投資の発想法

高配当投資術なのか、無配当投資術なのか?(特にFIREを目指すあなたへ)

2020年11月26日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

この2年くらいでしょうか。
高配当株ETF、高配当の個別株を用いた
いわゆる「高配当の投資戦術」にご興味があるお客様が増えたのは・・。

たしかに配当を得ることは、
リスクを負う投資家にとって
わかりやすい報酬(reward)でしょう。


わたしの記憶によれば、
以前は、
高配当戦術の主たる需要者は「シニアの人」だったと思います。

定年退職が近づき、
自分の老後のお金事情が具体的に見えてきて、
「もう少し定期的な収入が欲しい」という人が、


高配当株、REIT(不動産投資信託)、高配当株ETFに関心を寄せる様は、ある意味「分かりやすい」現象です。

なぜならこの場合
リスク資産からのリターン(配当・分配金)を、
すぐに用いて使うニーズがあるためです。

(わたくしがお勧めするかは別として。)



ところが・・・。

昨今はこの「高配当株戦術」が、
FIRE(経済的独立・アーリーリタイア)と結びついて紹介されるケースが増えています。

 

つまり、
20代~40代の若い人の間で、
FIRE実現のため「高配当株戦術」を採用する人が増えているのです。


フム。


この場合、

高配当株、REIT(不動産投資信託)、高配当株ETF【保有】
→ そこからのリターン(配当)を
すぐに使うのでしょうか・・?


NO、ですね。

FIREが実現していない段階では、
(配当金、分配金)はまだ使いません。


高配当株投資術は、
文字通り高めの配当、分配金を希求しますから、

投資を続けるとそれなりのキャッシュ(配当・分配金)が払い出され、
手元にどんどんキャッシュが貯まっていくわけです。

キャッシュが手元に溜まるって、
FIREを目指す人が望んでいることなのでしょうか?

 



「カンさん。何言ってるんですか?
そのキャッシュはもちろん、
高配当株、高配当株ETFに『再投資』するんですよ!」

えっ!?

でも(そのキャッシュを)そもそも使わないのなら、
最初から配当や分配金は【もらわないほうがよくないですか?】

だって(税金を支払う分)複利の効果が減じてしまいますし・・。


率直に申し上げて、
FIREを目指すなら
できるだけ無配当、無分配型の商品を選んで、

リスク資産の価値を高める投資(=キャピタルゲインを目指す投資)に専念すべきでしょう。


私たちにとって大切なのは、
リスク資産の規模(ニワトリの大きさ)を、大きくすることです。

小さなニワトリでは、所詮小さなタマゴしか産みません。
大きなニワトリになれば、大きなタマゴを産むのです。






キャピタルゲイン型の投資に専念し、
ニワトリを大きくしたあとで、
自分で定期的に資産を部分売却していけば、

大きなニワトリが、大きなタマゴを産む状況を作ることができます。


そうですよね?)


配当、分配金という目に見える報酬に吸い寄せられて、
若い人が高配当の株式(群)を持ってしまう。

ここは一度、深呼吸してみたほうが良さそうです。




そもそも配当が多い株式会社って?


どちらかというと、
重厚長大、成熟型の企業が多いのではないでしょうか。
(安定成長型と云ってもよいでしょう・・)


今67歳の人がそういうリスク資産を持って、
配当を当てに暮らしていくのは(もしかすると)アリかもしれません。


しかし、33歳の人が
そういう類の株式なりETFを保有し続け、
53歳になったとき、

果たしてそれら重厚長大、成熟型の企業の株価は、
どの程度伸びているのでしょうか?


いや、もっと云えば、
今33歳の人が80歳になったとき(47年後です)

それら安定成長型の企業(群)は
社会が激変する中、
いったいどのような立ち位置を占めるのでしょうか?

 




わたしは「FIREを目指す人」と、
「高配当株投資」の間には
本質的なミスマッチがあると思います。


あなたが本当に望んでいるコトと
選んでいるモノの間にタイムラグが存在し、
かつかみ合っていないのです。

アーリーリタイアメントとは、
生活の基盤を40年、50年、60年という長きにわたり、
リスク資産の適切な管理に依拠する暮らし方のこと。



それはたとえば、
たとえば、ですが、
ずっとずっと「アマゾンの株式」を持ち続けるようなもの・・。

あっ、すみません、↑あくまで概念的な「たとえ話」で、
個別株投資、アマゾンへの投資を勧めているわけではありません。


アマゾンの上場は1997年です。

この会社は「利益なし」「配当なし」で、
それでも投資家に
長期投資を啓蒙し得た最初の株式会社かもしれません。

では、アマゾンが配当金を出す日は来るのでしょうか?

はい(いつかは)来ます。


そのときアマゾンはようやく、
新興株式の看板をおろすのでしょう。

 




あなたがアーリーリタイアメントを過ごす長い歳月の中で、

 

「新興株式(配当なし)」→「成長株式(配当小)」→「重厚長大型株式(配当大)」という、企業としての変態を、アマゾンという会社も続けるのです。


それほど長い時間が
これから先FIREを目指す人には横たわっているのですから、

今から、高配当の株式をわざわざ選んでしまうのは
やはりちぐはぐだとわたしは思うのです。

 

お知らせ)

当クリニックでは「個別カウンセリング(オンライン)」を通じて、
個別株、投信、ETFと複雑に絡み合った金融商品群を、お客様のニーズを伺いながら整理整頓し、シンプルな資産構成に『お引っ越し』するお手伝いをさせていただいております。

 

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