(下)ETF花束大作戦!(設定と交換という一大発明について)
2024年8月17日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨日の続きです。
(マニアックな話は今日でおしまいです(笑)
ETFとは、
「上場型のインデックスファンド」であります。
が、
少し歴史をさかのぼれば、
『上場型のファンド』は、
実は100年以上前から存在していました。
世にいう、
『クローズドエンドファンド』がそうで、
米国では初期の投資信託は
ほとんどが、
株式市場に上場する『会社型の投資信託』だったのです。
ただ、です。
上記で云う『会社型の投資信託』と『ETF』は、似て非なるモノなのでそこだけご注意を・・。
1920年代といえば、
米国株式のバブルの時代でした。
当時、
『会社型の投資信託』は証券市場の花形であり、
ファンドそのものが
多額の借り入れを行ってどんどんその規模を拡大し、そのレバレッジ効果によって、
会社型の投資信託の『市場価格』が、実態を超えてどんどん上昇していたのです。
何しろファンド自体が
株式市場に上場していましたから。
でも、ちょっと恐いと思いませんか?
何が恐いかといえば、
仮に「S&P500の上場インデックスファンド」があって、
500社の会社の株価を束ねた
ファンドの「理論価格」が140ドルであるはずが、
「上場型インデックスファンド」、
すなわちS&P500 ETFの『市場価格』は150ドルに跳ね上がったりしている・・。
こんな事態が(もし)実際に起こったら、ちょっと恐いです。。
ETFというツールの革新性は、
えっ、どういうこと・・?
答えを先に言いますと、
昨日ご紹介した『指定参加者』と呼ばれる金融大工さんが、
裁定取引を行うことで、
(※通常、指定参加者になるのは『証券会社』です)
昨日の記事では・・、
『指定参加者』が、
たとえば
S&P500 ETFの大量の「買い注文」「売り注文」をさばくために、設定や交換といった手法を用いるとお話しました。
ちょっとだけ「復習」。
いきなり、
〇「あのー、S&P500 ETF 300億円分、買いたいんだけど!」
という機関投資家の注文が入る。
↓
運用会社の「在庫分」では注文をさばけない事態に。
↓
『指定参加者』が直接『株式市場』に行って、
S&P500の構成銘柄である「500社の株式」
つまりは、
大量の500種類の花(500社の株式)を買い込む。
↓
ほんとうに300億円分、
このように、
何千万口という
S&P500 ETF(花束)を生成して、
買い注文者に引き渡す。
と申し上げました。
実は上記プロセスそのものの中に、すでに裁定取引の「答え」が提示されています。
例えば今、
S&P500 ETFの『市場価格』が148ドルに急騰しているとしましょう。
ところが、
S&P500指数から換算するETFの「理論価格」は145ドルです。
ETFのスキームそのものが『指定参加者』に儲けの機会を保障しているため、『指定参加者』は直ちに動きます。
『指定参加者』は
直接「株式市場」に行って、
↓
S&P500の構成銘柄である「500社の株式」
つまりは、
大量の500種類の花(500社の株式)を買い込みます。
↓
そこから多数のS&P500 ETF(花束)を生成して、
『ETF』として、
株式市場ですぐに売却する。
↓
すると・・、
調達価格は「145ドル」
売却価格は「148ドル」となり、
利ザヤが稼げます。
複数の『指定参加者』が結構なボリュームで『裁定取引』を行うため、ETFの理論価格と市場価格の「差」は、瞬時に解消されることになります・・。
いっぽう、です。
ETFの『市場価格』のほうが
「理論価格」より安い場合は、
『指定参加者』が
S&P500 ETFを大量に購入し、
↓
交換のプロセスで、
茶色い紙の束を ↑ ほどいて、
500種の花 = S&P500を構成する500種類の『株式』にして、
↓
それらを直ちに「株式市場」で売却するわけです。
金融大工である『指定参加者』に
裁定取引の機会を保障することで、
この部分のアイデアも、
1980年代末に、
当時のアメリカン証券取引所の
ネイサン・モストさんと
スティーブン・ブルームさんによってもたらされました。
金融は絶えず進化を続けています。
カテゴリ:インデックス投資全般