打ち勝つのではなく、ミスをしないこと。チャールズ・エリス氏のことば
2021年1月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
もう10年近く前に、
東京でチャールズ・エリス氏の講演会に参加したことがあります。
氏の存在を世に知らしめたのは
「敗者のゲーム」(Loser’s Game)という有名な論文です。
(その後、書かれた著書にも同じタイトルが振られました)
この「敗者のゲーム」のエッセンスを
エリス氏は妻とのテニスを例に挙げ説明していました。
彼女は優秀なテニスプレーヤーですよ。
でも、しきりに「わたしが勝った。わたしが勝った」って言うんです。
まるで、自分が主人公のように・・。
でも、彼女が勝ったのではなく、
わたしが彼女のサーブを取り損なって、
(つまりはわたしがミスをしたから)
彼女に軍配が上がっただけ・・。
ゲームの主人公はわたしだったのです(笑)
資産運用においても、
あなたが誰かに勝つというより、
運用の途上で「いかにミスをしないか」が勝敗を分けるということ。
(⇒要は「負けないゲーム」を心がけることが重要なのです)
エリス氏はまた、
行動心理学の話もされました。
「わたしなら(市場平均を)
上回るリターンをあげることが可能だ」という、
自信過剰がどんな結果をもたらしているか。
(60%の機関投資家は市場平均に負けている。
個人投資家はもっとひどい・・)
人は過剰な評価をしてしまう
(「親しみ」と「ほんとうの理解」を混同してしまう)
ほかにも、
売買回転率が100%を超えるポートフォリオを例に挙げ、
無限の選択肢の中から
銘柄のピックアップを行っている実態を説いていました。
【重要なのは市場ではなく、私たち自身です。】
ということばです。
市場はこれまでも、これからも、
変わらずわがままに存在し続ける。
大切なことは、
『私たちが』市場に対してどのように振る舞えるのか・・。
エリス氏はまた「スキー」を例に挙げ、
・はじめてスキーをする人は、なだらかな斜面を選びます
・スキーの熟練者は頂上近くから滑り始め、
アップダウンのある斜面を選びますね。
「貴方はあなたにふさわしい
市場との接し方を選ぶべきでしょう」と話されていました。
今でも思い出すのですが、
氏の口から、
「(ポートフォリオは)放っておきなさい。」
「インデックスファンドでグローバルに分散するのです。」
「退屈ですよ・・・。」
(↑ご自身があくびのマネをしながら言われていた!)
のような言葉を聞くにつれ、
わたし自身「投資スタイルの原点」を
再確認しているような気持ちになったものです。
真に優れた人は、その主張にブレがありません。
それは広大な裾野に生える「葦」のようです。
頑なという意味ではなく、
日常の些細な例を挙げながら、
同じことを幾通りものパターンで平易に説明できる人なのです。
シンプルさは決して単純ではなく、高みに咲く華なのですね。
カテゴリ:インデックス投資全般