親子
2025年5月9日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
その昔、
福岡での出張カウンセリングを告知した際に、
インデックス投資のいろはを
母と僕に教えて欲しいです。
というメールをいただきました。
その時わたしは「時代は変わったのだ」と実感しました。
わたし自身は
自分の親と投資の話をしたことがありません。
親とお金の話になる場合、それは大抵、
(仕事で)「ちゃんと稼げて、ちゃんと生活できているのか?」という、親から子への心配事のたぐいでした。
そもそも、
親子で資産運用のカウンセリングを受けるには、
「子」と「親」の間である程度、
運用が『共通語』として成り立っている必要があります。
「子」・・運用に興味あり
しかも、両者の間で
投資に対する方向性が大きくズレていないことも前提になるでしょう。
たとえば、
親が不動産投資に興味があり、
子どもがFX(外国為替証拠金取引)に興味があっても、共通項はほぼありません。
上例では、
お子さん(息子さん)が申込者になって
自分の親に「一緒に投資について学ぼう」と勧めているわけで、わたし(FP)としては、まったく違う景色を見せてもらえた瞬間でした。
また、こんなこともありました。
そのお客様はどちらかというと、
ゴーイング・マイウェイ(我が道を行く)というタイプでした。
仮にAさんとしましょう。
Aさんに
保有しているファンドの手数料の高さや、
直近のファンド資金の流出状況を説明しても、
「まあ、そのうちまた戻ってくるでしょう」と
取りつく島がありません。
個別株にしても、
どちらかというと中小型株式を多く保有され、
「リスクが突出し過ぎでは・・」とアドバイスをしても、
「これも好きでやっていることなので」と、聞く耳を持とうとされません。
ところが、
娘さんの資産運用の話になった途端、
様子が違ってきて、
「娘には堅実な運用をして欲しいです」と言われます。
事実、株式と債券を組み合わせた「インデックス型のバランスファンドが良いのではないか」と、Aさんのほうから積極的に質問をいただきました。
ご自分が実践している投資と、
娘さんに望む投資の姿が、
あまりにも違っていたのでわたしは少々驚きました。
ご自身の投資では、自己流と云いますか、
思いが向くままに(気ままに)やっているご様子なのに、
娘さんのことになると、
まさに教科書通りの「ど真ん中のやり方」を求められたわけです。
投資という所作はとても興味深いものです。
Aさんはあの時わたしに、
「自分のこと(投資)になると、
客観化が難しくて、行いを改めるのは困難なんだ。
でも、子どものこと(投資)になると、
雑念がろ過されて、
やるべきコトが明確になるんだ」と
「告白」されていたわけです。
それから、およそ10年の歳月が流れました。
Aさんの娘さんが結婚され、
お孫さんができた際には、
Aさんのほうから、
「カンガルーぽけっと」について質問をいただきました。
「カンガルーぽけっと」とは当時、
セゾン投信という運用会社で
愛称として名付けられた「こども口座」のことです。
こども口座とは、
『未成年口座』を指します。
実はネット証券を中心に、
多くの証券会社で「未成年口座」が開設できます。
「親権」で子ども名義の証券口座が開設でき、投資をスタートさせることも可能なのです。
つまりAさんの娘さんは、
(父親の勧めで)
バランスファンドの積立投資をし始め、
やがて、自分の娘(Aさんにとっては孫)にも
「カンガルーぽけっと」で積立投資の設定をされて、
おそらく今も、コツコツ積立を続けているはずです。
親子で、いや、親子孫で「投資」が共通事になるなんて、ほんとうに驚きです。
考えてみますと、
昔は親から、
「ちゃんと貯金しなさいよ」と口酸っぱく言われたものです。
あなたなら、
次世代の人に何とアドバイスしますか?
あなた自身が積立投資をしていたら、
「無理がない範囲で
今から積立投資やってたほうがいいよ」と、アドバイスされるかもしれません。
他方、投資の経験がなければ、
「無理がない範囲で貯金しておいたほうがいいよ」と、アドバイスされるかもしれません。
人は自分が経験してきたことを、次世代に呟くわけです。
そういう意味合いで
(多少時間はかかるでしょうが、)日本で投資という行いが広まっていくのは間違いないでしょう。
最後に、
あと10年くらいして、
またAさんに面談を受けていただく機会があったら、
わたしは以下のように申し上げるつもりです。
Aさん。
そろそろ手数料が高く、
純資産額が逓減している投資信託群や、
値動きが大きい、中小型の株式(14、15銘柄)を、
どうするか考え始めたほうがよいかもしれません。
これらを(そのまま)娘さんに引き継がせるのですか?
身の回りの整理整頓と同じく、お金回りもシンプルにお片付けしていく時期かもしれませんよ。