三菱UFJ銀行貸金庫窃盗事件・昭和の仄暗い欲望(その1)
2025年5月3日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
貸金庫です。三菱UFJ銀行です。
あまり話題にならなくなったので、
話し始めたいと思います。
三菱UFJ銀行練馬支店、玉川支店における『貸金庫窃盗事件』は、前代未聞の被害額の大きさで注目を集めました(「金融犯罪史」に刻まれる事件でしょう)。
また、銀行の稚拙な管理体制が非難を浴びています。
犯人(当時銀行行員)は、
1999年に三菱UFJ銀行に入行し、
2020年4月から
2024年10月まで
同行練馬支店と玉川支店で、
貸金庫の「管理責任者」として勤務。
総額10億円超の現金、7億円分の金塊を盗んだと云われます。
犯人(当時銀行行員)にとって
最大の葛藤は、
1回目の窃盗だったのではないでしょうか。
その厚い壁を乗り越えたあとは、
まるで潮が引くように抵抗感、罪悪感は霧散していったと推察します。
それにしても
4年半にもわたって、
「事件」が発覚しなかったのは驚愕に値します。
(さらに驚くのは、
練馬支店、玉川支店とも『防犯カメラ』が設置されていなかった点でしょう)。
そもそもの話から始めますと、
銀行は金融業のプロですが、
貸金庫サービスや
セキュリティ付きのセーフティーボックスの管理業は「本業」ではありません(これらは広義の不動産業に近いものでしょう)。
個人的な意見ですが、
銀行は貸金庫サービスに
あまり「やる気」を感じていないのではないでしょうか?
(貸金庫とは「場所貸し業」であり、
安定収入は期待できますが、
利益そのものが伸びていくタイプのサービスではありません)。
わたしはこの事件を機に、
貸金庫サービスから撤退する銀行が相次ぐと予想します(セキュリティに設備投資をし、頑強なスペースを貸し出すサービス会社は他にも存在するためです。)
ところで本記事のサブタイトルに
「昭和の仄暗い欲望」という言葉を添えました。
このような表現をしたのには理由があります。
しかしその前に、若干の前置きをさせてください。
この窃盗事件、
『犯人側』から見ると、
貸金庫の中身は大きく「2種類」に分かれるのです。
1 換金できるもの:
現金(外貨含む)、金(ゴールド)
2 換金できないもの:
各種契約書、有価証券、保険証券、不動産の権利書、実印、銀行通帳、銀行印、遺言書、宝石、装飾品など
※宝石、装飾品は換金不可ではないですが、安定した市場価格が存在せず、流動性も金(ゴールド)に比べて劣るため、ここでは換金できないものとしました。
貸金庫の「利用者」にとっては、
換金できないものこそ真の貴重品でしょう。
そして、これらを貸金庫に預けたい理由は明白です。
『安全性』の確保です。
万一の事態に備え、
自宅とは別の場所に
貴重品を保管しておきたいというニーズは底堅くあります。
ただ、本事件とは直接関わりがないためこれ以上言及しません。
わたしが深掘りしたいのは1の、
貸金庫に預けた「現金」と「金」(ゴールド)です。
「現金?」
これは奇妙です。
約款上、銀行の貸金庫には「現金」を預けてはいけないと定められています(ちなみにゴールドは、貸金庫に保管できる物品の中に含まれます。)
そもそも、現金を貸金庫に保管するくらいなら、銀行に預金したほうが利息も付いて良さそうなものです。
しかし、
問題の本質はそこではなく、
『銀行に預金したくないお金』だからこそ、わざわざ貸金庫に預けていたわけです。
仄かに後ろ暗い雰囲気が漂い始めました・・。
続く)
カテゴリ:お金の摩訶不思議