オルカン、S&P500『二人勝ち』状態に思うこと
2024年1月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
今日は「お家」のお話から。
大手住宅メーカーの
販売戸数ランキング(2021年度)が、
日経クロステックの『記事』に載っていました。
「わぁ、すごい戸数!」と
あなたは驚かれるかもしれませんが、
(住宅全体から見ると)2~3割程度しかありません。
残りは?
残りは中堅、小規模の「工務店」が
全国に群雄割拠している状況なのです。
言い換えれば、
もっとも寡占状態から遠いセクターのひとつといえます。
では、携帯電話会社はどうでしょう?
最大手の「NTTドコモ」で
36%程度のシェアを誇ります。
寡占が進んでいるといわれるスマホでも、
iPhoneのシェアは50%程度。
・・昨日の文章を、
ちょっと再掲してよろしいですか。・・
1月4日~15日の、
国内すべての公募株式投資信託(ETF除く)への資金流入の中で、
ナント、
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の2ファンドのみで、
全「資金流入額」の7割弱 を占めたのだそう。
今、えーって驚きましたか?
ちなみに、ですが、
公募の株式投資信託は 5823本 もあります(12月末時点)
5000本を超える投資信託の中で、
たった2本のファンドに、
7割近い資金流入が起こったことは
ちょっと「異様な光景」と云えるかもしれません。
もちろん、
『特殊要因』はあります。
「NISA」が始まったところですから、
資金流入額の相当部分が
「NISA」での買い付けに当たると推測されます。
そして
(NISAの中のみで捉えると、)
1月に資金流入額が膨らむというのは
今後も長く続く「アノマリー現象」と云えるでしょう。
(理由。→ NISAの成長投資枠は「一括投資」が可能だから。
年間の投資枠は決まっているため、
投資するなら年初(1月)に、という意向が働きやすい。
いっぽう「つみたて投資枠」も増額月設定(1月)とすることで「ほぼ一括投資」が実現可能です。)
しかし、
ここで問題にしたいのは、
資金流入額(金額)そのものではなく、
『シェア』です。
冷静に考えてみますと、
Slimのオルカン、
SlimのS&P500は、
別にテレビのCMなど打っていません。
有店舗の銀行・証券会社などで
積極的に販促もされていません。
近くのスーパーに行った際に、
世間話に花を咲かせている人たちが
「オルカンがねぇ・・」なんて言っているのを(私はまだ)聞いたことがありません。
ましてや
読売テレビの「ミヤネ屋」で
オルカン、S&P500が特集されているのも(まだ)観たことがありません。
5000本を超える投資信託が在る中で、
Slimのオルカン、
SlimのS&P500が現在、
『ファンド純資産額ランキング』で
第2位、第1位となっている・・、
マスのメディアではなく、
マーケットシェアを獲得してきた稀有な商品なのです。
(特にYouTubeの影響が大きいと推察します)
これは、
70余年の日本の投資信託の歴史の中で
初めてのことでしょう。
まさに画期的であり、
投信業界の地殻変動が起こっている証左であり、
今後もこれまでの業界常識が次々と覆される予感があります。
と同時に、危うさも感じます。
今回の現象、
つまりは1月上期における、
Slimオルカン、SlimS&P500という2ファンドへの、
突出した資金流入の多さは、
SNS上の「YES」増幅効果 による影響が大きいと考えます。
SNS上では
多くの人に支持される『正論』が、
さらに周辺・周縁の同意によって、
かさ上げされ、持ち上げられる傾向にあります。
まさに「一強」状態。
誤解がないように申し上げると、
わたしは、
Slimのオルカン、
SlimのS&P500は良くない商品だ、と言いたいわけではありません。
ただ、
素晴らしい商品であっても、
あまりに持ち上げられ過ぎると、
実態以上に
『万能のプロダクトである』という誤解を与えてしまう危険性があるのです。
『まさに王道商品!』
『これを買っておけば間違いない!』的なセンチメントが支配し、
消費者自身の逡巡がないまま、安易に買ってしまう・・、
そして、そのような人たちが増幅し(NISAの影響もあって)資金流入が拡大していく・・
特に、
今年以降、NISAを通じて
両ファンドを買い進めている人たちを懸念します。
熱しやすく、
冷めやすい人になってしまわないだろうか・・と。
投資の商品は、
実際商品を買えばすぐに「答え」が出るものではありません。
その商品を買って、
それなりの効用が得られるまで5年、10年という『長いタイムラグ』があります。
それが金融商品の難しいところ。
Slimのオルカン、
SlimのS&P500という投資信託は、
決して、
自動的にお金が増える装置ではありません。
お金が減る可能性(しかも大きく減る可能性)を常に内包する、価格変動商品 =「リスク資産」なのです。
カテゴリ:インデックス投資全般