新NISAで売り買いを繰り返すと結局、生涯投資枠を「浪費」することに
2023年9月24日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ちょっと気の早い話で恐縮です。
あなたが7年なり10年なりをかけて、
NISA制度内で1800万円(元本)を積み上げたとします。
ここまでがんばってきた甲斐がありました。
ここから、
NISAの「長期保有」が始まります。
えっ?
持ち続ける(Buy and hold)わけです。
正直、退屈で長い旅です。
もちろん、
あなたのライフイベント上、
「これは必要!」という出費があれば、
必要な金額ベースだけ、
NISA口座内の投資信託を売るのはアリです。
(非課税ですし。)
でも、です。
それ以外で、気持ちに任せて
ちょくちょくファンドの『解約』を繰り返すのってどうなのでしょうか?
・なにせ「非課税」だし
・ある程度売って、利益を確定させたほうがよくない?
そういうふうに
自身を説得は出来るでしょう。
でもそれは、
『悪魔の囁き』かもしれません。
新NISAの大きな特徴は?
その元本相当部分については、
「新たな投資枠」として翌年以降『復活』する点です。
これは嬉しいこと。
でも、投資枠として復活するのは
『元本部分』のみです。
ちなみに、ですが、
新NISAでファンドを解約する場合、
「つみたて投資枠」の ××ファンド を売るか、
「成長投資枠」の ○○ファンド を売るか、
もちろん、
「つみたて投資枠」の××ファンドを100万円分売って、「成長投資枠」の○○ファンドも200万円分売る。
という指定のしかたも出来ます。
現行のNISA制度に倣えば、
新NISAにおいて、
「どの年に購入したファンド資産から売る!」という指定は出来ません。
(いちばん先に購入した分から売却することになります)
つみたて投資枠、成長投資枠それぞれで、
「平均取得単価」として自動計算されます。
具体例・その1)
「成長投資枠」の ○○ファンド を200万円分売ることにしました。
ところが、
「つみたて投資枠」の××ファンドは
20万円利益が乗っています。
「成長投資枠」の○○ファンドは
30万円利益が乗っているとします。
「つみたて投資枠」は80万円のみ。
「成長投資枠」は170万円のみです。
上記、復活した投資枠を用いて、
(もちろん)あなたはまた投資信託を購入します。
上記の行いを分析すると、
NISA口座内の1800万円の元本のうち、
元本部分250万円について
『一度利益を確定させた』ということになります。
具体例・その2)
「成長投資枠」の ○○ファンド を300万円分売ります。
売った時はうれしいです。
何しろ、
(ファンドの解約時手数料がなければ、)
売った金額と、
あなたの手取りの金額が『同じ』になるわけですから。
ところが、
「つみたて投資枠」のファンドには
利益が40万円乗っています。
「成長投資枠」のファンドには
利益が50万円乗っているとします。
するとどうでしょう。
成長投資枠・・ 元本相当額 250万円
となります。
翌年、
計410万円分、すべての投資枠が『復活』するのでしょうか?
残念ながら、そうは行きません。
なぜなら新NISAでは、
年間の投資可能額が『360万円』までだからです。
投資枠 | 年間投資限度額 | 売却金額のうち元本相当額 |
つみたて投資枠 | 120万円 | 160万円 |
成長投資枠 | 240万円 | 250万円 |
換言すれば、
つみたて投資枠で「40万円分」
成長投資枠で「10万円分」は、
再投資できる『枠』を超えてしまうため、
ようやく投資枠が『復活』することになるのです。
まあ、それでも、
再投資はできるわけです。
その代わり、
NISA口座内の1800万円の元本のうち、
元本部分410万円について
『一度利益を確定させた』ことになります。
ここから想像力を働かせましょう。
結局、小さな利益を何度も確定させていると、
安易に売却せず、
そのボリュームを保ったまま『資産』を増やし続けた場合と比べて、
資産の増え方の、
「伸びしろ」が小さくなってしまうと思いませんか?
繰り返しですが、
ライフプラン上であなたに必要なお金が発生すれば、
必要な金額ベースだけ、
NISA内のファンドを売却してよいと思います。
しかし、
投資枠の『復活』があるからといって、
必要もないのに何となく
何度もファンドを売却してしまうのは「もったいないこと」。
(※なにしろ元本相当部分しか、
投資枠として復活しないのです)
新NISAのメリットを最大にするための心得。
それは・・、
大きな利益のみに注力できるか。
新NISAのメリットは絶大ですが、
しかしそれは、
小さな利益には目もくれず、
Buy and hold が実現できた場合の話なのです・・。
長く退屈な旅です。
あくまで一例ですが、
元本『1800万円』の元手を20年間、
長期で見て平均「年4.5%」のリターンを獲得できた場合の運用成果を見てみましょう。
画像元:アムンディ
無駄な「売却」をしないほうが、
NISAでの資産の増え方がよりダイナミックになることがイメージできるはずです。
カテゴリ:NISA活用法