コロナショックで『やれやれ売り』は果たして起こるのか?
2020年6月7日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
『やれやれ売り』という言葉を聞かれたことがありますか?
もともと「株の世界」の用語なのですが、
リスク資産を買ってはみたものの
その後価格がズルズルと下がってしまい、
(売るに売れず)仕方なく持ち続ける中で、
「やっと買値まで戻った!」ということで
『やれやれ』という気分で売ってしまうことなのです。
(身の丈を越えたリスクを取ったためとはいえ、
心情的に理解できないわけではありません。)
リーマンションショックのときは、
この『やれやれ売り』の勢力が意外に大きく、
投資信託から資金流出が続きました。
ニッセイ基礎研究所のこちらの記事から拾ってみましょう。
リーマン・ショック時には、
そのような投資家の売却もあって
ショック時の2008年や2009年だけでなく、
結果的に2013年まで長期にわたり
バランス型からの資金流出が続いた【図表2】。
『バランス型ファンドは市民権を得た?~2020年5月の投信動向~』より。
以下が【図表2】です。
画像元:ニッセイ基礎研究所
なるほど・・意外に尾を引いているのですね。
人はマーケットの暴落時に
「2種類」の反応を示します。
2.動かない
1の動く人は「売る」という行動に出る人です。
(もちろん買い増す人もいるでしょう)
しかし個人投資家の間では
2の「動かない」が圧倒的に多いと思われます。
まさに「サイレント・マジョリティー」であり、
多くの人は動きたくても動けず、結果「動かない」のであります。
そして不思議なことに
2.の動かない人は
時系列で見ると(さらに)次の「2種類」の反応を示します。
それは、
B やがて動いてしまう人(=売ってしまう人)です。
このBの一部が
『やれやれ売り』に属するわけですが、
では、
A ずっと動かない人と
B やがて動いてしまう人って、
キャラクター的にぜんぜん違うのでしょうか?
(いいえ、そうでもないのです)
わたしは仕事柄、
両方の人を知っていますが互いによく似ています。
その違いはほんのわずかで
実のところ何かというと・・、
『こだわり』なのです。
こだわり?
ハイ。
やがて動いて売ってしまう人は、
・金融商品を選んだ自分にこだわりがある。
・金融商品を保有するプロセスにこだわりがある。
・金融商品の買値にこだわりがある。
なので、
その『こだわり』に反するような事象が起こると、
修正を入れたくなるわけです。
(その行為のひとつが「やれやれ売り」!)
翻ってずっと持ち続けられる人は?
その種の『こだわり』が少ない・・。
ちょっと「逆」を書いてみましょうか?
・金融商品を選んだ自分にこだわらない。
・金融商品を保有するプロセスにこだわらない。
・金融商品の買値にこだわらない。
投資という行いを自分を主人公としたプロセスと捉えず、
投資を、市場が織り成す物語と捉え、
自身は「一参加者」と割り切っているわけです。
自分ではどうにもならないマーケットの不条理を、
「まあ、仕方ないわね」と
(良い意味で)いい加減にあしらうことができる人・・。
わたしもそういう投資家になりたいと思っています。
(ちなみに今回はリーマンショック時ほど、
『やれやれ売り』は発生しないと思います。
それは暴落してから(元に)戻るまでの期間が短すぎるためです。)
カテゴリ:投資家の感情リスク