頻繁に起きてしまうリスクは(実は)保険で賄う事象ではありません
2023年10月31日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ほんらい『保険』は
金融商品というより、暮らしの知恵そのものです。
互いが助け合って、
万が一の事態に備える「合理的なしくみ」そのものなのです。
みなで共有 ⇒ 分散させるシステムが「保険」という仕組み。
200人に1人しか
『交通事故』に遭わないから、
自動車保険が成り立ちます。
60歳までに『死んでしまう』確率が
圧倒的に低いから、
定期保険が成り立ちます。
ところで、
カリフォルニア州の一部地域では、
新規の『火災保険』の引受けを
受け付けない保険会社が出てきているのだそう。
ニュースなどでご記憶の人も多いと思いますが、
カリフォルニア州では近年山林火災が頻発しています。
『めったに起きないリスク』を
みなで共有 ⇒ 分散させるしくみが、
成り立たなくなっているのです。
よく考えてみると、
『がん保険』もそうですね。
50人にひとりとか、
100人にひとりしか「がん」にならなかったら、
『がん』になったら直ちに一時金を支給、
入院給付金を支給しますという類の
『がん保険』が成り立ちます。
みなで共有⇒分散させるしくみ
起こる確率が
けっこう高くなっているのに、
無理して「保険」として成り立たせようとしたら、
一体どんなことが起こるでしょう?
〇 保険金の支払い事由の「範囲」が狭くなる
〇 私たちが支払う保険料が高くなる
上記3つの変化は、
どれかひとつだけが突出するのではなく、
それぞれが目立たないように
静かに進行することが予想されます。
もうお分かりだと思いますが、
無理に成り立たせようとすれば、
必ずどこかで「ひずみ」が発生します。
〇 支払われる保険金が少なくなる
〇 保険金の支払い事由の「範囲」が狭くなる
〇 私たちが支払う保険料が高くなる
『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』の著者、
後田亨さんはこうおっしゃっています。
「そうなるともはや“万が一の状況”ではなく、
“想定内の出来事”と考えるべきなのでは?
保険でお金を備える必要はなくなりますよね」。
まさにその通りです。
わたしは何も保険を全否定するわけではありません。
たとえば、
小さいお子さんがいて、
家族の大黒柱が
(資産がほとんどない状態で)急に亡くなってしまう・・。
これは、
起こってしまった場合の経済的損失がとても大きくなる事例に他なりません。
クルマを運転していて
誰かを死なせてしまう、という状況も同じ。
万一起こってしまった場合の経済的損失がとても大きくなる事例。
こういう場合は「保険」の出番なのです。
もとい。
こういう場合のみが『保険』の出番なのです。
考え方のポイントは?
自分の資産では到底賄えないようなケースに対してのみ、
『保険』というツールに頼ればよい。
日本の人口は世界の2%未満なのに、
世界の保険料の13%以上を払っています。
画像元: MS&ADホールディングス
過度な保険信仰を修正して、
これまで支払ってきた保険料を、
シンプルに貯蓄に回したり、
積立投資に回したりするほうが、
日本人のお金のあり様が健全化するとわたしは考えます。
ついでに申し上げれば、
『社会保険』という名称も
日本では有名無実になりつつあります。
『めったに起きないこと』を
みなで共有 ⇒ 分散させるしくみ が、
健康保険の保険料 ⇒ 健康保険支給
介護保険の保険料 ⇒ 介護保険支給
すでに成り立たなくなっているためです。
(社会保険は『社会保障税』と名称を変え、仕組みを構築し直す必要があります)
最後に、
来年から始まる『新NISA』は(長い目で見れば、)
保険業界に滞留してきた資金、
FX(外国為替証拠金取引)に滞留する資金の相当割合を
引き寄せることになると予想します。
これは(意外と)大きなお金のうねりとなって
世の中を旋回する可能性があります。
カテゴリ:100年ライフプラン, お金の摩訶不思議