投資の発想法

終身保険の「カラクリ」

2024年5月23日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

 

『終身保険』・・。

この商品の特徴としてよく聞かれるのは、

 

「死亡保障」だけでなく、
「貯蓄」にもなるよ!(=お金も増えるよ)というもの。

 

 

2つの機能が一つの商品の中に入っているなんて、
「★お得感満載!」と、消費者としては感じてしまいます。

 

 

 

 

 

 

まずは「死亡保障」です・・。

貯蓄にはなく、投資商品にもなく、
『保険』だけにあるもの。

 

それは 保障(補償)です。

 

保険という道具は買った次の日から、
「死亡保障1000万円」なら
ホントに1000万円の保障が付きます。

これは本当にスゴイこと!

 

 

 

 

でも、です。

 

 

万一、あなたが「死亡保障」を得るために『終身保険』を買っているのなら、えらく割高な買い物をしているかもしれません。

 

なぜなら、
あなたが支払う保険料の多くは、

自分自身の積み立て(貯蓄性)に回っているためです。

 

 

※これは外貨建て終身保険でも同じこと。

あなたが支払う保険料の多くは
自分自身の積み立て投資に回っています。

 

 

 

 

 

あなたに「死亡保障」が必要なら、
純粋に「収入保障保険」や「定期保険」を買うほうがコストはうんと安くなります。

 

 

唐突な「たとえ」で恐縮ですが・・・、
中華そば(死亡保障)を食べたい時に、わざわざチョコレートパフェ(貯蓄性)を合わせて買う必要はありません。
貯蓄を求めるあなたと、保障(補償)を求めるあなたは『別々で』分けて考えたほうが得策かもしれません。

 

 

 

ちょっと図表を見てみましょう。

 

以下は1000万円の死亡保障がある『終身保険』です。

 

 

 

 

「青いところ」が自分自身の積み立て(貯蓄性)の部分なのですが、

保険料の支払い期間が25年を過ぎてくると、ちょっと不思議な現象が起こります。

 

 

実は「死亡保障1000万円」の相当部分が、
保険会社に保障してもらうのではなく、
あなた自身が積み立てている『お金』で
賄い始めることに気付くはずです。

 

ココ、伝わっていますか?

 

 

なるほど、
契約をしてまだ2、3年の頃は貯蓄性の機能はほとんど「ゼロ」です。

 

 

 

 

この終身保険の『効用』のほとんどは、
「死亡保障が1000万円得られること!」

 

⇒ まさにこれを
保険会社がサービスとして提供してくれているわけです。

 

 

しかし『終身保険』では、
保険料の払い込み期間が長くなればなるほど、

 

もはや『死亡保障』というサービスの多くの部分は、

保険会社が提供するのではなく、
長年積んだ「あなた自身の保険料」が(死亡保障を)担う状態になるのです。

 

自分で自分の死亡保障を積んでいる。

 

 

まさに「灯台下暗し」です。

 

 

しかも、自分で積み立てている部分(貯蓄性の部分)は、保険会社が定めた「利回り」でしか増えず、しかもそれは基本『固定金利』であり、

 

仮に『円建ての終身保険』を、世の中の金利がほとんどゼロの時に契約するなんて、かなり無謀な行為と云えます。

 

 

 

 

なぜなら、お金の増え方が『固定』されるということは、向こう30年も40年も、ずっと低い利回りに拘束され続けるということですから。
※日本の金利がほとんどゼロに近い状態の場合。

 

 

おまけに、この商品(終身保険)を中途で解約する際は、大きめのペナルティー料が課され、元本割れするケースが続出します。

 

 

次に、別の視点からの考察です。

 

あなたは頑張って、この終身保険の保険料を払い終え(60歳時)、例えば「90歳」でこの世からサヨナラしたとしましょう。

 

 


 

 

もちろんパートナーが、死亡保険金の1000万円を受け取ります。

 

あなたは棺桶の中で、

 

 

 

 

「妻に(夫に)1000万円を遺せてよかった。」と呟くのでしょうか?

 

 

正直、遅すぎるかも、です。

 

 

その時点でのパートナーの年齢を「88歳」としましょう。

 

あなたが亡くなる際、終身保険以外にも、預貯金や投資信託や、持ち家があれば不動産など、もろもろの資産を遺しているはずです。

 

死亡保険金を受け取るほうが仮に「88歳」だとして、このお金に大いなる利便性を感じたりするものでしょうか?

 

しかも、あなた自身は死んでしまっており、1000万円のお金は手に出来ないわけです。

 

 

 

 

A   65歳時の3000万円
B   80歳時の6000万円
C  95歳時の1億2000万円

                                      

A~Cの3つのパターンの中で、いちばん価値があるお金はどれだと思われますか?

 

わたしは「A」だと思います。

                                                   

『終身保険』は70歳なり75歳なりで解約して、あなたが生きているうちに、あなたとご家族とで、楽しく使ったほうがお金の効用が増すのではないでしょうか。

 

 

保険という商品はこの100年をかけて、マーケティング能力を磨き、その「商品的概念」を肥大化させてきました。

 

しかし実のところ、保険という商品の本質は実にシンプルなのです。

 

〇 予期せぬ出来事が起き、
〇 その経済的損失が過大となる場合に、
〇 貯蓄や投資では賄えない経済的損失を補填するための道具。

 

それ以上でもそれ以下でもないのです。

 

カテゴリ:投資の発想法

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