経済よもやま話

世界的なゼロ金利時代でも債券投資は有効ですか?【あなたの疑問に答えます!】

2020年11月10日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

当クリニックのお客様から頂戴した
さまざまな『質問』にお答えしていく、

その名もズバリ、
『あなたの疑問に答えます!』




第9回!
小久保さま(仮名)東京都

ブログ、Twitterいつも拝見してます。
新天地でも変わらぬご活躍ですね。

質問!
世界的なゼロ金利時代でも債券投資は有効ですか?

 

答え)

中期(向こう5年程度)では有効ではない。
長期(15年超)では有効です。

 


この稿では、
先進諸国の数多の国債を組み入れる、
「先進国債券インデックス」に絞ってお話ししましょう。

小久保さんおっしゃる通り、
先進各国の長期金利は軒並みゼロか、ゼロに近づいています。

仮に「先進国債券インデックスファンド」を持ち続けても、以前ほどリターンが上がらないのは自明の理です。
(※ 本稿では為替の変動要因は除いて記述します)


かつて、
世の中の投資意欲が旺盛だった頃は、
世界的に見て 貯蓄 < 投資 になっていました。

ところが・・ここ最近は?





画像元:日経新聞『異次元債務に市場沈黙 カネ余りが促す大衆迎合

貯蓄 > 投資 のトレンドになってしまっています。


この『原因』はいくつか挙げられるでしょう。

 

・世界的な高齢化
・主たる産業の構造変化により、以前ほど投資を必要としなくなった

・格差の拡大
(現実として↑富めるものはますます富んでいます。
たとえば1億ドルの資産があっても実際使えるのはわずかで、多くが貯蓄に回ってしまう・・



貯蓄 < 投資 だった時代は
お金を借りるニーズが旺盛であり、
自然に「4%」とか「5%」の金利が付きました。

換言すれば、これから先も
貯蓄 > 投資 である限り、
先進各国で金利が「そこそこ付くよ。」という望みは薄いわけです。


はじめに
中期(向こう5年程度)では債券投資は有効ではない。
とお答えしたのは、

中期では、
「先進国債券インデックスファンド」に投資をしても、背中に背負うリスク量に比べて、リターンの大きさが見合わないという意味であります。

 


今、ドイツなどでは「マイナス金利」が常態化しています。
それでも常識的に、先進諸国の金利が-3%、-4%になることは考えにくいです。

とすれば(これから)(いつか)金利が上がる分、
債券(国債)の価格が下がることは目に見えています。

先進国債券を保有する → 債券(国債)価格のマイナスが起こるを、今後は意識せざるを得ないわけです。

 



が、しかし、です。

10年超の時間スパンで見た場合、
金利というものは一直線に「上がって」、
債券価格も一直線に「下がって」しまうものでしょうか?


ことはそう単純ではありません・・。

金利は
長い目で見れば、
上がったり下がったりを不規則に繰り返す生き物なのです。

株式市場のように超長期で上がり続ける(=右肩上がり)というトレンドとは異なります。)


たとえば「金利」は今後、
ネガティブに上昇する可能性があります。

コロナ渦の緊急財政支出で、
先進各国は多大な借金を負ったため、
債券(国債)価格の下落を通じて長期金利が上昇する可能性があります。


また、金利は長い目でみて
ポジティブに上昇するかもしれません。

コロナ渦が社会をネクストステージに押し出すことで、AR(拡張現実)、VR(ヴァーチャルリアリティ)をはじめとした仮想空間に対する膨大な投資ニーズが生まれ、長い目で見れば新たなトレンドとして、

貯蓄 < 投資 が復活してくる可能性もあります。



 

たとえば仮の例ですが、
いったん先進諸国の金利が
「プラス2%」とか「プラス3%」に上昇したとしましょう。

 

単独の債券(国債)のみを持っていれば、
自身が保有する債券価格の「下落」を見るのみです。


しかし「先進国債券インデックスファンド」を保有し続ければ、
ファンドが組み込む債券(国債)は入れ替わりますから、

いったんは金利「上昇」に伴い、
ファンド価格は「下落」しても、

やがてまた、
高めの利率を有した債券(国債)が組み入れることになり、
ファンド価格全体にポジティブな影響を与え始めます。

 

(もちろん、ここには「タイムラグ」が存在します)

 

〇 債券インデックスファンドにおいては、
保有する債券(国債)が入れ替わるという概念はとても重要です。


さらに、先進諸国の金利が
「プラス2%」とか「プラス3%」になっても、

金利の「上昇」=
債券(国債)価格の「下落」が一本調子で続くわけではなく、

3%程度の利息が付く債券が出てくれば、投資家にとって魅力的に映り、
それを購入する人が増え、

また、債券(国債)価格の「上昇」
金利の「下落」が起こる可能性もあります。

繰り返しになりますが、金利は
単純に一本調子で「上がって」いくものではないのです。

 

上がったり下がったりを、不規則に繰り返す・・。


つまりは、
「先進国債券インデックスファンド」を長期(15年超)で持ち続ければ、

ファンドが組み込む数多の債券(国債)のクーポン(利率)は、
0.3%であったり、1.4%であったり、0.6%であったり、2.1%であったりと、ばらけて多様化していくということ・・。


 

この点、満期が決まった単独の債券(国債)を購入する投資とは、根本的に意味合いが異なるのです。


『金利』とは、
お金という商品を融通する際の「手数料」です。

この手数料の水準が超長期で見た場合、不規則に変遷するのは自然の摂理ではないでしょうか?

最後に、220年超の米国の長期金利の推移です。

 



画像元:Vox Media

不規則なアップダウンになっていますね。

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