誤解を招く表現です → 確定拠出年金では『運用益は非課税』
2024年10月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
iDeCoは
個人型の確定拠出年金。
企業型DCとは
企業型の確定拠出年金です。
以下、
「野村の確定拠出年金ねっと」からの画像です。
上記のように、
確定拠出年金について『運用益は非課税』と言われると(誰でも)うれしいものです。
しかし、上記表現は
(もしかすると)
「誤解」を与えるかもしれません。
「具体例」を挙げてみましょう。
この10月から
会社で企業型DCが始まった横川さん(仮名)が、
上記文言を見て、
投資信託を運用している間は『利益』に対して課税されないんだ。」
と誤解される可能性があります。
正しくは・・?
投資信託を『売却』しても、
(どうして「非課税」ではなく、
「課税の繰り延べ」なのかの『種明かし』は後ほど・・。)
ちなみに、ですが、
日本語ってほんとに難しいのですが、
投資信託を運用している間、
(投資信託を売却しなければ)
『利益』に対して課税されないのは、通常の課税口座(特定口座)も同じです。
運用相談を長年行っていますと、
特定口座では
投資信託(ファンド)を運用している間、
『利益』に対して課税されるのですね!
と、誤解される相談者さまも、少なからずおられることに気付きます。
そのお客様は、
「特定口座では、
どのくらいの頻度で
利益に対して「税金」を払わないといけないのですか?」
と質問されていました。
つまり、
確定拠出年金における、
『運用益は非課税』
という安易な表現のしかたが、
という『誤解』を招いているわけです。
確定拠出年金では
運用益に対して非課税!
という「ざっくりとした言い回し」は、止めるべきだと思います。
だいいち表現として正しくありません。
投資信託に絞ってお話しますと、
投資信託を一部、または全部売却した際、その「利益」に対してその時には課税されず、
これが「正しい表現法」でしょう。
では、どうして
『課税の繰り延べ』という言い方になるのか?
iDeCo、企業型DCを問わず、
確定拠出年金の
年金資産を受け取る際、
あなたが運用してきた 資産全体 =『年金資産額』となります。
確定拠出年金では(一時金、年金形式とも)
この『受取り総額』が課税の対象なのです。
考えてみれば「公的年金」も同じですね。
公的年金の「受給額」には
そもそも利益とか損失という概念がありません。
その課税対象は『受取り総額』です。
ただし、公的年金においては
『公的年金等控除』という分厚い控除があるため、実際の課税はうんと小さくなるわけです。
一時金受取りの場合は「退職所得控除」あり。
年金形式の受取りでは「公的年金等控除」あり。
繰り返しですが、確定拠出年金の課税対象は、
あなたが運用してきた 資産全体 =『年金資産額』です。
―ここから具体的に想像して欲しいのですが、―
確定拠出年金の中で、
仮にAファンドを
250万円分(含む利益50万円)を売って、
まるまる
Bファンドに250万円分「乗り換える」(スイッチング)が出来ても、
繰り返しですが、
確定拠出年金の課税の対象は、
あなたの『運用資産総額』ですから。
最後に、
確定拠出年金という『箱』の中で資産運用する私たちは、Aファンドの含み益の数字や、Bファンドの利益の大きさを常に気にしますが、
もはや「利益」や「損失」という概念は霧消し無くなるわけです。
以上、確定拠出年金における『運用益は非課税』という表現は誤解を招くよ。というお話でした。
カテゴリ:確定拠出年金(iDeCo・企業型)