投資家の感情リスク

書籍『ブラック・スワン』の七面鳥の話

2024年6月23日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。 

もう10年以上前のことです。

あるお客様が以下のように仰っていました。

(その方は
ギリシャ危機の最中に積立投資を始められました。)

 

 

最初の頃はマイナス続きで、ぜんぜん増えないなあと・・。

 

もうなんだか苦行に耐えるみたいで
何回つみたてを止めようと思ったかしれません。

 

 

でもそのうち、
少しずつファンド価格が上昇してきて(2013年頃?)、評価損益の「数字」がいきなりドン!と変わったのが実感できました。

 

 

最初、マイナスが続いたことも予想外でしたし、急に(損益が)大きくプラスに転じたことも予想外でした。

 

 

ちょっと深呼吸。

 

ハイ、
投資では『想定外』のことが起こるものです。

 

 

 

 

 

上記とは逆で、

コロナ禍以降に「積立投資」を始めた人は、
以下のような感慨をお持ちかもしれません。

 

 

「投資を始めた当初からプラスで
資産は順調に増えていて、
なんだか拍子抜けみたいな気にもなって、投資ってわりに簡単なんだと・・・・」

 

 

投資を続けるとは、
『イメージ』と『現実』のかい離を埋めていく作業に他なりません。

 

 

時に、現実が
イメージと比べて『良すぎたり』もします。

また時に、
イメージよりも『酷すぎたり』もします。

 

 

そして結局、
投資を長く続ければ、
両方のパターンのかい離を経験することになります。

 

 

もちろん、
投資の「経験年数」そのものも重要でしょう。

 

 

 

 

 

5年、7年と投資を続けてくると、

投資信託の急騰にも、急落にも、
(以前ほどには)動揺しなくなります。

 

冒頭、
投資では『想定外』のことが起こると述べましたが、

 

投資に慣れるにつれ、不規則な市場変化に身を晒しながらも、『想定内』と思える変化の比率が徐々に増していくものなのです。

 

 

カギを握るのは、
最初の大きな株価の下落に遭遇した際に
『正しい行動』を取れるか否かでしょう。

 

 

ここで大きく間違えなければ、

(その後の)下落にも対処しやすくなり、
10年、15年と
運用を続けられる可能性が格段に高まります。

 

正しい行動とは?

 

(大きな下落に遭遇しても)
・つみたてを止めないこと
・ファンドを売ってしまわないことです。

 

 

 

 

 

仮に「投資人生」というものがあり、
それを俯瞰できるのなら、

 

はじめて経験する『大きな下落』こそ、

 

投資に対するイメージ(淡い期待)と、
現実に起こる動き(マイナスリターン)のかい離がもっとも大きくなる瞬間なのです。

 

そこをうまく持ちこたえることが出来るか。

 

 

換言すれば、

淡い期待というもの、

―3年前も、2年前も、去年もプラスで推移してきたのだから、来年もプラスになるだろうという予定調和的な期待―

を、

うまく修正できるかどうかなのです。

 

 

 

 

これまでも
これからも、
『想定外』のことは起こり得るのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

ブラック・スワン』という本の中で
象徴的なたとえ話が出てきます。

(ちょっと「七面鳥」の気持ちになってみてください)

 

あなたは七面鳥です。

毎日毎日、あなたは餌をもらっています。

 

あなたは、人間は親切なものだと感じています。毎日ちゃんと餌をくれて、危害も加えず見守ってくれている。

1年が経ち、2年が経っても毎日毎日餌をくれる。
あなたは順調に成長しています。

 

ところが、
ある年の『感謝祭』の前に突然、あなたは殺されてしまいます。

『感謝祭』の食べ物として食されることになってしまったのです・・。

 

 

 

 

七面鳥にとって「まさか」のこと、
まったく予期していなかったことが、実際起こったわけです。

 

 

一昨日は平穏無事で、

昨日も変わりなく、
今日も昨日と同じような1日で、

明日も同じような日が・・・・・・、

 

続くかもしれませんし、
続かないかもしれません。

 

 

 

 

 

時間も、
マーケット(株式市場)も

流れるものではなく、
一瞬、一瞬の『積み重ね』です。

 

 

「投資を始めた当初からプラスで
資産は順調に増えていて、
なんだか拍子抜けみたいな気にもなって投資ってわりに簡単なんだと・・・・。
でもそのうち、
ドン!とファンド価格が急落し、
じりじりと平均株価が下がり続けて、
評価損益がマイナス(損失)に転じて、その数字が大きくなる一方だったのです。
最初、プラスが続いたことも予想外でしたし、急に(損益が)大きくマイナスに転じたことも予想外でした。」

 

 

こういうシミュレーションも、(しないよりは)しておいたほうが良さそうです。

 

 

大丈夫、来週も、来月も
これまでと変わらず推移するさ。

と感じてしまう心の集積の中に、『想定外』の芽は芽生えるものなのです。

 

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