三菱UFJ銀行貸金庫窃盗事件・昭和の仄暗い欲望(その2)
2025年5月4日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
三菱UFJ銀行貸金庫窃盗事件における
「キーワード」は 現金 です。
ズバリ申し上げますが、
長期、短期を問わず、
表立って知られたくないお金(現金)を貸金庫(銀行)に預けておく。
これは『秘匿性』という意味でとても優れています。
顧客がボックスに何を入れたかについていっさい関与しないためです。
銀行の『貸金庫サービス』では、
・銀行の貸金庫に「現金」を預けてはいけない(約款で明記)
・銀行は貸金庫に「何が」入っているか関与しない
という矛盾するルールが共存します。
あなたがオトナなら、上の意味は分かりますね。
すなわち、銀行の貸金庫サービスの実態としては、
銀行の貸金庫に「現金」を置く人はいるけれど、
金庫を貸す側も、
借りる側も「そんなことはないよ」という『建前』を通しているわけです。
三菱UFJ銀行の当時の行員(犯人)は、
たとえ現金を盗んだとしても
(かつ顧客がそれに気付いたとしても)、
警察に届け出る可能性は
「ある程度低いはずだ」と踏んでいたわけです(※ここでは銀行自身の杜撰な管理体制についてはスルーします)。
金庫を貸し出す側(銀行)も
金庫を借りる側(顧客)も、
貸金庫に『現金』を置く人がいるという共通認識(ホンネ)を持ち、
しかしそれは、建前の世界で露見してはいけないから、
(グレーをグレーの状態で保つために)
(もしかすると)あえて防犯カメラを設置していなかったのでは・・?
と類推するわたしは、常軌を逸しているでしょうか。
わたしは今回の事件に、
※誤解がないよう申し添えると、
「換金できない貴重品」を貸金庫に預ける、大部分の健全なユーザーには上記は何ら関係のないことなのです。
ところで、預金するのではなく、
貸金庫に「現金」として置きたかったお金とは、
いったいどんなタイプのお金なのでしょう。
(それは)リベートかもしれません。
個人対個人の、つまりは
会社に隠れて授受されていたキックバックかもしれません。
あるいは商行為において、
正規の取引金額(売買金額)とは別に渡された「裏のお金」だったのかもしれません。
あるいはもっとシンプルに、
過小申告をするため、
余剰なお金をただ貸金庫に入れておいたのかもしれません。
いずれも、
「現金」が幅を利かせていた昭和時代の「なごり」ではないでしょうか。
具体的に当事件を目撃している当事者として、
こんな想像をしてみましょう。
貸金庫に「現金」は不可
→ でも(仮に)5千万円を置く
(※この金額自体、↑第三者に証明することは出来ない。
なぜなら『秘匿性』が保たれているから)
→ 2千万円が詐取される
→ その事実に気付く
→ 銀行に問い合わせる?(→警察に届け出る?)
どうでしょう?
このように考えてみると、
銀行の貸金庫というスペースは、
まさに犯罪を誘発する培養室のような空間だったと言わざるを得ません。
ところで、本事件の犯人は、
事件発覚のピンチを幾度も凌いでいます。
ある時、顧客から
「金庫の中身が違っているのでは?」という指摘を受けます。
(実は)この文言自体が抽象的な言い方なのですが、
それには理由があります。
つまり、上意は
(貸金庫に預けている)現金が減っているのでは?という指摘だったのではないでしょうか。
ほんらい、預けてはいけないもの(現金)を預けている側の『クレーム』であるため、文言があいまいになってしまっているのです。
そして、受け答えする犯人(貸金庫の管理責任者)も、
そのあいまいさの理由を熟知しています。
犯人はその場はうまくはぐらかし、
後日「お忘れ物、ございましたよ」と顧客に連絡を入れています。
お忘れ物!
この場合、犯人の取り繕いの仕方はこうです(わたしの個人的な類推)
A顧客の現金を詐取する(例えば2千万円)
→ A顧客からクレームが出る
→ 慌てて別のB顧客の現金を詐取し、A顧客の不足分を穴埋めするという「手順」。
また、報道によれば、犯人はFX(外国為替証拠金取引)や競馬にのめり込んでいたといいます。
補填の仕方も段々とエスカレートしていきました(同じく個人的類推)
例えば、
C顧客の現金を詐取する(例えば5千万円)
→ C顧客からクレーム
→ 慌てて別のD顧客、E顧客の金(ゴールド)を「質入れ」して現金を用意し、
→C顧客の不足分を穴埋めする
→ いっぽう質屋には「質流れ」にならないよう、せっせと利息を支払う・・といった所業です。
もう、ほとんど自転車操業の感があります・・。
続く)
カテゴリ:お金の摩訶不思議