わたしのFP修行

小説家が語る、長期住宅ローンの功罪

2020年12月18日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

もう6年くらい前になりますが、
西日本新聞に芥川賞作家の平野啓一郎さんが
『ローンと事なかれ主義』という文章を寄稿されました。

(残念ながら現在リンクが切れてしまっています。
ただ、こちらのブログでそのコンテンツがおおよそ確認できます。)


平野さんの論点は以下です。

・終身雇用、高度経済成長、地価上昇時代のモデルである、
持ち家促進制度が今だ掲げられている滑稽さ。
(その象徴が長期の住宅ローン(35年)

・上記の対案として、
平野さんは出口治明さんの案を紹介しています。

「持家購入の税制優遇を廃止して、むしろ賃貸に助成を。」
「ライフスタイルに応じて自由な住み替えができる賃貸中心の制度設計へ。」


よく『持ち家か賃貸か?』という論争がありますが、

持ち家を推奨する人も、
賃貸を勧める人も「数字」のみで比較するため、
実はどちらを選んでも優劣は顕著にはなりません。

 



社会という大きな川の流れの中で、
不可避的に生じる淀みや濁りに注目する小説家(平野さん)は、

住宅ローンという長期の借り入れ現象を、
まったく違った側面から解析してみせます。

平野さんはこう言われます。

 

私はこの制度的な矛盾を、ここ数年、折に触れて痛感してきた。

というのも、
バブル期に月々の返済金額を最大限にして
長期の住宅ローンを組んだ人たちは、
官僚、民間企業の会社員を問わず、

年齢とともに、組織の中で
必然的に保守化してゆくからである。


彼らは、否応(いやおう)なく迫られる
月々のローン返済のために、
たった1カ月のキャリアの中断も許されない。

持家を手放さないためには、組織に留(とど)まって、
事なかれ主義に徹しなければならない。

しかも、役職を得て、組織内で権力を持っているのは、まさしくそうした人々である。

 

つまり・・、
平野さんは長期ローンの存在が、

その人の「生き方」「働き方」において、
各人の潜在可能性(ポテンシャル)を押し広げるというよりは、
逆に守りの姿勢(保守性)を醸成することにつながっていると喝破しているのです。


〇 この会社に転職すれば、
自分の可能性がより引き出せるかもしれない。
でも、会社そのものが小さく不安定で、年収も安定していない。

〇 パートナーは
Bという今の仕事より、Cという生き方のほうがきっと向いている。
(でもCでは毎月の収入が減ってしまう)

長く続く暮らしの中で
せっかく別の選択肢(可能性)が出てきても、
長期のローンを抱えていることで
それをあきらめなければならないのは、わたしは本末転倒だと思うのです。


人生の中で、たぶん1回か2回
「ここだ!」というときに、
自分の伸びしろを信じて「ジャンプ」がしやすいじゃないですか、賃貸なら。

20年超の時間で見れば、
生活の状況と中身、そしてお金回りも、
不連続的に変わっていくものだと認識すれば、

その「変化」に柔軟に対応できる賃貸というスタイルは、
これからの時代にフィットしているとわたしは思います。


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