お金が無いと心配、でもお金があり過ぎても心配
2024年10月31日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
誰しも「たくさんお金があればなぁ」と願います。
ですので「お金が無いと心配」という気持ちはよく分かります。
しかし「お金が多くあっても心配」とは一体どういうことなのでしょう。
実は上記症状は、
年を取れば取るほど、発症しやすくなります。
〇お金がそこそこある
〇お金が多すぎる
ここで、75歳のAさんに登場いただきます。
Aさんにとって「お金が無い」のは致命的。
これはなんとか避けないといけません。
次に「お金がそこそこある」という状態はどうでしょう。
(これはわりと心地よいのではないでしょうか)
では「お金が多すぎる」と、一体何が問題なのでしょう。
人には「死」というゴールがあるため、
お金が多くあり過ぎると、多く遺ってしまうことになります。
以下、あくまで仮定の話です。
Aさんのリタイア時(65歳)の総資産1億円。
現在(75歳)約1.5億円の資産となっており、
逝去時(94歳)に2.2億円にまで増えるとすると、
少なくない税金(相続税)を支払う必要が生じます。
あるいは引き継ぐ人がおらず、
Aさんが保有資産について明確な意思表示をしなければ、多く遺ったお金も最終「国庫」に帰すことになります。
<お金が無いと心配、お金が多くあり過ぎても心配 > とは、そういうことです。
1億円 1.5億円 2.2億円
リタイア時(65歳) 75歳 94歳(逝去時)
実はAさんのような無名の資産家は日本に数多くいます。
しかし「なぜリタイア後に資産が増えるのか?」と不思議に思われる人もいるでしょう。
Aさんが下記条件に当てはまれば、
老後にお金が増えていっても何ら不思議はありません。
〇公的年金、企業年金、
個人年金保険などからの収入があり、
毎月の生活費が赤字にならず、
逆に黒字になっている。
(人は年を重ねるほど消費が細る傾向にあり、
頭で思い描いたほどお金が使えないという側面もあります)。
〇現役時代から相当額の資産を蓄えている。
また資産の一定割合を投資に回しており、確固としたポリシーに基づき投資を続けている。
つまり、収支が赤字にならず、
リスク資産を適切に持ち続けていれば、
リタイア後も資産が増えていくケースは決して珍しくないのです。
誰しもリタイアを迎える際、お金の管理の「分かれ道」に立っていることを、今から真剣に考慮しておいたほうが良さそうです。
それは、
2.お金を増やしていくほうの道
どちらを選ぶかという「運命の分かれ道」。
まず、1.の道です。
この考え方はストンと腹落ちしやすいでしょう。
以下、単純な計算になることをご容赦ください。
仮に公的年金等で、
毎月10万円の不足があったとしても、
65歳から90歳まで生きるとして、
その不足分の合計は3000万円になります。
換言すれば、リタイア時(65歳)に3000万円のお金があれば、暮らしていくことは出来るわけです。
ただし実際は「ワタシお金を使い切る!」と意気込んでも、なかなか気持ちよくお金を使うことが出来ません。
その原因はシンプルに、
お金を崩し使っていくことに慣れていないためです。
誰もが現役時代は支出をセーブし、貯蓄に励みます。
コツコツお金を積む習慣が染みついているため、
リタイアしても「積んでいく」マインドがなかなか抜け切りません。
職業柄、
個人のお金の管理を「通史」として垣間見ることがあります。
そこでは、一人の人間が
「ふたつの役柄」を演じ分ける必要があると痛感します。
それは「上る人」と「下る人」です。
誰しも現役時代は上ってコツコツお金を積み上げます。
そして、リタイアすれば今度は下るわけです。
(資金をコツコツ取り崩します)
仮にあなたが、
お金は自分が生きている間だけ使える「利用券」と割り切れば、「上り」と「下り」両方を実践する必要が生じるのではないでしょうか。
リタイア後に『下り』始めるためには、
現役時代から
お金を増やす「フェーズ」は何歳までと明確に決めておく必要があります。
繰り返しですが、
お金を多く遺し過ぎても、別の心配(相続税など)が生じるわけですから。
他方、2.お金を増やしていくほうの道を選ぶケースです。
この場合、
次世代に資産を遺す意思を明確にする必要があります。
相続税という負担があっても、
より多くのお金を遺せる事実に変わりはないためです。
わたしはお金を増やすほうの道を否定しませんが、
日本の相続税は、
資産を遺す人に課税するのではなく、
資産を受け継ぐ人に納税義務が生じます。
人生のある地点で、
思い切って「貯める」から「使う」に舵を切る。
これは「死」がある個人のお金管理の宿命なのかもしれません。
カテゴリ:お金の摩訶不思議, リタイアメント・資産の取り崩し