平均投資を信じた人たち(1)
2024年12月17日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
今日は少し考察的な話です。
日本における『インデックス投資』の普及を振り返るとき、
最大の功労者は、
SBI証券でもなく、
楽天投信投資顧問でもなく、
『オルカン』でもなく、
『ニッセイ外国株式インデックスファンド』でもなく、
ましてや金融庁でも
投資信託協会でも日本経済新聞社でもなく、
バイアス(偏見)のない一次情報を発信し、それを受け止めてきた『ふつうの人たち』です。
これは確かだと思います。
わたしもいずれこの世からサヨナラしますが、自分のキャリアを振り返って、何か意義あることを「目撃」できたか?と問われれば、YESと答えることができます。
それは物事の潮流が、
『草の根の運動』によって大きく旋回するという、歴史的出来事に(偶然にも)立ち会えたからです。
具体的に記せば、
既存体制(エスタブリッシュメント)によって、ビジネスの構造が凝り固まっていた『投資信託』という業界において、
ちょっと仰々しいですか?
スミマセン。
でも事実だと思います。
私たちの周りを見渡してみましょう。
政治でも行政でも、
産業界全般、
一地方都市の経済の実態も、
さらに言えば
あなたが働いている会社の『一部署』に至るまで、
エスタブリッシュメント(既存体制)と、それが保持する既得権益は、岩盤のごとく堅牢であります。
そんな簡単に崩れたりはしません。
日本の投資信託の業界でいえば、
投資信託を販売するという
「あこぎな体制」がこれまで続いてきました。
投資信託における『収益モデル』とは?
当該コストは長らく「高い」まま据え置かれてきました。
顧客にファンドの乗り換えを勧めるという営業体制。
また、
銀行、証券会社が想定する「主要顧客」は、
数千万円~数億以上の資産を持つ
概ね『60代以上の富裕層』であり、
誤解を恐れずに記せば、
投資信託はずっと、
限られた潜在顧客層のみをターゲットとし、リーチしてきた歴史を持ちます。
潜在的に限られた『顧客人数』に対して
わりと『大きな金額ベース』で
(何度も)投資信託を購入させていくというビジネスモデルだったのです。
『対岸』から仰ぎ見ると明らかなのですが、
(日本においては)これまで、
投資信託が『マス・製品』になったことは一度もありませんでした。
冒頭、
インデックス投資を普及させたのは、
バイアス(偏見)のない一次情報を発信し続けた『ふつうの人たち』と述べました。
この普通の人たちが、
投資信託業界のエスタブリッシュメント(既存体制)を打ち破ったわけですが、中でも中心的な役割を果たしたのが、投信ブロガーと呼ばれる人たちです。
『投信ブロガー』は
ブログというSNSの隆盛とともに
2005年、2006年あたりから出現し始めます。
ブロガー自身が「一投資家」であるという点でしょう。
彼ら/彼女らは
投資信託を保有する『ユーザー』目線で、
製品である投資信託の問題点、
それを作り、流通させている金融機関の問題点、
また業界の慣行の理不尽さを指摘し、
「もうちょっと、ここがこうなればなぁ・・」
ユーザーとしての素直な意見(気持ち)を、ブログで発表し続けました。
これはまさに、ピュアな「一次情報」に他なりません。
上記のように記すと大げさに聞こえますが、
「もうちょっと、ココがこうなればなぁ・・」
というユーザーとしての『願望』は、
たとえば洗剤にも当てはまります。
たとえば、
洗剤を『買い替える』ときに、
ボトルごと買い替えないとダメなのか・・ではなく、
上図のように、
クシュッと小さく折り畳んで捨てられる『詰め替え用の洗剤』があったらなぁ・・がユーザー願望として発露し、
そのユーザー願望を受け止めて、実際に「詰め替え用製品」を作ったのがメーカーさんであったはずです。
同様に、
投資信託を保有するユーザー目線で
「もうちょっと、ココがこうなればなぁ・・」
という記事を発信する投信ブロガーに、
多くの『コメント』が付き、
そこから新たなアイデアが披露されたり、既存のアイデアが補強されたりしていきます。
水瀬ケンイチさんが管理人を務めるブログ、
『梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)』では、
かつてコメント欄があり、毎日何十人という読者のコメントでにぎわっていました。
水瀬さんだけではありません。
NightWalkerさんや
rennyさんや
イーノ・ジュンイチさんや
ゆうきさんなどをはじめ、
多くの『投信ブロガー』が
そこそこ活発に記事を更新して、
たとえば、年に100本の記事を書くブロガーが運営するブログが、仮に20、30あったとすると、
30(ブログ)×100(記事数)×10(コメント数)
延べの意見(コメント)は年間「3万」にもなります。
これらは(今から思えば、)小さな知見の結晶であったのかもしれません。
日本という大海原の中で、
たった一つの点だった、投信ブロガーが、
遠くに、近くに、自分と同じようなブロガーを発見し、「点」と「点」がやがて線になり、
多くの読者の意見表明とともにそれが「小さな渦」となって、やがてそれは大きな『面』となり、既存の投資信託業界に影響を及ぼし始めた・・。
これって、
にわかに信じられないかもしれませんが、事実なのです。
少なくともわたしはその歴史を目撃してきた一人です。
続く・・)
カテゴリ:インデックス投資全般