わたしのFP修行

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事『AIはファイナンシャルアドバイザーの代わりになるのか? まだ。でも(やがて)なる』

2023年11月3日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

まずは「結論の部分」から。

 

以下は
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事
Can AI Replace Your Financial Adviser? Not Yet. But Wait.』からの引用です。

(※本日の引用部分の全翻訳はDeepLによります)

 

人間のアドバイザーを雇う余裕のない
アメリカ人はどうするのか?

 

私は、AIは24時間365日
アドバイスを提供するために使用できると信じている。

 

 

 

 

 

当該記事、
『AIはファイナンシャルアドバイザーの代わりになるのか? まだ。でも(やがて)なる』では、「現状」をこう分析しています。

 

 

AIはファイナンシャル・アドバイザーと同等のことができ、時にはそれ以上のパフォーマンスを発揮することもあるが、人間のアドバイザーの代わりにはならない。まだ。

 

最後の「まだ。」という言葉が意味深ですね。

 

今は「まだ」AIは人間の代わりにならないが、
そのうち「なるよ」という含意なのでしょう。

 

ご存じの通り、
ChatGPTなどの生成AIは、
たとえば司法試験に合格するほどの知力を既に備えています。

 

 

金融関連の包括的なアドバイス、

特に、人間が見落としがちな観点からも
「統合的」に提案を行うこともAIの得意とするところなのでしょう。

 

これは
個人投資家にとっては朗報!

(が、)私のようなアドバイザーにとっては脅威(笑)

 

 

 

 

 

AIにしろ
生身の人間にしろ、

あなた自身は『アドバイス』というものに興味がなくても、

本日のWSJの記事が説く「効果的なファイナンシャル・アドバイスに欠かせない5つの資質」は、知っておいて損はないかもしれません。

 

なぜなら、

 

あなた自身が、
あなたの財政金融状況の
『アドバイザー』となることは可能ですから。

 

 

<効果的なファイナンシャル・アドバイスに欠かせない5つの資質>

 

1. バイアスの除去

 

短期的な視点から、
必要のない行動を取りがちな顧客に対して、
偏り(バイアス)を取り除くことを目指します。

上記は、アドバイザーとして大事な資質でしょう。

 

 

どんな投資家も、

 

その人特有の行動、
つまり、その人固有の『行動特性』を有しています。

 

 

それが、
投資のパフォーマンスにプラスに作用すればよいのですが、大抵はマイナスに作用する特性であったりします。

 

このような顧客の『行動特性』を理解し、
なるだけ合理的な行動パターンに修正する手助けをすることがアドバイザーの役割。

 

 

 

 

 

まだまだAIツールはこの点、
過信的な部分があると記事は指摘します。

 

 

例えば、人間は損失を経験した後、損を取り戻そうとして、よりリスクの高いオプションを選択する傾向がある。これをダブルダウンと呼びます。

 

 

ChatGPTも同じ傾向があり、損をする可能性があります。

 

暗号の暴落で投資家が大損した場合、ChatGPTはさらに暗号を買うべきだと考えるかもしれません。

 

 

 

2.共感力

 

ある医療研究で、
ChatGPTと人間の医師の回答が比較されました。
(オンライン上の、患者からの質問に対して)

 

結果は
ChatGPTのほうが
情報の質と、共感の両面から
医師より高い評価を得た。

 

と記事は伝えています。

 

 

そもそも生身の人間は、
すべての顧客に対して1日24時間常にケアができるわけではありません。
しかしAIには(それが)可能ですね。

 

 

 

 

 

3.正確性

 

上記は情報や事実を正しく伝えることを指します。

 

人間のアドバイザーは
鍛錬によって正確性を高めることが可能ですが、
それでも(AIと違って)ミスをすることもあります。

 

ただし、ChatGPTなどの生成AIも
正確性にまだまだ欠ける部分があります。

 

ある主要なAIツールにバンガードとフィデリティのナスダック・インデックス・ファンドのどちらかを選ぶ手助けをしてくれるよう頼んだところ、

 

長期的なパフォーマンスと経費率に焦点を当てた非常に印象的な答えが返ってきた。

 

 

唯一の問題は、分析の根拠として間違ったファンドを使っていたことで、バンガードのS&P500ファンドとフィデリティの不動産ファンドの数字を使っていた。

 

自信満々でありながら、まったく不正確だった。

 

なるほど・・・。

 

現状、
生身の人間とAIの正確性は五十歩百歩というところですが、時間が経てばAIが勝ってくるのでしょう。

 

 

 

 

 

 

4.Best Interest 最善の利益

 

アドバイザーは
顧客の利益のために行動しなければならない。

はい、これは自明の理です。

 

ところが、
保険商品や投資商品を扱っていると、

顧客の利益を犠牲にして、
自分の実入りが多くなるよう、
コミッションの高い商品を売ることに執心してしまう人がいます。

 

この人はアドバイザーではなく、
販売者ですね。

 

 

AIは(顧客の利益を犠牲にして)
自らの収益を最大化しようとは思いません。機械ですから。

 

顧客のBest Interestにかなうのは
むしろAIのほうかもしれません。

 

 

AIは人間のアドバイザーよりも利益相反を監視しやすいだろう。

 

 

 

 

5.一貫性

 

金融、財政のアドバイスは一貫している必要があります。

アドバイザーは自分が好むポートフォリオやファンドを
顧客に選択させるような『誘導』があってはなりません。

 

いっぽうAIは「感情」を持たないため、
もしかすると人間のアドバイザーより
助言の一貫性が保ちやすいのかもしれません。

 

 

わたしにとっては
2.共感力における「エピソード」が衝撃的でした。

 

ChatGPTのほうが医師よりも共感力に勝るのなら、
医師はAIに学ぶべきでしょう。

 

同様に、
今後生成AIがさらなる進化を遂げ、
痒い所にも手が届くような「共感力」を磨き上げるのであれば、

アドバイザーはそれを真摯に学び、
自身の仕事の補強とする必要があるでしょう。

 

 

 

 

 

AIが金融アドバイスに本格進出することで、
誰よりも利益を得るのは
一人ひとりの投資家なのです。

 

 

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