『そのファンドを運用している人が、自らそのファンドを保有している。』これって良いことですか?
2020年7月9日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
今から20年以上前、
米国モーニングスターのファンド情報を見ていて、
ファンドマネージャーの「名前」
そして「経歴」まで公開されていることに驚いたものです。
・・あれから20年。
あなたは、
自ら運用するファンドに
自分の資金を投資しているか否かという、
いわゆる『インサイダー(Insider)情報』が確認できたら良いと思いますか?
もちろんYES ですよね。
あなたは、
自分でもそのファンドを保有しているって良いことだと思いますか?
YES or NO?
ファンド保有者であるあなたの「利害」と、
ファンドマネージャーの「利害」が一致する方向になりますから、もちろんこれも YES でしょう。
残念ながら日本のファンド開示情報では、
ファンドマネージャーの名前や経歴が確認できるほうが稀です。
また、
自ら運用するファンドを保有しているか否か、
そして(もし保有しているとすれば)
どの程度保有しているのか、といった類の情報はほとんど皆無です。
ですので、
以下、日本のモーニングスターの記事は少々自虐的な響きがあります。
【「おおぶね」ファンドマネジャー異例の「自己資金投資」開示、米国では義務化】
『農林中金<パートナーズ>おおぶねグローバル(長期厳選)』を運用する
農林中金バリューインベストメンツのCIOであり、
当ファンドの投資責任者である奥野一成さんは、
「月次運用レポート」の中で、
自ら保有するファンド口数を公開しています。
画像元:農林中金バリューインベストメンツ
これは素晴らしいこと!
(口数が少しずつ増加しているということは、
奥野さんはつみたて投資をされているのですね。)
モノ、サービスを生み出す過程において、
『生産者がその商品の第一の消費者である。』というのは頼もしく感じられます。
考えてもみてください。
高円寺ラーメンの、
もっとも愛すべき、そしてもっとも厳しいお客さんは、きっと高円寺ラーメンの大将自身であるはず・・。
モーニングスターの記事ではこう謳っています。
ファンドマネジャーが
自ら運用するファンドへの自己資金の投資を開示するのは日本では異例だ。
異例だ。。
んー、果たして異例のままで良いのでしょうか。
「いや、ビジネスとして(運用業を)やっているだけだし。」
「法律的なところはちゃんと満たしているよ。」
という声がどこからか聞こえてきそう。
「法令の基準はきちんと遵守しているよ。
それ以上、なにが必要なの・・?」
みたいな空気が存在するのです。
はっきり言いましょう。
自助努力の不足です!
お客様のことを考えて、
「ここまでやれば、多くの人が喜ぶんじゃない?」的な、サービス精神に欠けるのです。
もっと言えば、泥臭い「人間らしさ」、定性的情報の不足です。
これこそ、
投資信託が(この日本で)
生活者の「道具」として普及しない理由ではないでしょうか。
先ほどのモーニングスターの記事から続けます。
ちなみに米国籍の投信ではファンドマネジャーの
自己資金の投資額を開示することが義務付けられている。
追加情報(SAI)と呼ばれる資料で開示され、
SEC(米証券取引委員会)の定めでは、
自己資金の投資「無し」が最低、次いで
「1ドル~1万ドル以下」などとレンジで示され、
最高が「100万ドル超」と7段階で分けられる。
(中略)
自己資金の投資額が大きいほど
利害を一致させる度合いが強くなり、モーニングスターではプラスに評価している。
日本の投信業界は上記事実について、
大いに見習うべきではないでしょうか。
ファンドマネージャーが、
そして運用チームの面々が、
自ら運用するファンドに、
どれだけ資金を投じているかという情報は根源的に重要だとわたしは思います。
こういう類の情報こそ、
投資信託の【誠意を示す大切なデータ】なのです。
日本でも、
名前と顔を見せて、
「いらっしゃい!」と言ってくれる投資信託が増えることを切望する次第です。
(ちなみに
2015年の米モーニングスターの調査では、
ファンドマネジャーの自己資金投資額が大きいファンドほど、
5年のリターンがカテゴリー平均を上回る確率が高かったという結果が出ているのだそう。)
当クリニックでは「個別カウンセリング(オンライン)」を通じて、
投資信託の良し・悪しの見分け方、
税制優遇口座と合わせた資金の具体的な投入方法等についてアドバイスさせていただきます。
カテゴリ:投資信託あれこれ