃあ、人気があってスゴイ資金を集めている投資信託も、やはり『買い』でしょうか?

 

「買い」ですか?

ですか??

 

ちょっと冷めた視点から眺めてみましょう。

壮大な触れ込みで
数多のリソースを用いて投資信託を宣伝し、
運用をスタートする際に4000億円もの資金を集めていたのが、他ならぬ「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」です。

 

画像元:モーニングスター

 

運用会社はアセットマネジメントOneで
『みずほフィナンシャルグループ』の一員ですから、

みずほ銀行、みずほ証券、みずほ信託銀行などで、
既存の顧客に対して相当強力に営業活動を行ったと推察されます。

 

では、

SUV車や、缶ビールと、
投資信託の
いったい『どこが違うのでしょう?』

 

前者はその効用(クルマに乗って心地よい・ビールを飲んで美味い)が、すぐに確認できるのに対して、後者は、その効き目がすぐには表れない。という違いがあります。
わたしたち消費者は、
この『違い』を肝に銘じておくべきでしょう。
投資信託を買うことは、
ビールやクルマの購入とは本質的に異なるのです。

 

 

「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」は新発売の投資信託であり、
まったく運用実績がなく、
にもかかわらず、その時点で巨額の資金が集まっています。

 

「勝ち馬に乗ろう!」と
勇んでこのファンドを買った人がいるいっぽう、

「何?それって大丈夫なの?」と、健全な懐疑心のランプが点滅して、当ファンドには見向きもしなかった人がいます。

さて、どちらが正解なのでしょう?

 

まず、あなたもわたしも、
この投資信託を初期段階で『どんな人たちが買っていたのか?』

ここに思いを馳せるべきではないでしょうか。

辛辣になってしまい恐縮ですが、
去年の7月、当該ファンドを、

みずほ銀行、みずほ証券などの社員にうまく言いくるめられて、おそらく決して少なくない金額をスポットで購入した人たちって、

 

もしかすると
熱しやすく冷めやすい「ファンド保有者」では?

 

 

仮の話ですが、
もしも何年かのちに株式の市況が悪化して、
当該ファンドの価格が急落したりすると、

胆力がない「ファンド保有者」は、
持ち切れず投資信託を売却するかもしれません。

あるいは逆に
この先も好況が続いて、当該ファンドを買った人たちの利益が40万円、50万円と膨らむと、

これまた胆力がない「ファンド保有者」は
利益確定のため投資信託を売ってしまうかもしれません。

 

こういうタイプのファンド保有者って?
『移り気』なのです。
ファンド保有者というより、ファンド取引者。

 

 

では、あなたは
このようなタイプの人たちと同じ『ファンド保有者』になりたいですか?

わたしはなりたくありません。

 

 

意外と知られていないのですが、

 

投資信託の運用とは
作り手(運用会社)と、
使い手(ファンド保有者)の『共同作業』です。

 

耐力があって、
ファンド価格が上がっても下がっても
長く持ち続けてくれる、

あるいは定期的に資金を入れ続けてくれるファンド保有者が多いと、作り手(運用会社)も投資信託の運用がしやすくなります。

 

その逆は?
投資信託の運用がしにくくなりますね。

 

 

以下、直近6ヵ月にはなりますが、

「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」と、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の成績を比較した図です。

ピンク色のほうがSlim全世界株式です。)

画像元:ヤフーファイナンス

 

おまけに「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の運用期間は2030年までの10年間しかありません。

また、運用管理費用も年1.848%かかります。

 

おそらく2年も経たないうちに、
新規の資金流入が細ってきて、
当該ファンドの価格が上がろうと下がろうと、

当初の『熱』が冷めてしまったファンド保有者の解約が続き、当ファンドの純資産額は逓減することになるとわたしは予想します。

運用開始時に4000億円ものお金が集まるファンドは何かがおかしいのです。

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