米国でこれほどETFマーケットが拡大した意外な理由
2024年6月14日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ご承知の通り、
ETFとは『上場したインデックスファンド』のことです。
たとえば、
S&P500のインデックスファンドと
S&P500のETFを比べた場合、
ファンドの中身(米国を代表する大企業500社)はまったく同じです。
どちらもパッケージ商品であり、
・個別株で儲けたとか、
・どの会社がこれから伸びそう?とか、
・株の配当でバカンスに出かけたよ。
みたいな投資スタイルとは一線を画しています。
ただ、両者の違いを
あえて『拡大して』申し上げれば、
ETFなら日中、
1日のうちで売り買いすることが可能です。
(インデックスファンドは市場が閉じたあと、1日に1回『価格』が付くだけ)
このお話をすると、
米国でETFがかくも普及したのは、
ETFを用いてトレード(売買)する人が多いからだ。
という誤解が生じがちになります。
たしかに、
機関投資家がポジションを取って、比較的短期で売り買いするニーズもETFには潤沢にありますが、
基本、バイ・アンド・ホールドで持つ投資家が多いのです。
全世界のETF資産残高のうち、
米国上場のETFだけで7割強を占めます。
これほどまでに米国でETFマーケットが拡大した理由は・・、
(意外にも)税制上のメリットがあるためです。
こんな想像をしてみましょう。
あなたがインデックスファンドを売却する際、
運用会社(ファンド)に解約要請します。
運用会社のほうでは、
ファンド内の株式を売る⇒現金化⇒(そして)あなたが売却代金を受け取る。というプロセスを踏みます。
この際、
―あくまで米国の投資信託(mutual fund)の場合ですが、―
ファンド(運用会社)がファンド内に組入れる株式等を売却し、実現益(キャピタルゲイン)が発生すると、
その利益を課税年度に投資家に全て分配しなければならないという『ルール』があります。
あなたがS&P500のETFを売るとは、
実際には、
S&P500ETFの『受益証券』を譲渡することであり、
あなたから、
例えば「モリソンさん」にその名義が変わるだけです。
それがETFの売買なのです。
なぜなら、
ETFとは
1個の『銘柄』として
株式市場に上場するインデックスファンドであるため。
ここがETFの本質部分です。
ですので、
「S&P500ETF」というファンドの内部では、
(解約に応じるために)株式を一部「売る」という行為が発生しません。
したがって、
ETF(ファンド)自体がキャピタルゲイン(実現益)を被ることもないわけです。その結果、実現益が投資家に分配されることもありません。
ETFの方が投資信託(ミューチュアルファンド)より有利になっているのです。
投資信託同士の比較では、
米国で設定される投資信託と、
日本で設定される投資信託のルール付けが異なります。
日本国内で設定される『投資信託』では、
ファンドが、ファンド内に組入れる株式等を売却して実現益(キャピタルゲイン)が発生すると、その利益を課税年度に投資家に全て分配しなければならないという『ルール』は、存在しません。
つまり、
米国においては、
(インデックスファンドと比較した場合)
ETFの優位性の度合いが大きいと云えます。
いっぽう日本では、
米国ほどETFの優位性はありません。
以下は日本に限った話ですが、
ETFでは「分配金」の払い出しが必須で、
インデックスファンドは「無分配」が可能です。
また、
同じアセットクラスにおいて、
(米国とは違い)
ETFよりインデックスファンドのほうが「運用管理費用」がより低いという逆転現象が起こりつつあります。
以上の理由により、
日本においては、
ETFよりインデックスファンドのほうがツールとしてより優れていると当クリニックでは考えています。
(取り崩し時に、
インデックスファンドであれば、
投信定期売却サービスが利用できるというメリットもあります。)
米国でETFマーケットが拡大した理由は、
米国独自の事情によるところが大きいのです。
カテゴリ:インデックス投資全般