ヘアドライヤーを買う感覚で、投資信託を購入してはダメです
2025年3月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
俗に「心・技・体」と云います。
そのうちの
『心・技』を挙げますと、
多くの人が
『心』(感情・気持ち)で投資信託を選んでしまいがち。
ファンドを冷静に比較し、
そしてファンドを選択する人は(意外と)少ないのでは?
投資信託という商品は
「なんとなく」購入するモノではありません。
『この投資信託は○○だから買うのよ』
という、
あなたの価値基準に沿った
「理屈(りくつ)」の部分が必要ではないでしょうか。
この「理屈」がしっかりしていれば、
今、この投資信託の「価格」が安いから買おう。
とか、
YouTube動画のAさん、そしてCさんも良いと言ってるから買おう。みたいな発想は出てこないはずです。
ところで、
感情・気持ちで商品を選びがちなのは、投資信託に限りません。
テレビCMで観たお洒落なヘアドライヤーをヨドバシカメラで買ってみた。
これは消費者行動としてしばしば見受けられます。
〇(感情・気持ちで)ドライヤーを買った。
〇 シャワーを浴びた後に使ってみると、
「予想通り」あっという間に髪が乾いたよ!
〇 買ってよかった。
という『流れ』になります。
ということで、
あなたは
@あっという間に髪が乾くよ!とコメントし、
ヘアドライヤーの写真を「インスタ」にアップする。
こういうことは、しばしば見受けられます。
購入し、使用してみれば、瞬時にその「効用」が確認できますね。
でも、投資信託は違います。
購入すれば、
すぐに効用(効き目)が確認できる類の商品ではありません。
なので「難しい」のです。
投資信託という商品は
買ってその翌週に「価格」が1.5倍になるとか、そういうことはありません。
また、投資信託という商品は
買ってその翌週に、
ファンド価格が12000円から、11000円に「下がってしまう」ことはあります。
しかし、
だからといって、
運用会社にクレームを入れるのはお門違いです。
このケースでは
しっかりクレームを入れるべきでしょう。
そもそも、
投資信託という商品では
効き目(効用)は事前に定まっていないのです。
価格変動リスクを負う全ての投資商品は、事前に効き目(効用)が定まっていません。
それが投資という世界です。
・・なんだ、ぜんぜん効かないじゃないか。
と思って、
しぶしぶ4年くらい持ち続けていたら、
本人の予想を超えて「効用」(= ファンド価格が上がる)が実感できたりすることもあります。
またいっぽうで、
最初の6ヵ月くらいは
・・おぉ、なんか予想通り。
けっこう効くじゃないか!(笑顔)
と思っていたのに、
5年後くらいから
本人の予想を超えて「効用」(= ファンド価格が上がること)がどんどん小さくなり、ついには損益「ゼロ」を超えて、10%程度のマイナスになってしまった。
ということも起こり得ます。
ここから学べる教訓は?
という発想そのものが、大きな落とし穴になる、ということ。
今、この商品が良さそうだから買おう!
の、
この商品が良さそう
という意味は、
わりと上がってきている・・という意ではないでしょうか。
たとえば仮に、
ファンド価格が10,000円から21,000円くらいに上がってきている。
だから買おう!
この流れは、一見ノーマルな日本語に見えますが、
(投資の世界でいえば)
やっぱり
ちょっと『ヘンな日本語』なのです。
なぜなら、
ファンド価格が10,000円から21,000円に上がった。
それだけ『利益』が積み上げられた。
というのは、
すでに起こったこと(過去)であります。
あなたやわたしは、
ファンド価格10,000円から21,000円に上がった『利益』は享受できないわけです・・。
言い方を換えれば、
ファンド価格が10,000円から21,000円くらいに上がった。という事実と、
これから先、
ファンド価格が21,000円から『どうなるのか?』という事象は、残念ながら「まったく別の話」なのです。
投資とは、これからどうなるか?に賭ける行いです。
同様に、
ファンド価格が21,000円から14,000円くらいに下がってしまった。
という思考も早計かもしれません。
整理しておきましょう。
ヘアドライヤーを買う際のあなたは、
潜在ユーザー(消費者)です。
あなたのような消費者を想定して、ドライヤーは頑張って『機能』を向上させたり、上手にマーケティングしたりします。
しかし投資信託、
特に『全世界株式のインデックスファンド』のような商品は、消費者に合わせて商品の機能を調整、向上させるという概念はありません。
大雑把にいって、
全世界株式インデックスファンドは、世界の株式市場を「ミニチュア」として再現した道具であり、
上図は過去100年(~2019年)の米国ダウ平均のチャート
あなたやわたしは、
その、
世界の株式マーケットの発展という流れに「乗っかっている人」に過ぎず、
―それはいつ「乗っても」いつ「降りるのも」自由な乗り物。―
効用(効き目)が事前には定まっていない商品となります。
投資商品と付き合い始めて長いですが、いまだにこの点は興味深く感じます。