株式と相続(譲渡益課税と相続税は別ものです)
2025年3月27日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
相続にまつわるご相談もしばしば発生します。
話を伺う中で、
どうも『ふたつの事象』を混同している人が多いと感じます。
まずは『相続税』という観点から。
相続税がかかるか否か、故人の資産を評価しますが、その際の算定の基準になるのが『相続税評価額』です。
『上場株式』の場合、
相続税評価額の算定基準はシンプルで、
実際には複数の選択肢がありますが、
基本『時価』です。
つまり、相続が発生した時、
= 被相続人が亡くなられた日の、
『株価』を基本的には
相続税評価額とする。という理解でよいでしょう。
亡くなった日の『時価』ですから、
故人がその株をいくらで取得したとか、
含み損になっているとか、
含み益になっているかなどは、
「相続税評価額」の算出に関しては関係がありません。
もしも株式市場が高騰しており、
『株価』がとても上昇していて、
(その時に「相続」が起これば、)
相続税算定上の、相続税評価額が高くなることに・・。
同じ銘柄の株式でも、
株式市場が暴落していて、
(その時に「相続」が起これば、)
相続税算定上の、相続税評価額は低くなることになります。
これが、
税務署が『相続税』という視点で見た景色です。
では次に、
この株式を受け継いだあとに、あなた名義の『株式』になったあとの「視点」です。
あなたはお母様から
『任天堂の株式』2000万円分(相続発生時の時価)を相続しました。
ふつう、故人が開いてた証券口座と
同じ会社の証券口座を開かされて、
『株式』の名義を、
お母様から、あなたに移転する手続きが取られます。
名義が移転した瞬間から、
あなたが「任天堂の株式」の所有者になり、価格変動リスクを負うことになります。
引き継いだ資産全体の「相続税評価額」が確定し、
相続税を支払う・支払う必要なし の違いはあるものの、
その後、あなたが「任天堂の株式」を保持し続けていれば、特段あなた個人に課税がされることはありません。
「この株を売りたいなぁ・・」と思った場合です。
これは、相続税云々とは関係がなく、
(あくまで)あなた個人の資産を売却する際の「譲渡所得」となります。
そして、ここで初めて、
お母様が任天堂の株を『いくらで取得されたか?』が問題になるのです。
なぜなら、
故人(被相続人)の『取得価格』を、あなた(相続人)が引き継ぐためです。
仮にお母様が任天堂の株式を500万円で取得されていて、
あなたが任天堂の株を2000万円の時に売却すれば、
「1500万円」の利益に対して課税されます。
↑相続税そのものとは別の案件ですね。
ただし、相続により引き継いだ株式を3年以内に売却した場合、(従前に支払った)相続税額のうち一定金額を、譲渡資産(株式)の取得費に加算することができるという、ちょっとした優遇措置もあります。※これは相続税を支払っている前提。
相続時に故人の資産(相続税評価額)に対して算出される相続税と、
相続後の、あなた(相続人)個人の資産の売却はまったく別の事象なのです・・。
ちなみに『NISA口座』で運用していた株式などを相続される場合、
例外的に、故人(被相続人)の取得価格を引き継がずに、相続時の「時価」で 株式、投資信託を引き継ぐことが出来ます。
ただ、故人のNISA口座から、あなたのNISA口座に引き継ぎは出来ません。
あくまで、
相続発生 → 被相続人の株式(NISA口座)→『特定口座』に払い出され → あなたの『特定口座』に株式が引き継がれることになります。
カテゴリ:投資の発想法