(中)ETF花束大作戦!(設定と交換という一大発明について)
2024年8月16日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨日の続きです。
(今日もマニアックな話になります。)
S&P500 のETFを運用する運用会社は、大量の500種類の花 を『倉庫』にストックしています。
こんな感じ。
そして、
S&P500 ETF(1口)の中身はこうです。
花が↑500種 = S&P500の構成銘柄「500社」があると想像願います。
上記、茶色い紙で包まれた
『花束』そのものが、
ひとつの「銘柄」として
株式市場に上場しているのが「S&P500 ETF」です。
ところで、ETFの取引では、
運用会社は基本、自分たちが保有する「在庫」で、ETFの買い注文をさばきます。
しかし、です。
万一、S&P500 ETFの「在庫」(純資産額)が200億円規模で、
いきなり・・、
みたいな機関投資家の注文が入ったらどうするのでしょう?
それは、
どうにもこうにも・・
出来ます。
ETFには、
それを運用する『運用会社』のほかに、
「指定参加者」と呼ばれる金融大工さんがいます。
この指定参加者が、
『裏方』でシブい仕事をするのです。
(※通常、指定参加者になるのは『証券会社』です)
先ほどの、
という注文に戻ってみましょう。
この場合、
運用会社の「在庫分」では注文をさばけないため、
金融大工である指定参加者が直接『株式市場』に行って、
S&P500の構成銘柄である「500社の株式」
つまりは、
大量の500種類の花(500社の株式)を買い込んで、
ほんとうに300億円分、
このように、
何千万口という
S&P500 ETF(花束)を生成して、
買い注文者に引き渡すわけです。
今、文章で書くと、
10行以上を費やしていますが、実際の行為は『一瞬』で実行できます。
要は「指定参加者」が
S&P500 ETFの『総口数』を一挙に増やすわけです。
※同時に純資産額も急増します。
ETFの『設定』(creation)と呼びます。
次に「正反対」のお話です。
という突然の注文に対しても「指定参加者」がシブい仕事をします。
今度は、
S&P500 ETFの『倉庫』内の、
ほんとうに100億円分の↑S&P500 ETF(花束)の、
茶色い大きな包み紙をほどいて、
大量の500種類の花、
つまり、大量の500社の株式とし、
「売却」することで、
大きな売り注文に対応するわけです。
ココ、伝わっていますか?
ETFの『交換』(Redemption)と呼びます。
この場合、
S&P500 ETFの『総口数』が一挙に減って、純資産額も減ることになります。
このように、
ETFという器の内部では、
「買い」と「売り」の需給状況によって、
その純資産額が大きくなったり小さくなったりしますが、
『現金』(キャッシュ)は用意する必要がないわけです。
いっぽうのインデックスファンドでは、
300億円の買い注文があると、
ファンドという『倉庫』内に、現金が300億円入ってきます。
また、100億円の売り注文があれば、
「運用会社」が『倉庫』内で保有銘柄を売って、自ら現金を用意する必要があります。
「発明」に等しい革新性が存在するのです。
でもカンさん。
上場しているETFの『価格』が上がり過ぎたり、下がり過ぎたりすると、
投資家はそのETFの「理論値」よりも高く買ってしまったり、逆に安く売ってしまったりという不都合が生じるのでは?
はい、その答えは次回に・・)
カテゴリ:インデックス投資全般