経済よもやま話

「資産税の導入」は難しく(それに比べると)「金融所得課税の強化」は実施しやすいのでは?

2024年9月29日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

昨日のYouTubeライブ
金融資産課税の質問をいただいたので、整理しておきたいと思います。

 

結論から言うと、

 

『金融所得課税の強化』はあり得ると思いますが、
いわゆる『資産税の創設』は難しいのではと思います。

 

 

「ことばの整理」からしておきましょう。

 

 

冒頭「金融資産課税」と述べましたが、
このことばは
その意が曖昧になりがちなのであえて使わず、

 

『金融所得課税』

『資産税』という、

ふたつの言葉に分けて捉えます。

 

 

 

 

 

ここからは
AI(perplexity)にもサポートしてもらいます。

 

まず『金融所得課税』ですが、

こちらは、
株や投資信託などを売却した際の、利益に対する課税。
または配当や分配金に対する課税です。

 

これを(仮に)強化するとなると、

現状の20.315%の課税料率を
「引き上げる」という方向性になります。

 

もちろん、
この「金融所得課税の強化」は
あくまで課税口座(一般口座・特定口座)内のお話です。

 

 

次に「資産税」です。

 

「資産税」は
上述の「金融所得課税」とは意味合いが異なります。

 

『資産税』は、
一定額以上の資産を有しているだけで、その資産全体から一定の割合で徴収される税のことを指します。

 

※「資産税」をより狭義に
「富裕税」という言い方をする場合もあります。

 

 

誤解がないよう申し添えると、

日本ではすでに一部、
『資産税』が普及しています。

 

そう「不動産」についてです。

 

不動産については
それを保有するだけで、
固定資産税・都市計画税が徴収されています。

 

 

 

 

 

本日トピックに挙げる『資産税』はより狭義に、

 

その対象が
現金預金、個別株式、債券、投資信託などのいわゆる「金融資産に対する『資産税』」という意味合いになります。

 

 

では、
海外での『資産税』の導入状況はどうなのでしょう。

 

ここから再び、
AI(perplexity)にもサポートしてもらいましょう。

 

 

主要な導入国について)

 

スイス

 

スイスは、資産税の代表的な例として知られています。

各カントン(州)レベルで導入されており、
税率は0.3%から1%程度。

課税対象は金融資産、不動産、高額な動産など。
課税最低限度額は州によって異なるが、
概ね5万〜20万スイスフラン程度。

 

 

ノルウェー

 

ノルウェーも資産税を導入している国の一つです。
課税対象は150万クローネ(約2000万円)を超える純資産。
税率は0.85%(2021年時点)
不動産、金融資産、高額な動産などが対象。

 

 

スペイン

 

スペインでは一度廃止されましたが、2020年に再導入されました。
課税対象は70万ユーロ(約1億円)を超える純資産。
税率は0.2%から2.5%の累進課税。

 

 

インド

 

インドでは、高額資産保有者に対する追加課税の形で資産税的な制度を導入しています。
5000万ルピー(約8000万円)を超える純資産に対して適用。
税率は1%。

 

 

本題に戻ります。

 

新たに「資産税」を創設するより、
「金融所得課税」の強化のほうが実施しやすいのは、

単純に
後者の場合は
すでに課税インフラが存在するためです。

 

 

 

 

 

資産(この場合「金融資産」)を持っているだけで課税される『資産税』については、

 

資産の中身によって、
「課税がしやすいか・しにくいか」が如実に分かれます。

 

 

もっとも徴税しやすいのは
「預金」でしょう。

一人ひとりの預金者の名寄せは大方出来ているでしょうし、

何より課税の対象が文字通り預金という名の『現金』であるため、税の公平性、透明性が担保しやすいのです。

 

 

それに比べると、株や投信といった金融資産に対する「資産税」はハードルが高いと言わざるを得ません。

 

 

例えば『資産税』において仮に、

 

総資産額10億円以上の富裕層に対してのみ実施。

 

という「制約」を付したとしましょう。

 

まず、

この『総資産10億円以上』という実態をどう把握し、どうカウントするのか?

これは大いなる問題です。

 

 

 

 

 

 

いわゆる既存の「金融資産」に限定すれば、金・貴金属や、暗号資産は含まないのか? NFTは? 絵画などの動産資産はどうする?

 

「いやいや、それらも含めるべきだろう・・」となると、

実態把握に多大なコストを費やし、それそのものが税収を上回ってしまうかもしれません(笑)

 

 

それに、

株式や債券や投資信託といった資産は『価格変動』があるため、こんな事例も起こり得ます。

 

 

もしも、
毎年1月の、最初の取引日時点の
株式や投資信託の時価評価額に対して、
年0.1%の「資産税」を課税するというようになった場合に、

※総資産額が10億円以上の資産家に限定。

 

〇1月4日時点では
株や投信の総資産額が「38億円」であった。
でも、4月に暴落が起こり、
〇4月10日の総資産額は「26億円」にまで減っていた。

 

なんてこともあり得るわけです。

 

 

 

 

 

すると税制上は、

1月4日時点で
割高?であった株、投信の評価額(38億円)に対して、例えば0.1%課税され、380万円を納税する。ということになってしまいます。

 

繰り返しですが、
わたしは「資産税の創設」はかなりハードルが高いと考えます。

 

あり得るとしたら、
「金融所得課税の強化」のほうではないでしょうか。

勿論これは
課税口座(一般口座・特定口座)内のお話です。

※NISA口座では非課税が約束されていますから。

 

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