投資信託あれこれ

信託財産留保額は、ファンドの仲間内に支払う「ごめんなさい料」です

2021年3月23日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ニッセイアセットマネジメントの
『購入・換金手数料なしシリーズ』も、

三菱UFJ国際投信の
『eMAXIS Slim シリーズ』も、
ファンドを解約する際の「信託財産留保額」はゼロ、即ちかかりません。

これはこれで悪くないとは思いますが、
『信託財産留保額』は、
「購入時手数料」や「運用管理費用」とはちょっと意味合いが異なるのです。

??

実は『信託財産留保額』は
販売会社や運用会社に支払う手数料ではありません。

これは・・
ファンドを保有する仲間内に支払う『ごめんなさい料』なのです。




 

仮にあなたが「外国株式インデックスファンド」に投資を行っているとしましょう。

 

運用期間は無期限で、
たくさんのファンド保有者が長期で資産を増やすため、この投資信託を持ち続けています。

しかし、春の訪れを感じたある日。

あなたは思いがけず素敵なマンションに出会って、
これは早く買わなきゃと思い、
頭金がどうしても足りなかったため、



保有している「外国株式インデックスファンド」を全額、売却することにしたのです。


ファンドの運用会社、販売会社は、
日々のファンド解約に応じるのも仕事のひとつですから、

解約要請に従い、
諸々の手続きを経てあなたのために現金を用意します。

この、一連の事務作業にはもちろんコストがかかります。



厳密にいうと
あなたがファンドを解約することで、
ファンドそのものに『コスト負担』をかけるわけで・・。

たとえばわたしや山田さんは、
当該ファンドをずっと持ち続けているだけなのに、
知らないうちに(間接的にせよ)上記コストを負担することになります。


「せっかく外国株式インデックスファンドという長期投資の『船』に乗り合わせたけれど、ぼくは先に船を降りるので、ごめんなさい・・
売却の際に、ファンド保有者のみんなに『ペナルティー料』を支払いますね。」

これが、
『信託財産留保額』なのです。

 



 

ファンド本体に支払われるお金(ペナルティー料)ですから、
仮に『信託財産留保額』が0.1%だとすると(これに消費税はかかりません)

 

あなたがファンドを解約する際には、
ファンドの価格(基準価額)そのものではなく、
基準価額×99.9% =『解約価額』で見る必要があります(0.1%分は差し引かれるため)

 

言い方を換えると、
あなたが上記条件でファンドを解約すれば、

ファンド資産にその0.1%分が加えられ、
その分ファンドの大きさ(純資産額)が増えるのです。

 

まさに他のファンド保有者に支払う「お詫び料」ですね。

 


今でこそ『投資信託』という立派な名前になっていますが、
「ファンド」の起源は・・?

共同購入商品】です。

 

「あのさ、私たちあんまりお金ないから、
みんなでお金を持ち寄って、一緒に株とか債券とか買わない?」

これが、投資信託の原点なのです。



 

たくさんの共同購入者がいるわけですから、
投資の目的とかポリシーは、ある程度一致しているほうが良いですよね。

信託財産留保額は、
ファンド保有者の『質』を維持するための、一種の規律コストなのかもしれません。


もちろん運用会社や販売会社は、
ファンドの解約やそれに伴う事務作業というコストを、
他のコストに含めて均すのでしょうが、

 

安易な解約の防止という位置づけでいえば、
わたしは『信託財産留保額』には意味があると考えます。



たとえば一例ですが
ファンドの『保有年数』に応じて、
「コスト負担」をスライドさせるというのはいかがでしょう?

仮に、ファンドの保有年数

1年未満『信託財産留保額』1%
3年未満        0.5%
5年未満        0.2%
7年未満        0.1%
8年以上         0% のようにするわけです。 

信託財産留保額というコストは、ファンドが共同購入商品であるという証しなのです。

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