どうしてスリムS&P500よりオルカンのほうがコストが安いのか?
2023年12月16日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
まずは『ゆとりさん』のツイートから。
あれ、emaxis slimって、SP500よりオルカンのほうが信託報酬率低いんだ?
— ゆとり (@yutori_ing) December 16, 2023
VOOは0.03%、VTは0.07%で、それとは逆転してる。素直に考えて、バンガードの設定のほうがしっくりくるのだけど。。
とことんコストを追求する投資信託、eMAXISSlim(イーマクシス・スリム) https://t.co/cRvqhfF1NQ
フム。
確かにそうですよね。
VOO
これは
バンガード S&P500 ETF(米国株式)です。
年間経費率は0.03%。
VT
こちらは、
バンガード全世界株式ETF。
年間経費率は0.07%です。
バンガード社はアメリカの会社で
ほとんどの顧客は『アメリカ人』ですから、
アメリカ株式のファンド(含むETF)が、
全世界株式のファンド(含むETF)よりコストがより安い。というのは理に適います。
VT(全世界)よりも
VOO(米国)をより好んで買っていますから。
だいたい『純資産総額』の規模が違います。
9360億ドル 400億ドル
アメリカ人がまず『アメリカ株式』の製品を買うのは当然といえるでしょう。
ところが、
日本では特異な現象が起こっています。
野村アセットマネジメントにしろ、
三菱UFJアセットマネジメントにしろ、
日本の運用会社が運用する商品の
顧客のほとんどは「日本人」です。
であれば、
もっとも需要があって、
もっともコストが安くなるインデックスファンド(含むETF)は、
(ふつうに考えれば)
日本株式ファンドになりませんか。
ところが、
日本では、
海外株式のインデックス製品のほうがコストがより安くなっているのです。
これは何を意味するのか?
これは
日本の投資家が、
日本株式より、
海外株式のプロダクトを選好している「結果」でしょう。
投資信託(含むETF)という製品の『売上げ分布図』が、
日本株式 < 海外株式 になっているわけです。
この流れはもはや変えられないでしょう。
ところで、
海外株式の中でもどうして、
オルカン(全世界株式)のほうが
スリムS&P500(米国株式)より『コスト』が安くなっているのでしょうか?
おそらく、
オルカンの運用管理費用(年率)は、
『全世界株式のインデックスファンド』の潜在需要がもっとも大きいだろうという、運用会社、顧客(投資家)双方の『期待値』なのだろうと思います。
えっ?
「でも今はスリムS&P500のほうがオルカンより純資産総額がずっと大きいですよ!需要がもっとも大きいのはスリムS&P500のほうでしょ!」
確かに・・。
純資産総額・比較(12月15日現在)
約2兆9000億円 約1兆7000億円
が、わたしは両者の『立ち位置』はやがて逆転すると考えます。
日本経済新聞の記事に
『11月の投信、504億円の資金流入 「オルカン」初の首位』(12月7日付)がありました。
資金流入額が最も大きかったのは三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の724億円。
同ファンドが首位に立つのは初めて。前月首位だった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は663億円で2位に後退した。
「新NISA」が本格普及し始めると、ユーザーの分布にどんな変化が起こるでしょうか。
わたしは投資ビギナー層の『比率』が徐々に高まってくると考えます。
米国に絞り込む投資よりも、広範な地域分散を心掛ける投資を好むのではないでしょうか?
運用会社各社は『全世界株式のインデックスファンド』を主戦場と捉え、すでに過酷なシェア争いを繰り広げているのです。
その結果が大幅なコストの低下です。
仮に、ですが、わたしの予想が外れて、
「純資産総額」において、
スリムS&P500とオルカンの逆転がなければ、
スリムS&P500のコストが
やがてオルカンのコストを下回ることになるでしょう。
もっとも需要が大きな製品のコストがもっとも安くなるはずですから。
カテゴリ:インデックス投資全般