4%ルールの妄信はちょっと危険
2025年2月20日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨今、SNSの世の中です。
イメージがイメージとして膨らみ、
○○の場合は、□□だよね。
という結論?
あるいは法則みたいなものが「固定化」され、まことしやかに語られたりします。
というのもそのひとつでしょう。
が、
「時」と「場所」が違えば、
法則と一般的に呼ばれるものも、
安易に適用すべきでない場合があります。
『4%ルール』の父といわれる、
ウィリアム・ベンゲン氏の論文(1994年)の前提(data)は、
米国中期国債(5-10年)+5.1%(年リターン)
というものでした。
ベンゲン氏は、
株式と債券を組み合わせて、
その「比率」を維持しながらの『定率取り崩し』を説いた人ですが、
前提となっているデータは
1926年~1976年のものであり、
総じてインフレ率が高く、
(特に債券のリターンは)今よりもうんと高い数値だったことを考慮する必要があります。
加えて、
アメリカ人には上記「資産配分」
そして「取り崩し」そのものに為替リスクは存在しませんが、
日本人には為替リスクが存在します。
ベンゲン氏の『米ドル建て』での検証結果は、割り引いて見る必要があるでしょう。
また、
「トリニティ スタディ」として有名な、
トリニティ大学の
Philip L. Cooley氏、
Carl M. Hubbard氏、
Daniel T. Walz氏による論文(初出1998)も、
前提としているデータは
1926年~1995年のもので、
米国長期社債・・ +5.7%(年リターン)
となっています。
特に注意すべきは「米国長期社債」でしょう。
1926年~1995年のバックデータでは、
米国国債の結果リターンが低く、
あえて『社債』を選択したのではないか?と、わたしなど邪推してしまいます。
もちろん、
2025年を生きる日本人投資家の
『資産配分』そのものは、
外貨建ての株式や債券が過半を占めることでしょう。
(これ自体、賢明なことです)
しかし、
今後20年の株式の期待リターンが
(これまでの20年の結果リターンと)同等である保証はありません。
また、債券の期待リターンも
20世紀の頃に比べれば、
明らかに低いと言わざるを得ません。
資産配分(ポートフォリオ)全体の期待リターンは、保守的に見積もるべきでしょう。
わたしは、日本人が長く運用を続けながら、継続的に取り崩しを行う際は「3%~3.5%」の取り崩し率を、基本ベースに置くべきと考えます。
1994年:ウィリアム・ベンゲン氏の論文(英語)
「Determining withdrawal rates using historical data」
初出1998年:トリニティ スタディの論文(英語)
「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」
カテゴリ:リタイアメント・資産の取り崩し