投資の発想法, 投資信託あれこれ

投資信託は相続時の評価額の『優遇』がほとんどありません

2025年3月10日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

 

政府が国民に
「どのようなカタチで資産を持って欲しいのか」は、

そのグランドデザインを描くことで
ある程度コントロールすることが出来るのかもしれません。

 

鍵を握るのはズバリ、『税』です。

 

 

 

 

預貯金の利息は課税されます。

NISA口座(成長投資枠)で購入した
先進国債券インデックスファンドは課税されません。

 

これだけでも、
貯蓄偏重だったお金の一部が
投資に向かう「動機付け」となります。

 

『税金』のかかり方に
多寡を加えられることで、

どの窓口で
どんな金融商品を保有するのか、私たちは少なからず影響を受けます。

 

なお、上記は私たちが「生きている間の話」です。

 

では、わたしが死んだらどうでしょう?

 

えっ、
死んでしまったら、

相続人の人が
遺産を分けて引き継ぐんでしょう?

 

はい。

でも、
人が死ぬとき
最期の『税』がかかってくる可能性があります。

 

それが「相続税」です。

 

 

 

 

たとえば、

子(相談者)は、
親がそんなに(資産を)持っているとはふつう思わないものです。

 

しかし『実態』は、

子どもの予想を超えて、
親は資産を持ったまま逝く → 相続税がかかってくる。というケースが多々あります。

 

現代においては(特に日本においては)

 

相続税と、
各保有資産における(相続時の)評価のされ方って、案外「自分ごと」の話なのです。

 

ちょっと硬い言葉でいうと
「相続税評価額」の話です。

 

 

 

 

多少、計算が必要になりますが、

要は一定額以上を遺した場合、所有するさまざまな資産を、


「相続税評価額」に置き換えて計算し、
相続税が課税されるか否かが判断される・・ということです。

 

まずは軽い『練習問題』から!

 

 

 

 

 

(相続時の)評価額については、

預貯金は『時価』です。

 

1000万円の預金なら、
相続税評価額も1000万円。

「そのままの金額」ですね。

 

個別株式もETFもREITも、
(選択肢は複数ありますが)概ね「時価」での評価となります。

 

まあ、優遇がないわけです。

 

では、優遇があるのは?

 

不動産です。

 

 

 

 

 

なぜ日本では
こんなにも『不動産』という資産がポピュラーなのか?

あなたは考えてみたことがありますか。

 

それは、
出口(=相続時)において、

 

他の資産よりも
(相続時の)評価のされ方が優遇されている(軽減措置がある)ためです。

 

 

たとえば「土地」です。


時価(取引価格)ではなく、
基本、路線価という物差しで相続時の「評価額」が決められます。

(「路線価」は実勢取引価格より低いケースがかなりあります)

 

あるいは、
被相続人が自宅としていた不動産は、

一定条件を満たせば
『小規模宅地等の特例』が適用されます。
(なんと評価額から8割の軽減も可能。)

 

あるいは建物はどうでしょう。

 

建物は「固定資産税評価額」が
相続税を計算する際に用いられる「評価額」となります(自宅の場合)

 

 

 

 

また、他人に貸している建物(賃貸物件)は、

 

固定資産税評価額 ×(1-借家権割合(通常30%))で、「評価額」が自用建物の7割程度になります。
(もちろん、賃貸物件に供している土地の「評価額」も下がります。)

 

優遇、優遇、ザ・優遇です。

 

 

国民にどのようなカタチで資産を持って欲しいのかは、
インセンティブを与えることで
政府がある程度コントロールし得ると述べました。

 

これから必要なのは、

「不動産」と、
「有価証券系」(個別株式、債券、投資信託等)の、
出口(相続)における「評価のされ方」の違いを是正することではないでしょうか。

 

 

公正を期すため、
『不動産』の評価優遇を現状より抑えて、
『有価証券系』の優遇を実施する。

 

 

 

 

 

たとえば、

“有価証券の相続税評価額は一律時価の8割とする” など、まさに『グランドデザイン』の描き直しが必要ではないでしょうか。

 

そもそも、不動産の評価額優遇(特に、賃貸不動産の優遇)は、かつて住宅の『供給不足』が顕著だった時代のなごりです。

 

 

 

 

 

国民の財産をリスク分散させ、
かつ、その資産価値の長期的な成長を通じて、
国富の増大を目指すなら、

投資信託など有価証券の
(相続時の)「評価額」を引き下げるべきではないでしょうか?

 

 

今の状況を放置すると、
国民の資産の持ち方が歪んだままで、
ポートフォリオという概念が普及しないままです。

 

 

最後に、
保険業界も「政治力」に長けている団体です。

何度も見直しの素案が出ながら、
生命保険、死亡保険金の
相続時における『非課税枠』は守られ続けています。

 

投資信託の、相続時における「評価額」の算出方法については以下記事をご参照ください。

 

 

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