9年前の個人投資家の吐露
2025年1月4日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
(突然ですが、)9年前にタイムスリップしてみましょう。
※以下は2016年にいただいたメールです。
“メール、ありがとうございます。
チャイナ・ショック後、少しは落ちつくのかと思ったら、もっと大きく下がりそうな状況になってきて、新聞を読んでも、世界経済全体がいいことないなという主旨の記事ばかりで、
正直「このまま良くならずに、下がり続けることもあるのかな・・??」などと思ったりしています。
投資を始めてから1年以上経ちますが、昨年の急落や今年に入ってからの相場の大変動で損失を出しています。
相場の影響をもろに受ける『インデックス運用』なので当然の結果ですが、残念な状況です。
一方、最近海外投資を知りました。海外には元本を確保した上で利回りが得られるファンドや、相場の下落にも強いヘッジファンドがあることを知り、大変魅力を感じています。
まだ始めて間がないのに投資方針を変更することになりますが、幸い投資期間はまだまだ長く、安定してリターンのある『海外ファンド』に変更した方が有利であると考えています。”
・・・なるほど。
今から振り返ると、
2016年はどちらかというと
あまり良くない年だったようです。
その後、質問者さんが
本当に海外ファンドに乗換えたのかどうかは分かりません。
しかし、市況が悪い = 自分の成績が良くないときには、人の情として投資スタイルを変えたくなるものです。
逆の言い方をすれば、
この、
『そこそこ』という言葉がポイントであります。
運用相談を重ねると分かってくるのですが、
市況が良すぎても、
私たちは人の情として
投資スタイルを変えたくなるのです。
一昨年(23年)、昨年(24年)の好調な株式市場を経験としてろ過すると、
「えっ、そんな利回りで満足してるの?」「○○という投資対象もあるのに!」という声がちらほら聞かれるようになります。
たとえば仮に、
あなたがeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)に投資を行っているとしましょう。
一昨年(23年)、昨年(24年)と、
いずれも年10%近いリターンを達成していても、
いやいや、
NYSE FANG+指数のインデックスファンドなら、もっと直近のリターンは高いよ。
こういう投資対象に乗換えないなんて、もったいない、もったいない。
みたいな・・。
もしかすると、ですが
今年(2025年)わたしは、まったく別の質問者さんから、
まったく真逆のメールを受け取るかもしれません。
※以下は、あくまでわたしの中での妄想メールです。
(フィクションです)
“メール、ありがとうございます。
一時は『コロナ特需』と言われた時期もありました。
でも今の相場はかなり息長いと思います。
AIが根底から世の中を変える予兆があるためです。社会のインフラを総入れ替えするような、そのインパクトの大きさは想像を絶するかもしれません。
まだまだ株は上昇の途上でしょう。いろいろな記事を読んでもAIとAIが起因となる社会変動の大きさは、いまのマーケットが決して過熱ではないという証しではないでしょうか。
投資を始めて間もないですが、利益は予想よりうんと大きくなっています。市場との連動を目指すインデックス運用の威力を肌で感じている次第です。
一方、最近「FANG+指数のインデックスファンド」を知りました。
米国のビックテック10企業で構成されるファンドらしく、今の投資信託より高いリターンを叩き出しています。なんというか、こちらのファンドは投資の中身に無駄がないと感じます。
開始から間がなく投資方針を変更することになりますが、幸い投資期間はまだまだ長く、ここからは積極的により高いリターンを求め、チャンスを着実にゲットしていきたいです。
今、思い切って方針転換した方が有利であると考えています。”
あなたは上の文章を読んでどう思われますか?
マーケットの上下に起因する、「こころの揺れ」という心理葛藤を持ちます。
株式市場がだらだらと下落すると・・。
元本を確保した上で大きな利回りが得られるよという甘言が。
株式市場がどんどん上昇すると・・。
えっ、そんな利回りで満足してるの?もっとよい投資対象があるよという甘言が。
どちらにしても『誘惑』は付いてまわりますし、今のあなたの投資スタイルを堅持するのは、そう簡単なことではありません。
『誘惑』の本質とは何でしょう?
(それは)あなたの投資リターンを(長い目で見て)貶めることではないでしょうか。
よーく考えてみましょう。
カテゴリ:投資家の感情リスク