お金を増やすための保険はもう終焉を迎えている?
2020年11月18日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
日本人は保険が好きな民族といわれます。
正確には、
コツコツ保険でお金を増やすことが好きだったのかもしれません。
貯蓄性の保険が
日本で広く浸透したのは(実は)理由があります。
明治以降、保険商品が日本に紹介された際、
いわゆる『定期保険』
死亡保障を売るということが困難を極めたといいます。
「もしも死んだら・・・・」
というセールスの冒頭文句が、
「なんと縁起が悪い!」と、
多くの人から不評を買ってしまったためです。
「実は貯蓄にもなる商品です・・」ということで、
終身保険、養老保険、個人年金保険などを開発していったと云います。
ちょっと高度経済成長の時代を例に挙げますが、
「高金利」と「貯蓄性保険」の相性は抜群で、
―なぜなら保険は固定金利でお金を増やしていくため。―
貯蓄と保障を兼ね備えた保険は急速に普及していきました。
歴史背景としてよく似ているのがドイツでしょう。
ドイツ人は日本人とメンタリティが似ていると云われます。
貯蓄性の保険(個人年金保険含む)が大好きなのですね。
画像元:ドイチェ・アセット・マネジメント「ドイチェ・リポートHighlights」
日本、ドイツは金融資産の『内訳』がよく似ています。
(いちばん右が米国ですが、もうメンタリティが全然違いますね)
おそらくドイツでも、日本でも、
長い時間軸で『成功体験』が共有されたのでしょう。
個人年金にお世話になった、
学資保険でお世話になった、
老後の生活で保険商品があったから、ゆとりを持って生活が出来たという『成功体験』を、
それこそ近所のスーパーに行ったときに、
知り合いの人たちと共有できるくらい、
貯蓄性の保険は深く人々の生活に入り込んでいったわけです。
が、しかし、
日本国内(円建て)でいえば、
もう円建て終身保険、個人年金保険は
息も絶え絶え、終焉を迎えています。
金利が『ゼロ』である、
しかも固定金利である商品(貯蓄性の保険)は、
一体どこに魅力を見い出せばよいのか・・
ということで、
ドル建て、豪ドル建ての終身保険、個人年金保険に力を注いできたわけです。
ところが、新型コロナウイルスの発生に伴い、
先進諸国は未曾有の財政支出を実施します。
この財政支出(借金)を支援するため
各国の長期金利は限りなく「ゼロ」に近づいています。
画像元:Wall Street Journal
こんな数字の揃い踏み、今まで見たことがありません。
ドイツとか「マイナス金利」ですし(-_-;)
余談ですが、
「もう保険に頼れない!」というドイツ人の悩みは(想像するに)日本人以上に深刻なのでは・・?
さて、話を日本に戻します。
ドル建て、豪ドル建ての「終身保険」「個人年金保険」も、
もうお金を増やすための商品ではなくなり、新発売の外貨建て保険は今後、かなりの苦戦を強いられるのではないでしょうか?
以下は投資信託の話題ですが、
「金利が付かない」状態で
投資信託の経費を賄いつつ、
安定的な運用を続けるのはもうムリ!ということで、
豪ドル建てMMF、ニュージーランドドル建てMMF、カナダドル建てMMFなどが、相次いで繰上げ償還されています。
日経新聞(11月11日付)
『外貨建てMMF、繰り上げ償還が相次ぐ 金利低下で』
先進諸国の「ニアリーゼロ金利」は、
簡単に終わりそうにありません。
コロナ渦が終息すれば、
緊急的に財政支出したお金を、
「一体どうやって返すのか?」という議論が湧き起こってくるはずです。
金利とは、借金した人(国家)が支払う手数料のことですから、
各国は是が非でも「長期金利」を低く抑えようとするはず。
過去の遺物になろうとしているのです。
「保険の本質」って何でしょう?
保障を買うこと、補償を買うことです。
〇 もしも起こってしまったら
経済的負担が莫大になってしまうため、
自動車保険や、収入保障保険(死亡保障)を買っておくという発想ですね。
(これらは、保険にしかその役割が担えないわけです!)
じゃあ、それ以外は?
これからは単純に貯蓄したり、単純に投資したりしたほうが良さそうですね。
これまであまりにも保険の役割が『肥大化』し過ぎただけで、
わたしはほんらいの保険商品に
これから回帰していくと思います。
(市場規模で云うと半分以下になるでしょう・・)
また、保険商品には、
預金や投資信託にはない『ビッグバン』が待ち受けています。
それは「手数料開示の義務化」です。
日経新聞(6月29日付)
『投信・保険、リスク透明化 金融庁提案』を見ると、
投資信託や貯蓄型の保険、金融派生商品(デリバティブ)などを購入する際に、
消費者が支払う手数料を『共通の書式』で示す方向性が示されています。
激励の意味を込めてですが、
保険会社にはぜひ「普通の、まっとうなサービス業者」を目指してもらいたいものです。
当クリニックでは「個別カウンセリング(オンライン)」を通じて
保険商品を中心としたご資産状況を「整理整頓」し、
投資信託を中心としたシンプルな資産構成に『お引っ越しする』お手伝いをさせていただいています。