経済よもやま話

戦争も物価高も(歴史の中で)何度も繰り返されています

2025年2月18日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

 

マルクス・アウレリウスは「自省録」の中で、

 

すべての出来事は、
歴史上すでに起こったことの再現である。

 

と述べています。

 

結論から先に言いますと、

 

これから先、権威主義や専制主義が優勢になって、ブロック経済化が進んだり、戦争が起こって、政治的な軋轢が高まったとしても、それは『初めての出来事』ではなく、

 

たとえそうなったとしても、経済の営みは(しぶとく)続く。

 

ということです。

 

 

 

 

 

例えば「戦争」をまったく知らない人も、
「物価」が高騰し身に染みるインフレをはじめて経験する人も、

『歴史』を学ぶことによって
その現象を追体験することが可能です。

 

 

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの
アセット・アロケーション200年の歴史』という読物(PDF)が面白いです。

 

上記を一読すると、
まさに「歴史」は繰り返されるのだと実感します。

 

たとえば「金利が低い」という状況も、21世紀が初めてのことではありません。

 

イギリスでは産業革命後、経済が成熟し、
国内の投資機会が減少する中で、
長期金利は19世紀後半どんどん下がっていきました。

 

 

(イギリスの永久国債(コンソル公債)の利回りは一時2%を切ります)

画像元:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ

 

総じて言えば、

世の中の『金利』というものは10年、20年のスパンで見ても、あるいは50年、100年と『尺度』を伸ばしてみても、

上がったり下がったりの繰り返しです。

 

即ち「高金利時代」「低金利時代」をスイングしているわけです。
→ この方向性は今後も変わりません。

 

 

 

 

また「戦争」と「インフレ」は兄弟のような関係です。

 

『アセット・アロケーション200年の歴史』の、
「第一次世界大戦」の項から当時の様子を引用してみましょう。

 

 

インフレ率は戦争の火ぶたが切られる前から上がり始め、
物価は1915年から戦争終結後の1920年までの間に
2 倍に跳ね上がりました(図 2 参照)。

 

 

英国の長期国債利回りは
1900年の2.5%から1920年には5.3%まで上昇しました。

 

 

画像元:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ

 

上記図では ↑ 第二次世界大戦時も
英国の『物価』が上昇しているのが分かりますね。

 

戦争は、ヒト、モノ、カネの流れを不自然に寸断します。

 

国同士にも目に見えない『緊張感』が生まれ、
モノの確保にしのぎを削るようになります。

 

製造や流通のコストが余計にかかり、
また需給のバランスが崩れることでインフレ傾向になるわけです。

 

ただ、
歴史的観点から見れば、

この「インフレ高進」→「高金利が常態化」することも、決して悪いことばかりではありません。

 

 

物価高が続いてしまうことで、
新たな原材料を用いようとか、
モノの流通や供給の仕方を抜本的に変えようとか、新たな産業(業種)に活路を見出そうとか、
人々の心に
さまざまなイノベーション・スピリット(技術革新の精神)を宿してくれるためです。

 

 

 

先ほど、
「高金利時代」「低金利時代」をスイングしている。
とお話ししましたが、

 

不思議と、

「もう、ずっと低金利が続いてしまうのでは・・」という先には高金利時代がやって来て、

「もう、ずっと高金利が続いちゃうんでは・・」という先には低金利時代がやって来るものです。

 

これが『歴史的時間』から見た、世の中の変化なのです。

 

 

今後、先進諸国で起こる可能性が高い
インフレが常態化(高金利化)する世界では、

 

・物価高を価格に転嫁できる企業だけが生き残る
・それなりの支払い利息を支払える企業だけが生き残る
・物価高が続くので、必要な消費は促され個人消費は健闘
・金利高を通じて住宅価格が落ち着いてくる
(しかしながら借り入れそのものは、物価高→借入金の実質負担が減るため、根強い需要あり)
・高金利になることで、政府による無防備な財政支出が抑えられる
・名目金利 > 物価上昇率の状態になれば、債券投資が復活してくる

 

などの大きな変化が見込まれます。

 

 

繰り返しですが、『インフレが常態』『高金利が常態』という現象は、過去何十回、何百回と出現してきた、経済的現象のひとつです。

 

恐れすぎる必要はありません。

 

ただ、貨幣の価値は恒常的に減じていくため、相応のリスクを負った資産運用が必要になるのは言うまでもありません。

 

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