名文は15年経っても色褪せず。田村正之さんの記事「静かな投資家たち」の台頭
2025年3月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ひと昔まえの日経新聞は
こと投資に関しては、今よりずっと『業界寄り』でした。
この場合の「業界」とは、
銀行や証券や保険会社などの金融業界を指します。
投資信託に関していえば、
銀行、証券会社の系列の「各運用会社」が力を入れているファンドの紹介だったり、投資信託の運用についてもアクティブ運用が紹介されるケースが多く、
市場連動を目指すインデックス運用という手法『も』あり・・、みたいなニュアンスの記述が多かったと記憶しています。
※もちろん各運用会社が力を入れるファンドとは、手数料がしっかり稼げるファンドだったわけです。
ちょうど15年前(2010年)、
日本を代表する経済紙(日経新聞)の中で、
孤軍奮闘、
長期・分散・低コストというスタイルを、
ストレートに(確信を持って)紹介していた編集委員がいたとしたら・・。
その編集委員の名は?
日経新聞の田村正之さんです。
名文は
15年経ってもまったく色褪せません。
※全文読めます。
15年前の田村正之さんの文章は、
途中から「僕は」という一人称に転じたり、一見私小説ふうでもあり、しかし、静かに語るからこそ、
奥底に流れている、考え方の「幹」の部分が根太く読者に伝わってくるのです。
記事の前半部分は、
文字通り「静かな投資家」(インデックス投資家)の台頭についての記述です。
「相場変動に一喜一憂せず、積み立てによる長期分散投資で将来の経済的自由の獲得を狙う」(水瀬さん)という、「静かな投資家たち」が台頭し始めている。
※冒頭、インデックス投資の聖地「梅屋敷商店街」も登場します。
ただ、記事の後半部分は
投信の歴史の「暗部」に切り込んでいきます。
上田明之さんという老証券マンが実名で登場し、個人のためにならない投信を売りまくっていた履歴を自ら懺悔されています。
それは完全に過去のことではない。
極めてハイリスクな投信が、
実質的には適合性原則違反とも言える状態で高齢者に売られ続けている実態を、ごく最近も僕は何度も目の当たりにしている。
そして田村正之さんは上田さんとともに、
投信トラブルの裁判を何度も傍聴することになります。
情報の非対称性を利用して、
無知な消費者に
荒唐無稽な設計の投資信託が売られている・・
もう現在(2025年)は
そんなことはないと信じたいですが、
投信の歴史は『暗部』を持ちます。
こんにち、
投資信託の純資産残高のうち、6割程度がインデックス型のファンドとなっていますが、
証券会社自らが投信の作り手(運用会社を兼ねる)となっていた、いびつな創生期を経て、
長期・分散・低コストという投資スタイルについて、
田村正之さんは、
個人が資産を増やしていくために有効な手法であるはずなのに、ちょっと理不尽な扱いを受けている。と記事内で言及されています。
真っ当なことが、
世の中に広まるとは限りません。
真っ当であると訴え続ける、
四方八方からの声が必要であり、
投資信託のケースでは、
その声は市井の個人投資家から拡がったという事実は、しっかり刻まれるべきでしょう。
ともかく、勇気ある記事(2010年)なのです。
カテゴリ:インデックス投資全般, 投資信託あれこれ