インデックス投資全般

平均投資を信じた人たち(2)

2024年12月19日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

 

投資の分野に限らず、

エスタブリッシュメント(既存体制)、そしてそれが保持する既得権益は強大であり、勢力が移り変わるなんて、そう簡単に起こることではありません。

 

日本の投資信託業界において、

投信ブロガーがそのきっかけとなり、
個人投資家による『投信の民主化』が成し遂げられた理由は、いくつかあると思われます。

 

 

 

 

 

1.ネット証券の台頭

 

この影響は大きいでしょう。

少しだけ前回を振り返ります。

 

初期の『投信ブロガー』が数多の記事を通じて発した、

 

「ユーザーの常識で考えたら、○○っておかしくないですか?」
という投げ掛けに、

 

 

多くのブログ読者が呼応し、
コメントを通じて
また各人の行動(アクション)を通じて、

より良いチョイスを試み始めたのが、2000年代でした。

 

そしてそれらの言動や行動を、遠くから関心を持って眺めていた膨大な『潜在ユーザー』もいたわけです。

 

実は投資信託に関して
「今の現状を変えて欲しいです・・」という『声』に、既存の金融機関内で唯一応えたのがネット証券といえます。

 

 

 

 

・ファンドの『販売手数料』おかしくない?

 

ネット証券)
ノーロード型(販売手数料なし)ファンドの取扱いを増やしましょう。

 

 

・積立投資の『インフラ』が貧弱なんですけど・・。

 

では、積立投資できるファンドを増やします。
月1000円単位で積立できるようにしましょう。
(そして)銀行引き落としにも対応しましょう。

 

 

・低コストの投資信託をもっと増やして欲しい。

 

インデックスファンドの取扱いを拡充しましょう。

 

 

 

 

わたしの記憶によれば、初期の投信ブロガーは1970年代生まれの人が多かったと思います。

 

ふつうのビジネスパーソンにとって
投資信託を買う。という行為は、

 

【毎月頑張ってお金を残す。
→ その一部を「積立投資」する】というカタチが主流であったはずです。

 

 

ところが、
この「積立投資」という潜在需要に対して、既存の店舗型銀行、証券会社はほとんど力を入れていませんでした。

 

マス・個人投資家はスルーされていたわけです。

その受け皿となったのがネット証券でした。

 

 

実は、ネット証券自体が、
投資業界のエスタブリッシュメント(既存体制)に立ち向かうべく、新たに興されたベンチャーであったわけです。

 

若い個人投資家を取り込み、それを育てることで、自分たちも大手金融機関のシェアを奪取していこうとする・・。ネット証券は商魂たくましかったわけです。

 

 

 

 

 

2.低コストのインデックスファンドシリーズの台頭

 

「低コストの投資信託を増やしてほしい」という、
個人投資家が投げたボールに対し、
きっちり受け止め、ボールを投げ返すファンド運用会社も現れました。

 

代表例が『STAMインデックスシリーズ』です(2008年)

 

 

 

 

当時の住信アセットマネジメントが設定した同インデックスファンドシリーズは3つの点で画期的でした。

 

〇主要なネット証券全てで取り扱われる
初のインデックスファンドに。

〇同インデックスシリーズは全て「ノーロード」扱いに。

〇多彩なアセットクラス(株・債券・REIT)計8本の品揃え。
(国・地域、資産の分散に留意しながら、多様なポートフォリオ構築が可能となる)

 

 

3.投信ブロガーがメディアに登場。
投信ブロガーが著した書籍がベストセラーに。

 

前回登場した水瀬ケンイチさん、
NightWalkerさん、rennyさんはしばしばメディアに登場し、「投信ブロガー」「個人投資家」がにわかに脚光を浴び始めます。

 

水瀬さんは山崎元さんとの共著「ほったらかし投資術」を2010年に上梓。

同書は10年以上も改訂を重ねるベストセラーになりました。
(個人投資家が投資本の『著者』になる時代となったのです)

 

 

 

 

 

 

4.確定拠出年金制度がメジャーに。

 

2024年現在、企業型の確定拠出年金加入者は830万人、そしてiDeCo(個人型の確定拠出年金)加入者は346万人となり、商品ラインナップ内で、コストが低いインデックスファンドを選ぶ人も着実に増えています。

 

 

5.金融庁が一般NISA、つみたてNISAを創設

 

金融行政の大元である金融庁が「長期・分散・積立」を謳い、個人の資産形成の後押しをするようになり、結果としてインデックスファンドの普及に拍車がかかりました。

 

 

投資信託協会「数字で見る投資信託」(PDF)によりますと、2024年11月末現在、公募の投資信託 約238兆円の純資産額のうち、およそ6割がインデックス型の投資信託となっています。

 

低コストの投資信託が、ファンド業界の主流となった・・。

 

 

 

 

 

にわかに信じがたいことですが、物事の潮流が、個人投資家の『草の根運動』によって大きく旋回したわけです。

 

これは、投資とは縁遠かった数多の潜在ユーザーが、さまざまなインフルエンサーの影響を受けながら、低コストのインデックスファンドに関心を寄せ、実際それを購入するに至ったためです。

 

今、日本において初めて
投資信託が『マス・製品』になりつつあります。

 

平均投資を信じた人たちが報われたわけです。

 

カテゴリ:インデックス投資全般

おすすめの記事